企画力も人脈もなかった私が「本屋さん」を開業しました。
ライターをしながら、オンラインで本屋をやっています。本屋を始めたのは、この子を妊娠している時なので、一昨年ですね。本当に手探りでした。今は親子絵本専門店になっていますが、当時はまだそんなコンセプトもなくて。書店をやっている方に「仕入れって、どうするんですか?」と相談をしながら。
本は小さい頃から好きでした。でも5、6年前までは自分が本屋をやる、なんて微塵も思ってなかったし、やれるとも思ってなかったです。
「何かしら、やってるよ」って知らせたくて
妊娠してると、なかなか仕事ができないんですよ。ひとり目の時に、仕事で迷惑をかけてしまったことがあって。お医者さんから予定日を聞いて最後までできるつもりでいたら、1カ月も出産が早まってしまったんです。だから、ふたり目の時は大人しくしていようと思っていました。
でも、フリーランスは完全休業宣言をしてしまうと、仕事がこなくなりますよね。WEBで本屋を始めたのは「何かしら、やってるよ、動いてるよ」と知らせる、という一面もありました。オンラインならどこでもできるし、新刊書店は中古と違って資格も要らないので、子どもがいながらでもいけるかなと。
売るための本ではなく、喜ばれる本が必要じゃないか、と感じていました
でも、いちばん大きな理由は喜ばれる本を届けたいという思いですね。ライターになる前は出版社と本屋さんをつなぐ取次の会社にいたんです。出版社から本を仕入れて本屋さんに送ると、「新刊が多過ぎる、もう要らない」と悲鳴をあげていて。本が必要なはずの本屋さんが本のせいで苦しんでるって、どういうことだろうと衝撃を受けました。
他にも本に関わる仕事をいくつか経験して、売るための本ではなく、喜ばれる本が必要なんじゃないかと感じていました。自分で本屋をやる前は、本屋さんと組んで著作が売れるようなイベントを企画できないかと思ったこともあります。でも、私自身に企画力があるわけでもないし、本屋さんに人脈があるわけでもない。自分がやれることのなかで、どうやったら一冊一冊の本の良さを伝えていけるだろうと考えていくうちに、ネット上に本のセレクトショップを開くというかたちになりました。
実際に始めてみたら、こうしたら本に関心を持ってもらえるんじゃないかとか、こういう本屋だったらいいんじゃないかとか、色々やりたいことも生まれてきています。
作家さんへのインタビューを始めたのも、その一つです。作家さんに絵本がどうやって生まれたのかを取材して、そのお話を載せています。表紙だけでは伝わらない情報を届けようと思って。
「自分は本が苦手だけど、子どもには読書家になってほしい」っていう親御さんって、わりと多いんですよ。でも、いざ子どものために絵本を買おうとすると、選べないみたいで。自分が読んだことのある『はらぺこあおむし』や『ぐりとぐら』なら直感的にいいと分かっても、新刊だったり、名も知らない作家さんだったりすると、本当にこの絵本を子どもは喜ぶのか、自分は読ませたいのか…….って。
だから、たくさん並んだ野菜のなかから「これは無農薬かな、有機かな」と選ぶように、絵本もこんな作家さんがこんな思いでつくったというルーツが分かったらいいかなと思って、本の背景を紹介するようになりました。
試験的な感じで始めた本屋でしたけど、やっていくなかでどんどん「本屋は必要だ」という思いが出てきています。今はのめり込んでいってる感じですね。
いつか、学校帰りに立ち寄れるような実店舗をやりたい
子どもたちですか? こっちの子は絵本を眺めるのが好きなんですけど、上の子はそこまで。外で遊ぶ方が好きみたいです。なので、本屋のコピーでは「親が楽しんで読めば子どもも楽しみますよ」と言っているんですけど、必ずしもそうじゃない子もいるというのは重々承知しています。私自身も妹がいるんですけど、妹は漫画すら読まない子で。
ただ、環境の差って大きいと思うんですよ。身近で本を手にとるきっかけがあれば読書人口も増えるんじゃないかと思っていて。うち、自分の街に本屋さんがないんですよ! 駅前に図書館はあるんですけどね。住んでみて、近所に本屋さんがないことの大変さが分かりました。それも本屋を始めたきっかけの一つかもしれないです。
子どものころの原体験って、すごく大事じゃないですか。小さい頃に自然や親の愛情にどのぐらい触れたかで子どもの育ちが変わるように、街に本屋があったかどうかも大きいと思うんです。いつか、子どもが学校帰りに立ち寄れるような実店舗をやりたいですね。
丸の内にて
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