スイーツエディターが選ぶ、究極のスイーツと、あのお店

フレッシュなフルーツがたまらない!珠玉のフルーツタルトとあのお店

スイーツの好みは十人十色。でも、「コレが苦手、という女子はいないはず!」という筆者の独断と偏見から紹介する、かわいくて本当においしいスイーツたち。せっかくなら食べるだけでなく、おいしいトリビアも知ると、より楽しめるはず! というわけで、おすすめのスイーツ一品&イチオシのお店をご紹介していきます。第1回目は、「フルーツのタルト」です。

●スイーツエディターが選ぶ、究極のスイーツと、あのお店

01 メゾン ジブレー(神奈川県大和市)

珠玉のフルーツタルト

 一口にタルトといっても、フルーツを焼き込んだだけの素朴な焼きタルトや、モダンな生菓子タイプなど、さまざまな種類があります。ここで取り上げるのは、タルトの土台にクリームをのせ、生のフルーツを飾った、定番タルト。私も、大好きなスイーツの一つです。みずみずしいフレッシュフルーツが飾られた色鮮やかなタルトが、パティスリーのショーケースに並ぶ様子を見ると気分が盛り上がり、「ここはきっとおいしいお店にちがいない」と、初めて訪れる店の指標にもしてしまいます。

フランスのフルーツのタルトとは?

 タルトは、古代ギリシャやエジプトがルーツの古いお菓子。当時、手づかみで食事をしていた人々が、ハチミツやクリームなど液体状の食材を食べやすくするために、食材を詰めた器ごと食べる方法を考えたのが始まりのようです。その後、古代ローマでは皿状のお菓子「トゥールト」が作られるようになり、やがてフランスで「タルト」として発展していきました。

 フランスの伝統的なタルトは、生地とクリーム、フルーツを合わせて焼き込むだけの、素朴な焼きタルト。フレッシュフルーツを飾るタルトは、冷蔵技術が発達した20世紀に入ってから登場したもののようです。

イチゴをアーモンドとともに焼き込んだ「イチゴの焼タルト」。うえにのっているのはマスカルポーネクリーム

 フランスは豊富なフルーツの産地であるため、季節のフルーツを使ったさまざまな焼きタルトが作られます。

 かつて私が、フランス・アルザス地方で一般家庭や農家に滞在していたときは、家のマダムが菜園や畑で採れる旬のフルーツで、よくタルトを作ってくれました。森と山に囲まれたアルザス地方は、リンゴ、プラム、ブルーベリーなどのフルーツの産地。食事の用意の合間に、手もとにあるフルーツを使ってお惣菜感覚で作られるタルトは、お店で売っているものに比べると見た目は質素。でも、濃厚なフルーツの香りが立つ焼きたての味わいは、今も舌の記憶に残っています。

フルーツのタルトを断面から考えてみる

皮ごと食べられる宮崎県産金柑を使った「きんかんのタルト。やわらかく甘みのある皮の豊かな甘みが新鮮

一般的なフルーツのタルトの作り方を、簡単に説明しましょう。

_バター、砂糖、卵、小麦粉を合わせてクッキータイプのタルト生地を作り、型に敷く。
_バター、砂糖、卵、アーモンドパウダーを混ぜ合わせてアーモンドクリームを作り、1に詰め、オーブンで焼く。
_卵黄、砂糖、小麦粉、バニラ、牛乳を混ぜ合わせて火を通しカスタードクリームを作る。冷めたら2の上にのせる。
4_季節のフレッシュフルーツを飾る。

 さて、タルトのおいしさはどこで決まるでしょう?

 味の決め手は、生地とアーモンドクリームを合わせた「タルトの土台」と呼ばれる部分。実はこの部分がフルーツタルトの要なんです。フルーツタルトのおいしさは、フルーツの甘酸っぱさとみずみずしさ、カスタードクリームの卵とミルクの旨味と口どけ、土台から香るバターとアーモンドの豊かなコク、これらが三味一体となるところにあります。中でも、土台がタルトの中で占める割合は多く、存在感も強いです。

 土台の味そのものに締まりがなかったり、焼きが足りなくて粉っぽかったり、または焼きすぎて固かったりするとNG。どんなにクリームやフルーツがおいしかったとしても、タルトの味わいは一気に損なわれてしまいます。パティシエさんたちは、土台の配合や作り方、焼き加減に関してはフルーツの飾り方以上に気を遣い、プロとしての思いを込めています。

今回のフルーツのタルトは、これ!

フルーツタルトの女王、「タルト フレーズ(イチゴのタルト)」。イチゴは栃木の「とちおとめ」を産地直送で使用。土台にのせたクリームは、カスタードクリームにバターを混ぜたクレーム・ムースリーヌ

 今回のフルーツのタルトは、すべて、神奈川・中央林間にあるパティスリー「メゾン ジブレー」のもの。オーナーパティシエの江森宏之さんは、日本各地のフルーツ農園を訪ね歩き、質の高いフルーツを選び抜いたそう。フルーツのタルトは店の看板商品で、ショーケースには常時7〜8種類程度をラインナップ。冬なら柑橘系が数種類、人気のイチゴのタルトもイチゴの種類を変えて2種類用意するなど、こだわりが感じられます。さらに、カスタードクリームとタルトの土台の間に、自家製のマーマーレードやコンフィチュールなどの煮詰めたフルーツをはさむのも、江森さん流。「生のフルーツのフレッシュな味わいに凝縮感が加わり、味に奥行きが出ます」(江森さん)。

手前は「瀬戸内レモンタルト」。瀬戸内産のレモンを使用したレモンクリームと、甘さをおさえて軽く仕上げたメレンゲを飾って。クリームには、オレンジとパッションフルーツの果汁も混ぜ、まろやかな味わいに

 タルトのおいしさを左右する「タルトの土台」については、「タルトの生地はサクサクに仕上げ、土台を香ばしく食べやすくしています。フォークを入れたときに土台が固くて、カチッとお皿に当たる音がすると嫌ですものね。スイーツは、お客様に心地よく楽しく食べていただきたい」と話してくれました。

 ジュエリーのようにキラキラと輝くフルーツが、こぼれ落ちんばかりにのったタルトたち。見ているだけで口の中に甘酸っぱいおいしさが広がってきますね!次回はインスタで撮りたくなるような、カラフルでカワイイエクレアをご紹介します。

  • ●今回ご紹介したお店
  • メゾン ジブレー
  • 住所:神奈川県大和市中央林間4-27-18 電話:046-283-0296

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編集ライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。家庭菓子について研究。現在は製菓やテーブルコーディネート、ワインに関する記事執筆、書籍編集を手がける。趣味は区民農園での野菜作り。
写真家。静岡県富士市出身。北海道大学工学部卒。ロンドンで写真を学び、現地の邦人向け雑誌で仕事を始め、帰国後フリーランス。著書に『コッツウォルズ』(ダイヤモンド社)。

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