ホテルシェフ(33歳)

食事制限で苦しんできたからこそ、食で人々を幸せにしたい。

ホテルシェフ(33歳) ホテルでシェフとして働くかたわら、子どもたちに食事を提供するボランティアにも力を入れているという彼女。「食」を軸に、活動の場を広げようとするのには、幼い頃の、ある理由がありました。

 ホテルでシェフの仕事をしています。鉄板焼きのお店なので、お客さんの前で肉や魚介類を焼き、接客する仕事をしています。それと同時に、NPO法人や学校で、子どもたちに食事を提供するボランティアをしています。

 子どもに食事を作っていると、自分自身がとても満たされます。

 私は学生の頃バレエにのめり込んで、極端な食事制限をしていたんです。満足に食事を取っていなくて。

バレエにのめり込み過ぎて極端な食事制限をしていた

 7歳からバレエを始めて、上手くなりたくて毎日、何時間も練習ばかりしていました。先生からの指導とバレエの友人の影響から、13、4歳くらいになると徐々に食事のことを気にするようになりました。ちょっとでも体重が増えたり、おなかがからっぽの状態じゃないと、バレエの動きに支障がでてしまう。それがいやで、食べ物を食べる量を極端に減らしてしまったんです。

 1日に食べるものといえば、チョコチップメロンパン1個、リボビタンDを飲むだけ。そんな生活を何年も続けていました。常に減量しなくちゃいけない。体重は40キロ以下じゃないといけない。週6日バレエのレッスンがあり、その日はほとんどなにも食べない。週一回バレエのレッスンが休みなんですが、その日だけ食べ物を食べる。ずっとそんな生活をしていました。

頭ではわかっていたけど、バレエをあきらめきれない

 当然、親は気にして無理にでも私に食べさせようとしました。でも、バレエに影響があると思うと食べられなくて。成長期に不摂生な食生活をしていたら、当然体調が悪くなりますよね。ずっとふらふらで、よく倒れたりもしていました。

 バレエでは、16、17歳くらいからバレリーナとして舞台に立てる人が選別されていくんです。私は、骨格の問題からバレリーナにはなれないと先生から言われました……。骨盤の形による脚の向き、甲が低いなどの問題は、シルエットに支障が出ます。骨格の問題は、バレリーナとしては致命的。

 頭ではわかっていたのですが、でも、あきらめきれなくて。それでもどうにかなるのではないかと思って毎日練習し、舞台に立っていました。太いか細いかではなく、太ければ痩せればいいだけ。でも、骨格はどうしようもない。

「自分は、バレリーナとしてはやっていけない」。

 23歳の時、ようやくバレエにけじめをつけたんですが、事実を受けとめ、何か新しい夢を見つけなければという思いで5年間苦しみました。

本当に食事を提供したいのは、成長期の子どもたち

 バレエに熱中し過ぎて、満足に食事をとれなかった。その夢が破れ、しばらくして見つけたのが食の仕事でした。学生の頃、食べたいものもがまんして、ひたすらバレエに打ち込んできた日々。だからこそ食と関わる仕事がしたいと感じたんです。

 食事の楽しさを知り、独学で料理の道を目指しました。西洋料理の店で何店舗か修業をしたのですが、現職である今のホテルで、料理長から鉄板焼きをやってみないかとお話をいただいて。それからずっと鉄板焼店のシェフとして働いています。

 30歳を過ぎて、私が本当に食事を提供したいのは、子どもなのかもしれないと思うようになりました。子どもが好きで、なにか子どもと関われる仕事ができたらと思っていたのですが、当時はなにをしたらいいかわからなくて。

 知り合いになった人に「子どもと関わる仕事をしたい」と話し、その縁が広がり、子どもたちに食事を提供する活動を始めたんです。

 今やっている鉄板焼きの仕事では、これまでは知りえなかったことをたくさん経験しました。これからも多くのことを学びたいです。子どもたちに食事を提供することは、私の生涯をかけての夢です。将来は、「こども食堂」のように、子どもたちに低価格で安心で栄養価の高い食事を提供するスペースを作りたいと思っています。

 最近、またバレエを始め、仕事がない日はレッスンに通っています。プロにはなれませんでしたが、私はやっぱり心の底からバレエが大好きです。

新宿にて

秀和システムから自身初の著書
『お客様の心をつかむ 魔法のほめ言葉事典』(仮)を出版予定

明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
街頭インタビュー