夫と別居。そこで始めたのが、出会い系サイトでした。
園児の時から本の読み聞かせをしていたみたいです
幼少期から本は好きでしたね。幼稚園の時には、まわりの子たちに本の読み聞かせをしていたみたいです。ドラえもんとか、宮沢賢治とかが好きで、何度も何度も読んでいるうちに、字を覚えたみたいです。賢治やばい、って思っていましたね(笑)。
小学生の頃には、ファンタジー小説を書くようになりました。小学生が好きそうな妄想ですね。主人公はサッカー部のイケメンに恋する女の子、みたいな少女漫画風なものもあったかな(笑)。あと、友達同士でしか読めない特殊文字の開発をしていました。アルファベットみたいに母音と子音にそれぞれ絵文字をあてはめて、文字にするというか。これで交換日記が誰かに読まれても大丈夫、と遊んでいました。何をやってたんですかね。
大学1年生の時に同人誌のようなものをつくりました。そこで、作家の才能ないなって気づいてしまった。ある意味たくさん本を読んできたからわかるのですが、私の書いたもの、つまんなかったんです(笑)。それで、小説家になる夢を諦めました。
どう仕掛けたら売れるかなって考えるのが面白かった
大学卒業後は就職せずにバイトをしていました。芸術系の大学だったので、まわりの影響もあり、貧乏しながら自堕落な生活をするのがかっこいいと思っていたんですよね。そのバイト先がヴィレッジ・ヴァンガード。雑貨や音楽、なんでも売っている本屋です。
ここで、私は働くことの面白さに気づきました。この本屋では、商品に手書きのポップをつけるのですが、これによって売り上げが大きく変わるんです。そこで、どう仕掛けたら売れるかなって考えるのが面白かったんです。
私は最初、香水売り場を担当することになりました。ノンブランドの香水。ポップは何がいいかな~と考えて。例えば「花とフルーツの清楚(せいそ)な香り」だと、イメージが沸かないじゃないですか。そこで「思わず抱きしめたくなる香り」ってつけたら、めちゃめちゃ売れたんですよ。
場所、時間、商品、ポップ……すべてがうまくはまって、売れるのであって、「私が売ったらなんでも売れるわ!」というわけでは全然ないんですけど、それも含めて面白かったです。「商品の魅力を伝える」っていう面白さはこのときの体験が原点になっていますね。
知らない人と30分だけ会って、話してみる
バイト3年を経て正社員に。それから4年後くらいですかね、仕事では自分のやりたいことと実際の仕事との間にギャップを感じ始めて……。また、私生活では夫と別居。これまで、ずっと一緒にいた人がいなくなって、休日に何もすることがない。仕事も私生活もうまくいかない。そこで始めたのが、出会い系サイトでした。
そのサイトは通常の出会い系サイト、いわゆる男女の出会いのためのものではなく、「知らない人と30分だけ会って、話してみる」というもの。一から何を話すか考えるのも大変なので、話題作りも兼ねて「今のあなたにぴったりな本を1冊選んでおすすめさせていただきます」とプロフィール欄に書きました。
軽い気持ちで始めたこの「本紹介」。修行のようでした……。
まず30分で、その人のことをちゃんと知ることができるのかという心配。それから、全く知らない分野の本のことを聞かれたらどうしようっていう恐怖。知らない人に会うっていうハードルより、ちゃんと求められていることを返せるのかなっていう不安の方が大きかったです。
本でも紹介しましたが、エロ目的の人だったり、虚言癖のある人だったり、色んな人に出会いました。出会った方の中には、5年たった今でも交流が続いている人もいますよ。私のまわりが書店員ばかりなので、本屋以外の世界を教えてもらっています。
19歳で挫折して以来、いつか本を出したい、作家になりたいっていう気持ちは1ミリもなくなっていたので、人生のボーナスみたいなものです。でも、できあがった本に対しては「結構おもしろいな」って思っています。ふふふ。
結婚、子ども、仕事……どれも答えがない
telling,女子におすすめの1冊ですか。まさに、この本です。33歳の時の出来事を書いた物だからかもしれませんが、30歳前後の女性から「勇気をもらった」「泣けた」という声を多くいただいています。結婚、子ども、仕事、このままでいいのかなって不安に思っている人が多いんでしょうね。でも、どれも答えがない。誰かの声に惑わされないで、「自分がこうだ」って思えるものを信じて答えを見つけてほしいですね。
今後の目標は特にないです。流されるのが好きなので。でたとこ勝負で楽しんでいけたらと思います。