セクシーで強い

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

セクシーで強い

 ポールダンサーという職業柄、セクシーで強い友人が多い。

 衣服やヘアメイクの華やかさを差し引いても、パンチが強い人ばかりの業界です。

 髪が虹色だったり秋までへそを出して歩いていたり、EDMがかかっている空間ならどこでも踊りだす愉快で美しい同僚との日々。

 そんな彼女らと海外旅行に行くと、道を歩くのにとても時間がかかります。ラスベガスに行った時、常にカラフルでセクシーな衣服を着たポールダンサーの友人は、5メートルごとに老若男女に声をかけられていました。

 人の容姿やファッションアイテムを通りすがりにさらっと褒めるのが当然のごとく行われていて、「きれいだね!」「その靴最高」「あなたのファッションとってもいいわ!」などと道行く人の言葉を私が逐一、翻訳し友人に伝える。

 中でも一番言われていたのはやっぱり「セクシー」。セクシーの乱舞。

 普段着では一切露出をせず地味目な服を着ていた私も、色っぽいね、セクシーだねとお褒めの言葉をいただきました。あなたの歩き方、立ち居振る舞いがとってもいいわ、と。

 思うに、セクシーはポールダンサーの必須科目なのです。

 セクシーとはなんなんだろう、と考えた時、まず健康であることだと私は考えています。

 セクシーに類するであろうエロい・淫靡(いんび)・ひわい・いやらしい、は必ずしも健康的な人ではないように感じています。これらの言葉にはむしろ、少し怠惰な雰囲気さえある。

 「セクシーな人」を思い浮かべた時、その人は健康的な引き締まった肉体を持ち、美しい所作で、清潔感がある。そして、内から外へ有り余るエネルギーを放出している。

 セクシーとはなんぞやと自分なりにひもとくと、最終的には「エネルギーがあること」なのではないかというところにたどり着きました。

 その人を見ているとドキドキする、すてき、色っぽい、セクシーというのはその人の持つ肉体のエネルギーそのもので、それ以外のエロいとかヤれそうとかいやらしい感じは性の匂いだったり「受け入れてくれそうな雰囲気」であったりしてまたちょっと種類が違うのだと思います。

 いわゆるモテる人はその「受け入れてくれそうな雰囲気」がある人で、セックスだけでなく、自分のダメなところも肯定してくれそう。

 私はいつまでもセクシーで強くありたい。たとえいつかポールダンスをやめても、自分の思うセクシーを追求し続けたい。
 それに絶対必要なのは内観。これだけは間違いないと言えます。

 シンプルに言うと「自分の見せ方を知ること」。

 自分の弱点を長所に変え、角度を調節し、アピールの仕方を見いだすこと。

 ポールダンサーにセクシーな人が多いのは、日々のショーパフォーマンスにおいて、自分をより良く見せることが仕事だから。ポールダンサーは見せ方のプロなのです。

 自分を良く見せるというのはどういうことか。

 それは「自分自身がこの世で唯一無二・一点物の商品である」という前提のもと、自己プロデュースを徹底的に行うこと。見せ方を決定し、肉体を鍛え、ヘアメイクを研究して、写真や動画で常に自分の見え方をチェック。

 私という商品はこんなに良いものですよと押し出す。

 美人もセクシーもその時代で変化していく価値観だし、人によって受け取り方が違うからまずは自分が思うところを目指したい。万人に受けるものを頑張って作るより、自分が良いと思うものを打ち出して売りだす方が身も入る。

 私には私のセクシーが、あなたにはあなたのセクシーがある。

 そういうのを全部踏まえて、私が目指すセクシーは「肉体が強い(筋肉がしっかりある)」「心身ともに健康」「裸でも強そう」「タンクトップにショートパンツでもかっこいい」です。半裸の仕事だから、服着てかっこいいよりも半裸かそれに近い服装でキマる肉体でありたい。筋トレこそ美容。

 セクシーで強く、健康で優しい。現代の金太郎みたいでいいな。

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ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。
まなつ

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