婚活は就活と同じ?条件ではなく、もっと自然に出会いたいB子の場合
03 本当はもっと自然に出会いたいB子の場合
B子とは本や映画の話をよくする。かつて彼女にすすめられて観に行ったドキュメンタリー映画は地味ながらとても心温まる物語で、彼女のおだやかな印象と重なるような作品だった。B子はほんわかとした空気をまといながら、芯にはしっかりとしたものを持っていて、彼女のたしかな鑑賞眼はそこに根ざしているのだと私は思っている。
そんなB子と婚活の話をすることになって愕然としたのは、長い間友人であった彼女のことをあまりにも知らないということだった。思い返せば、聞き上手な彼女に甘えた私が一方的に話していたような気がする。今回も、記事を書くために話を聞くのだから私はやはり彼女に甘えているのかもしれない。彼女にはそういう甘えを許してくれる優しさがある。
婚活って結局、就活と同じなのかな
B子は現在31歳。大学を卒業後、書籍を扱う企業に就職した。恋愛もしたが、そのなかで悲しいこともあったと聞いた。やはり私は彼女のことを何も知らなかった。
社内で年上の男性から告白されたこともある。でもなぜか、男性には交際相手がいた。なんで自分に声をかけたんだろう? 男性への不信感は彼女の心から消えなかった。交際は断った。
婚活をはじめたきっかけは、友人からのすすめだった。30過ぎたらやばいよ、と言われて婚活アプリに登録した。自分のプロフィールに「いいね」をしてくれる男性がいたら、返信する。受け身の活動ではあったけれど、結果として数人の男性と会うことになった。
ある男性はとても明るくて話もおもしろく、たくさん話してくれた。話は楽しかった。でも彼女にはそれが「営業トーク」のように感じられた。自分の話はあまり聞いてもらえなかった。
別の男性は、過去の恋愛について淡々と語った。婚活アプリで出会った彼女と別れ、次の彼女もアプリで見つけたのだという。そして今回、彼が見つけたのがB子だったわけだ。
男性たちと会ううちに、彼女の心には大きな疑問が浮かんだ。
「いったい私は、どんな気持ちで婚活をすればいいんだろう? 」
婚活で出会った相手の話が、全部噓だったらどうしよう
そもそも彼女が求めていたのはこんな出会いではなかった。
自然に出会って、時間をかけて相手のことを知りたい。そしてその延長線上に結婚があってほしい。そういう願いがあった。
そもそも、相手のバックボーンを知らずにどうやって好きになったらいいのか。相手の年収は気になるけど、決め手にはならない。プロフィールの文章がいいな、と思うこともあるが、動機にはならない。
「結局は婚活も、就活みたいに自己分析しなきゃいけないんだよね。」
彼女は今、葛藤している。条件を決めなければ、相手を選ぶこともできないということ。でも、そう割り切れない自分がいること。
実はB子には最近、3回会った男性がいる。ひとつ年下で朗らかな印象の彼とは話がはずんだ。彼が所属する企業名をさらっと明かしてくれたのも、年収を知るうえでありがたかった。でも、3回目はお互いのことを話しつくして、あまり盛り上がらなかった。4回目はどんな話をすればいいのか。このまま飲み友達になってしまうのか。彼女は悩んでいた。
「彼が話してくれたことが全部嘘だったらどうしよう、って思うこともあるんだよね。」
とB子は言う。彼女の心の奥底にある男性への不信。それは過去の経験からくるものなのかな、とふと思った。彼女の優しさに甘えた人はきっと少なくないだろう。私もその一人なのかもしれない。「思いきって次の段階に行ってみたら? 」と話した私のおせっかいだって、彼女のためになっているのかどうかわからない。
B子、話を聞かせてくれてありがとう。でも婚活って、なんでこんなに苦しいんだろう? 私はますますわからなくなったよ。
(次回に続く)
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