ロンドンで学んだデザイン、日本のランジェリーに生かしたい。

ランジェリーデザイナー(27歳) 週の真ん中、水曜の朝9時台。開店前のラフォーレ原宿や明治神宮前(原宿)駅周辺は思った以上に人がいなくて、誰もが出勤途中の急ぎ足。「来る時間帯を間違えたかな…」。早くもへこみかけた私の目に飛び込んできたのが、遠くからもパッと目を引く彼女の姿だった。駆け足で横断歩道を渡って声をかけたそのときの私の形相、かなり必死だったかも。それでも快く笑顔で応じてもらった約20分間(彼女も出勤途中だったのに!)は、記憶に残る初めての街頭インタビューとなった。

 インポートのランジェリーが好きです。中学生くらいから。伊勢丹がライセンスでやっていたANNA SUIのランジェリーが、巷で売られている下着とはまったく違ってすごくかわいくて、インポートではないんですけど「こういうのが欲しかった!」といろいろ探すうちに、インポートに惹かれるようになりました。

やるならプレイヤーになりたくて、ゼロからのスタートを選びました

 最初からデザイナー志望だったわけではないです。2歳の時からクラシックピアノをやっていて、大学も音大。将来は音楽をやっていくんだろうとぼんやり思っていましたが、卒業を前に考え直すようになって。ピアノで食べていくなら音楽の先生になる人もいますが、私は、やるならプレイヤーになりたかった。それで、ファッションの道を選びました。

 それまで音楽一筋だったので、自分のなかで生かせるものは何だろうと考えたときに、私自身ファッションは好きだし、両親ともデザイナーで、家には工房もあります。せっかくの恵まれた環境を生かそうと思いました。

 ファッションはゼロからの挑戦。新しい場所でスタートしようと、ロンドン行きを決めました。まず語学学校に通ってから、セントラル・セント・マーチンズ(通称セントマ)という芸術系のカレッジへ。22歳から2年制のコースで、ファッションの勉強をしました。

ファッションの勉強に行ったんですけど、自分を育てにいったんだという気がします

 ロンドンでは、「自分で生きていかなきゃいけない」という意識が強くなりました。頼れる家族はいないし、日本人も少ない。ファッションの勉強に行きましたけど、ふりかえると、自分を育てに行ったんだという気がします。

 デザイナーの友だちもたくさんできて、自分のブランドを持っている人もいました。日本より可能性が広がっていて、何かやろうと思えばやれそうでした。でも私は、一度日本で会社に入ってちゃんと学んでから、いつか自分でブランドをやりたいと思って、帰ってきました。

 帰国後に就職活動を始めて、わりと幅広く活動しました。デザイナーになれたらいいけど、まあ無理だろうなあって、販売員の面接も進めていたところ、ラッキーなことに開始早々、今の会社の求人を見つけて。ダメもとで履歴書を送ったら、面接に呼んでもらえたんです。

 一緒に送ったポートフォリオが良かったのかなと思います。自分でデザイン、メイキングしたランジェリーを撮影して写真集形式にまとめたものです。10代でもないですし、海外で何をしていたか、見せられるものが必要だと思って、ロンドンにいた時につくりました。現地で出会ったヘアスタイリストやカメラマン、モデルなど、プロの方に協力してもらって、構成も自分で練りました。

ファッションとして楽しんでもらえるデザインをどんどん発信していきたい

 この春、帰ってきて、女の子たちの服がロンドンとほとんど変わらないのに驚きました。
日本は、原宿とか、独自のファッション文化があって特別感があったのが、グローバル化した気がします。良いことだとも思いますし、少し寂しい気もします。ガラケーもそうですけど、独自の発展を遂げてきた、おもしろい国だと思うので。でも、下着はまだまだ。デザインよりも、小胸さんのための補正機能とか、透けやあたりが気にならないとか、機能性重視の状況です。

 海外のランジェリーって、本当に素敵なんですよ。綺麗なレースの一枚ものとか、ちょっとアウターライクなものとか。イギリスのエージェントプロヴォケイターっていうブランド、ご存知ですか? すごくセクシーなんですけど。

 今はみんな、SNSで海外のものも見られますよね。だから、日本でもファッション性の高いランジェリーを楽しんでもらえるように、新しいデザインを発信していきたいです。女の子って、誰に見せるわけでもないけどかわいいブラレットをつけるとか、そういうことで気持ちが上がりますよね。ライフスタイルとして下着を楽しむことが当たり前になったらいいなって思います。


表参道にて

建材メーカーで6年間、企画・広報・宣伝を担当したのち、企業取材や家づくり・家具などの住にまつわる分野を中心に、各種WEB媒体で活動中。プライベートでは夫と2人暮らし。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
街頭インタビュー