思い込みという服を脱ぐ。

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

思い込みという服を脱ぐ。

 こんにちは、はじめまして。知ってる方はアクセスありがとう!私の名前は、まなつと言います。ポールダンスという、ダンス業界の中でもニッチなダンスを踊ることを生業にしています。

  日々棒に登ったり逆さまになったり、お客さんからチップをもらったりして飯を食っています。それにくわえて、文章を書くことと旅が大好きすぎて、ブログをやっています。書くことを仕事にできたらいいな〜という軽い気持ちで始めたブログでしたが、201611月に「おっぱいが大きかったので会社員をやめてポールダンサーになった話」という記事をアップしたところ、めちゃめちゃ反響があり、本当に書くことが仕事になりました。

 おそらくこれを読んでいる皆さんのほとんどは、ポールダンスを見たことがないでしょう。ポールダンサーがどんな生活をしてるか、想像つかないのではないでしょうか。

 たとえば、OLさんならこんな生活、主婦の人ならこんな生活……ってなんとなく浮かぶかもしれません。けれど、ポールダンサー。なにそれ?って思いますよね。わかります。なぜなら、あまりにもかけ離れた場所にいる人の日常をうまく想像できないのは、私にとっても同じだから。

 身近にはポールダンサーの友人ばかりで、あまりOLさんや主婦の方がいないため、ぼんやりした概念しか浮かんできませんでした。アフター5に合コンしてんのかなー、とか、主婦友とランチして旦那さんの愚痴言ってるのかなーみたいな貧弱な想像力で生きていました。そして、ある時、自分が「思い込み」という服を着込んでいるのではないかと気づかされました。

 

  会社勤めの友人と食事をした時のこと。店員さんに話しかけられるのが苦手で、服を選びたくないという話題から、「そもそも服なんてさ……そんなに着るかな?1日中?」と言ったところ、服は着るよ、と返されました。そうですよね。もしも普通のお仕事なら、服は着るでしょう。

 私は私で本気で、いつの間にか「服なんて着ない」と思っていたし、友人も「服は着る」と心の底から思って返しています。

 私は仕事の都合上、1日のほとんどを半裸で過ごしています。ほぼ服を着ていません。週に6日、123回ステージの上でポールダンスをしています。

 夜が遅いので午前中、910時くらいに起きます。暖かい時期ならパンツ1枚で寝るので、この時点で半裸。特に用事がなければ家の中でトレーニングをしたり書き物をします。部屋の中では下着に羽織もの程度で過ごします。たくさん着ると肩がこって疲れるから。出勤の時間になったら、仕方なくしっかりと服を着て出かけます。職場まで30分くらい。職場に着いたら、服を脱ぎ衣装に着替えます。衣装は水着と同じくらいの面積なので、また半裸。

 そのまま深夜2時頃まで仕事をし、服を着て帰宅。家に帰って、服を脱ぎます。お風呂に入り、下着で就寝。こういう過ごし方の日なら、服を着ている時間は出勤時間の30分×2ということに。つまり服を着ていない時間が圧倒的に多い。私は、ほぼ服を着ていません。

 服を着ないのが日常の私と、服を着るのが日常の友人。どちらも存在しているし、それぞれが当事者にとっては当たり前のこと。自分の観測範囲が広ければ、「当たり前」は減っていき、多様性に富んだ世界に暮らしていることに気づけます。私にとっては、この時の友人との会話が視野を広げる良いきっかけになりました。

 この世には、ぱっと見からは想像もつかない生活を送っている人、楽しいことをしている人がたくさんいます。私がポールダンスの世界にどっぷり浸かりすぎていて、服なんてそんなに着なくない?と思い込んでいたように、誰しもがそれぞれの「思い込み」という服を着て生きているのでしょう。

 その服を脱ぎ捨て心ごと裸になった時、初めて、自分がどんな服を着ていたか気付けるのだと思います。服をガチガチに着込んで家にこもり、自分とその周りしか知らずに過ごすより、潔く服を脱ぎ捨てすっぽんぽんで歩ける自分でありたい。

 なぜなら、この世界は家にこもって過ごすのがもったいないくらい、面白いことで溢れているから。

 季節はもう春。脱ぎ捨てた服を手に持ってぶん回し、裸で外に出ましょう。どうぞご一緒に。

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●まなつさんのブログ「今夜、どこで寝る」

ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。
まなつ