バルーンアートアーティスト(32歳)

神宮エミ バルーンアーティストとして世界をワクワクさせたい。

バルーンアートアーティスト(32歳) 青山学院大学在学中は、ファッションイベントを主催。卒業後は役者の道に進み、13年からバルーンアート(風船でつくる芸術)の仕事を本格化させる。2017年にニューヨークでの海外個展を開催。18年にバルーンアートの全米大会ドレス部門で優勝。

 5年前まで、児童演劇の役者として全国の小学校をまわって、お芝居をしていました。土日に仕事がないので、何かしようと始めたアルバイトがバルーンアート。住宅展示場などで、子どもたちにプードルやお花を作って渡していました。

 ほかの人よりは上手にできるかなって思うことはありました。プードルには、しっぽと顔のかわいいバランスみたいなものがあるんですが、私ははじめから、ちょっとだけうまくできていたかな、と。でもその程度です。才能がある、と思って続けたわけではありません(笑)。

 役者を目指したのは中学生の時に、学校祭でジュリエットを演じたのがきっかけです。私のお芝居を見て、同級生が泣いてくれたんですよ。その時に、人の感情を揺さぶるのって面白いなって思ったんです。

 そういう原体験があって、役者をやってきたんですけど、演劇だと、子どもたちを笑顔にするのはけっこう大変。だけど、バルーンを差し出すと一瞬で笑顔にさせることができる。まるで魔法の道具のようだなって。それが、バルーンアートにはまったきっかけです。ちょうど、役者としての限界も見えていたところだったので、思い切ってバルーンアート一本でいくことにしました。

1着を作るのに12時間、丸3日寝ないことも

 それから、色んな種類のバルーンアートをみてみようと、ネットで検索しました。バルーンでドレスをつくる「バルーンドレス」の存在を知り、見よう見まねでコンテストに出場したら、まさかの優勝!他の方々が作ったドレスをみて、「あれいいな~」とか「そうかこんな方法があったか」と参考にしているうちに、やりたいことがどんどん膨らんでいきました。

 いくつか作品を発表していくと「あなたらしいドレスだね」と、言われるようになりました。色の使い方が独特なようです。確かに、色にはこだわっています。例えば、バルーンを2重にして、色を重ねます。ゴールドのバルーンの中に黒を入れると、より光沢感がでるんですよね。そうやって試行錯誤しながら、色をつくっていきます。

 今年ラスベガスで開かれたバルーンアートの全米大会で優勝しました。そのときのドレスは、すべて透明なバルーンを使っているのですが、その中にアクリル絵の具を入れました。絵の具の量を調整して、きれいなグラデーションが出るようにしました。

 バルーンドレスは、プードルをつくるのと同じ、長細いバルーンを、縦と横に織りなして作ります。1着のドレスで500本近くバルーンを使うのですが、空気が抜けないように、ボンドをコーティングして、ふくらませて……と地道な作業も加えると、1着を作るのに12時間近くかかります。イベントが続くと丸3日寝ないなんてこともあります。体力勝負ですね。

撮影チームはSNSで探します

 それだけ一生懸命つくっても、バルーンなので2、3日でしぼんでしまう。はかない命です(笑)。だけど、それが逆に良いんですよね。いつかなくなるものだからこそ、今、一番いいものを作りたいと思うのかもしれません。

 私の撮影チームも1回きりのことが多いです。カメラマンさん、ヘアメイクさん、モデルさん、毎回同じメンバーになるのは避けるようにしています。

 撮影チームは、インスタグラムで探すことも多いです。例えば「#外国人モデル」って検索すると、日本語が話せる外国人モデルを見つけることができるんです。そこで、DM(ダイレクトメール)を送って、交渉します。海外でのイベントの時のスタッフもインスタで見つけましたね。

 「写真を撮らせてほしい」「メイクをさせてほしい」とカメラマンさんやヘアメイクさんたちから、DMで声をかけていただき、一緒に仕事をすることもあります。彼らも「私の作品のお手伝いをする」というよりは、「自分の作品をつくる」という意識で来てくれていると思います。

 たとえば、「チュールを組み合わせるのが好き」というヘアメイクさんが参加していたら、チュールを採用します。そしたら、その方の作品としても成立するものになるんです。そうやって、それぞれが個性を持ち合っていくから、私の作品だけど、私だけの作品じゃない、毎回全然違う作品になるんだと思います。想像できない化学反応がすごく面白いです。

バルーンアートで世界をわくわくさせたい

 友人からは「スタンプラリーみたいな人生だね」と言われます。まさにそんな感じです。目の前のことを、一個一個やっていく感じ。なんでもギリギリな方なんです。ラスベガスであった全米大会も、モデルが決まったのは前日でしたし(笑)。

 大きな目標としては、バルーンアートで世界をわくわくさせたいです。バルーンアートはプードルやお花だけじゃない。まだまだ可能性のあるアートだと思います。子どもも大人も楽しめるんです。

 あ! 0歳から80歳までの人がかっこよく着こなせるような、バルーンドレスをつくるってどうですか? ほかにも、畑で野菜の形をしたバルーンドレスを着てもらうのも面白いかな。やりたいことがありすぎて、考えるだけで、もうわくわくしています。このわくわくを膨らませていきたいですね。

未婚、既婚、子どもの有無、転職や独立の経験者。恋好き、旅好き、おいしいもの好き(缶チューハイ含む)。さまざまなstoryを持つ「telling,」編集部メンバー。
neru lab(ネル・ラボ)として、広告映像・音楽制作を手がける。2017年に新江ノ島水族館で開催された「ナイトワンダーアクアリウム2017~満天の星降る水族館~」では、総合演出としてイベント全体のクリエイティブを担当。休止していた音楽ユニットkrackpotの活動を再開。表現研究ゼミTRANSWEETS(トランスウィーツ)を主宰するなど幅広く活動している。
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