主婦、ベビーマッサージセラピスト 、ベビグラファー (28)

転勤族です。1年前まで、今や”絶滅危惧種”の専業主婦でした。

主婦、ベビーマッサージセラピスト 、ベビグラファー (28) 「お話、いいですか?」と声をかけると、快諾してくださいました。赤ちゃんの写真を撮影したり、ベビーマッサージをしたりする資格を取得し、行く先々でサークルを作って活動しているそう。「転勤族」で、富山市で出会い、原稿を書いてから内容を確認するために電話をかけると、滋賀県彦根市へ転居されたばかりでした。新しい土地でも「子どもと街の風景を写真に収めるのが楽しい」と、前向きに過ごしている様子が電話越しの声からも伝わってきました。

 「結婚、出産、転勤などに左右されにくい仕事を」と思い、「ベビーマッサージセラピスト」「ベビフォトグラファー」の教室を自宅で開いています。主婦ですが、個人事業主なのです。赤ちゃんの写真を撮る時って、常に笑顔でカメラを向けながらじゃないと、だめですよ。「可愛く撮ろう」と思ったら、常に笑顔。怖い顔していたら笑ってくれませんからね。

 私の話? 取材ですか。そういえば昨年、6つ下の妹から「取材」を受けました。彼女は大学の社会学部の学生で、女性の働き方などをテーマに卒業制作をまとめました。私が主婦になったから、このテーマを選んだらしいです。今、専業主婦って「絶滅危惧種」と言われているじゃないですか。当時、写真やマッサージには興味を持っていましたが、まだ、教室やサークルなどを開いていない時期でした。だから妹は私に話を聞きたかったらしいですよ。「今後どうしようと思っているの」とか。

   妹はこの春に上京し、働き始めました。彼女は今後の人生をどんなふうに考えているのかなあ。

付き合っていて、彼の転勤を機に結婚しました

 滋賀県草津市の出身で、大学時代も親元から京都市内にある大学に通っていました。卒業後は製薬会社に勤務して、知人の紹介で出会った主人と7カ月で結婚。彼の転勤が決まったので、それを機に縁もゆかりもない富山市へ引っ越してきて、最初は寂しかったですね。主人は会社があるからいいけれど、私は朝、主人を送り出したあとはパソコンを見たり、家のことをしたりして、1日中誰とも話さない日がありましたもん。だから自転車で近所のスーパーや公園に行って、興味のあるお店に入って、3カ月ぐらい探検していたかなあ。

 そうしているうちに妊娠が分かり、つわりがひどくなって。1、2カ月ダウンしていた時期がありました。不安だったけれど、滋賀県の実家に帰らず、富山で出産したんです。母からは「初産なのに里帰りしないの?」と言われましたが、主人が「生まれてポンと赤ちゃんが来るより、生まれた時から2人で協力して育てていきたい」と言ったんです。主人の希望を優先しました。

 「つらくてご飯を作れなかったらどうしよう」とかいろいろ考えましたけど、何とかなりました。実家の母は10日間、義理の母も1週間ぐらいそばにいてくれたのと、産後はすごく楽で、よく寝てくれる子で。子どもが笑ってくれると、嬉しいなぁ。忙しいときに「ママ抱っこして」と言われると「あー、もう」って思うこともあります。でも、やっぱり幸せです。

 子どもに手がかかる時期が過ぎると「ブランクが空いちゃったな。生産性がなかったな。何か勉強とか資格とか取っとけばよかったな」って思う気がしたから、好きなことで資格を取ろうと決めたんです。「子どもと一緒にいる時間に、何かしたい。この時間を有効に使って、いずれサークルとか、教室とか開きたい」と。

 2017年1月に1歳4か月の娘を連れて、講座を受けに千葉まで行きました。初めての場所で、講師の先生も知らない方です。新幹線と電車での移動は、ドキドキ、わくわく。不安の方が大きかったなあ。子どもが泣き出したら、どうしようって。子どもがいるだけで、あんなに怖い気がするとは思いませんでした。大変だったけれど、いろんな気づきがあったように思います。あの時、勇気を出してよかったなと。

主人の転勤で今度は滋賀県の彦根市へ。新たな日々を過ごしています

 富山にいたのは、3年半。引っ越すときは、うるっときましたよ。「ああ、ここでベビーバスに入れたなあ」って。長女を産み、一番かわいい時期をここで過ごしました。知らない土地で、最初は不安だったけど、いろいろいっぱい思い出ができたなあと。資格を取って、教室を開き、サークルをすることで人のつながりができました。いい環境だったので、前向きに、楽しく過ごせました。

 主人は北海道出身なんです。地元企業に勤める同郷の人と結婚していたら、ずっと滋賀県内にいただろうけれど、「生まれた土地を離れられた時期があって、よかったなあ」と今、あらためて思います。

 草津市の実家までは1時間ぐらい。妹が上京したので、両親にとっては、入れ替わりで娘が帰ってきたことになりますね。親は「よかった」と思ってくれていることでしょう。当分、転勤はなさそうですけど、またどこかへ行くことになるのかもしれません。

 今、2人目の子がおなかの中にいるんです。つわりがひどいので、教室とサークル活動は、ちょっと中断。落ち着いたら、再開しようと思っています。どこでにいても、子どもと風景、いっぱい撮っていきたいと思います。

富山市にて

北陸に拠点を置く新聞社でスポーツ、教育・研究・医療などの分野を担当し2012年に退社。現在はフリーランスの記者として雑誌・書籍などに執筆。
街頭インタビュー