働く女性の「 不妊治療退職」が増加・・・仕事と妊活の両立はなぜ難しい?
●妊活なんてまだ早いと思っているあなたへ 01
女性が妊活する時期は、仕事が充実する時期と重なります。仕事と不妊治療の両立を体験した9割以上が「両立は難しい」と感じ、悩んだ末に「不妊退職」をするケースも。やむなく転職や退職している女性は、4割にのぼるのです。仕事と妊活の両立が難しい理由は何なのか、仕事と妊活の両立について、シリーズで考えます。
仕事と不妊治療の両立、当事者の96%が「難しい」
日本で不妊に悩んだことのあるカップルは5.5組に1組といわれています。2015年に体外受精などの高度な不妊治療(ART ※1)によって生まれた子どもは5万人以上。その年の出生児の約19.7人に1人を占めています。
※1 ART:体外受精・顕微授精などの高度な不妊治療(高度生殖補助技術=ART)。2015年、日本でARTによって生まれた子どもは51,001人(日本産科婦人科学会の報告による)。
体外受精(※2)の前段階の治療である「タイミング法」(※3)や「人工授精」(※4)によって生まれる子どもも一定数いますし、結果的に妊娠・出産にはいたっていない妊活カップルも多数います。不妊治療は、実は身近なものなんです。
※2 体外受精・・・女性の卵子と男性の精子を体外で出会わせ、受精卵を子宮に戻す治療法。顕微授精は、顕微鏡を使って1つの精子を卵子に直接注入する方法。
※3 タイミング法・・・排卵日を予測し、それに合わせて性交渉を持つ方法。
※4 人工授精・・・排卵日に合わせて、採取した精子を子宮に注入する方法。
しかし、経験した多くの女性が、仕事と不妊治療の両立の難しさを感じています。不妊当事者を支援するNPO法人Fineが2017年に実施した「仕事と不妊治療の両立に関するアンケート Part2」では、両立を体験・考慮した人の約96%が「両立は困難」と答えています。(回答者5,526人。回答者の6割が30代女性、40代、20代女性と続く)
なぜ、仕事と妊活の両立は難しいの?
いったいなぜ? その理由として、「頻繁かつ突然な休みが必要」「あらかじめ通院スケジュールを立てることが難しい」「まわりに迷惑をかけて心苦しい」などが挙げられています。
つまり、不妊治療はあらかじめ予定を立てて進めにくいから、ということがその理由。
ここで少し、不妊治療はどんなことをするのか、説明しましょう。
前提として、治療は女性の生理周期によって行います。しかし、生理や排卵は「必ずこの日に来る!」とは限りません。治療の段階が進み、体外受精を行うことになると、投薬によって卵子がちゃんと育っているか何度もチェックします。卵子が育ち、いざ採卵する「採卵日」も、直前に決まります。職場に休みを事前申請するのは難しいこと、ちょっと想像していただけたでしょうか。
治療のために、急に休みをとったり業務を代わってもらったりせざるをえなくなります。
「周囲に迷惑をかけるのが心苦しい」という心苦しさや、「治療のために仕事で重要な役割を担えない」というキャリアへの思いや、「治療をして本当に妊娠・出産できるの?」「いつまでこの状態が続くの?(いつやめればいいの?)」という不安、「時間が経つほど年をとって妊娠しにくくなってしまう」という焦り……。
回答者の4割近くが、2年~5年ほど、不妊治療に取り組んでいます。結構、長いな、と思った方も多いのではないでしょうか。治療は、体力的にも負担が大きいのに、働きながらの不妊治療は、心理的にもとても堪えるものなんです。
続けるのは、もう限界…やむなく退職へ
仕事と不妊治療との両立を理由に働き方を変えた人は、4割以上にのぼっています。その半数が「退職」を選択しています。
「一生働き続けたい」と願う女性たちの本音と実情。彼女たちへのアンケートから、「職場の理解」がキーワードになっていることがわかってきました。次回は、不妊治療を体験した女性たちが、実際に職場でどのような体験をしたかをお伝えします。
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