男運が悪い私の前に、彼は突如現れた。
男運が悪い私の前に、彼は突如現れた
最近、男運が悪い。
いや、最近に限らず、人生のほとんどは男運が悪い。
付き合った彼氏はだいたいダメになる。最初は完璧なのだ。教養に裏打ちされた知性、そこはかとない憂いの表情、声の低さ、ごつごつした手、切れ長でちょっと冷たそうな目、笑い方・・・・・・。惚れっぽい私は、出会うと30分くらいで目の前の男性の素敵なところを見つけ、恋におちる。実際に付き合うかどうかは置いておいて、目がハートマークになってドキドキしている。
でも、たいていの場合は、うまくいかない。
「おまえのすべてを知りたい」(という名目でスマホを全部見られる)
「不眠症の俺と一緒に眠剤(睡眠導入薬)飲んで隣で眠って」(会社に行けない)
「パチンコ行きたいからお金貸して」(5000円札を渡してお別れ)
「俺、仕事辞めて自分の道を探すために大学入り直すよ」(既に彼は33歳)
これは恋の終わりのほんの一部。男を見る目――西原理恵子さんのいう「スカウター」がぶち切れているようだということはさすがに自覚している。それでも本人は毎回、真剣に恋をしているので終わりは傷つく。だから最近は、自分の身を守るためにも恋は一休みして、おとなしく仕事に邁進していた。
運命の男、現る――
そんな私が、運命の男に出会った。
6月11日、六本木ミッドタウンの「スター・ウォーズ」の記者会見イベントで。
彼は身長が223センチもある。大きい。彼は長髪で謎のバッグを肩からかけている。寡黙だが、ユーモアに富んだ雰囲気で、頭を左右にちょっと動かし、集まった大勢の人を見回していた。
包容力のある人はいろんな意味で「大きい」。そんな予感は、しばらく前からあったのだ。
英語の家庭教師、アダムはアイルランド生まれ、205センチ。私の息子に、毎週家まで英語を教えに来てくれている。彼は、玄関のドアもリビングのドアも、身を屈めて入ってくる。たまに、頭をぶつけている。その様子がとてもかわいい。
帰り際に私に親愛のハグをしてくれるときは、まるで生きたエアウィーブのような抱擁力がある。仕事の帰りが遅くて入れ違いのときも、私の体を気遣う置き手紙を残しておいてくれたり、息子が英語をたどたどしく読む様子をビデオに撮ってLINEで送ってくれたりする。これぞ包容力。でも、彼は妻子持ちなので、私は恋に落ちない。
すべてを包み込む、圧倒的な大きさ…
そんな私の前に現れた新しいヒーロー、チューバッカ。
すべてを包み込む圧倒的な大きさ。
ビデオは、会見中のチューバッカ。思わず、撮ってしまった。「スター・ウォーズ」シリーズ最新作「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」の来日記者会見に登場した彼は、圧倒的な存在感を放っていた。映画では会っていたけれど、スクリーンを介していたときは、「会っている」うちに入らなかった。こんなに大きくて圧倒的なのか。
ロン・ハワード監督が故・黒澤明監督とのエピソードを語ったり、主役のハン・ソロを演じたオールデンが初来日で食べたおいしいトマト(なぜトマト?)の話をしたり、サプライズゲストで市川海老蔵さんが登場して「映画を娘や息子と見に行きたい」と語ったりと、会見はつつがなく進んでいくが、私の目はずっとチューバッカに釘付けだった。
私は必死に、会見で配られた資料とスマホでチューバッカを改めてリサーチする。シリーズ屈指の人気を誇る愛すべき悪党、ハン・ソロの生涯の相棒。愛称、チューイ。森林惑星キャッシーク出身のウーキー族で、身長は230センチ。年齢は190歳。演じているのは213センチのフィンランド人、ヨーナス・スオタモ。大きい。
映画でもステージでも、「ウォォォォン」「ヴオオオオ」ばっかりで、私にはよくわからない。でも、言葉なんて関係ない。人間かどうかも、この際どうでもいい。
余計なことは言わない。でも、いろんなことを乗り越えて絶対的な信頼関係を築いて、いつもそばにいてくれるんだろう。包容力のかたまりとして存在している。
そんなパートナー・チューイとともに生きるハン・ソロが心底うらやましい。2人の友情が描かれた映画、「ハン・ソロ」。正直、これまでスター・ウォーズファンではなかったけれど、そんなことはどうでもいい。私は恋に落ちたから。
6月29日の公開初日に、私はきっと、劇場に会いに行く。
- ●『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
6月29日(金)全国公開 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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