「麒麟がくる」全話レビュー10

【麒麟がくる】第10話 信長、光秀、竹千代(家康)、帰蝶、戦国オールスター勢揃いシーンにゾクゾク

高視聴率でスタートしたNHK大河ドラマ「麒麟がくる」。本能寺の変を起こした明智光秀を通して戦国絵巻が描かれる、全44回の壮大なドラマです。毎回、人気ライター木俣冬さんが徹底解説し、ドラマの裏側を考察、紹介してくれます。第10話は、戦国時代ファン必見の光秀、信長、家康(竹千代)の揃い踏み。もう見た人も見逃した人も、これさえ読めば“麒麟がくる通”間違いなし!

 アクロバティックな駒

「“困”ったもんじゃ」と「“駒”ったもんじゃ」を掛けたんだろうなと東庵先生(堺正章)の言い方から感じた大河ドラマ「麒麟がくる」第10回「ひとりぼっちの若君」(演出:一色隆司)。光秀(長谷川博己)と信長(染谷将太)とのちの家康・竹千代(岩田琉聖)と帰蝶(川口春奈)が勢揃いして、戦国オールスター戦のシーンに見応えがあった。

光秀が大好きな駒(門脇麦)だけど、こういう集まりにはお呼びでない。でも綱渡りとバック転という新体操の選手のようなアクロバティックな身体能力を披露し、オリジナルキャラの意地(?)を見せつけた。
昔世話になった伊呂波太夫(尾野真千子)と再会したことで、駒を助けてくれた“大きな手の人”がどうやら光秀のお父さんであることもわかる(第一話でなんとなくわかっていたけどね)。
駒は明智家と縁があるようだ。でも彼女と明智家の深い関係が機能するのはまだまだ先のお楽しみとして、10話では障りに留めるだけに終わった。10話はやっぱり、光秀、信長、家康(竹千代)の揃い踏み。

「鬼め! 生命がいくらあってもたらんわ」
怒る光秀くん。三河の安城城が今川に襲われ、信長の腹違いの兄・信広(佐野泰臣)と竹千代を交換したいと今川が迫る。そうすると今川の力が強くなってしまう。道三(本木雅弘)は光秀を尾張の様子を探りに行かせる。
光秀は帰蝶に味噌を届けるという口実をつくって、菊丸(岡村隆史)を連れて出向く。帰蝶が織田家に嫁に行ったのはこういうときに役立つからなのだなあ。

信長は光秀が熱田の海岸で会ったことに気づいていた。一回話した人のことは忘れないという信長。精神バランスが安定していないながら、突出した能力があるようだ。こういう属性もシビレます。

「母上は信勝に家を継がせたかったのじゃ」

光秀くんが、道三の勝手に振り回され、まだ何者かよくわからない信長の反応に終始びくつく表情が面白くてならない。道三も信長も機嫌を損じると何をされるかわからない。道三とはだいぶ信頼関係が結ばれている気がするが、信長のことを光秀は未だ知らない。視聴者は、第9話で信長、かなり危ない人だと知っているので、光秀はうかつなことを言えば何をするかわからないとハラハラする。
光秀は信長との会話の糸口をもとうと漁が好きなのか聞くと、これがけっこうディープな話であり、おかげで信長の心の内がわかる。

母・土田御前(檀れい)に愛されていない信長が、母の愛を得たくて、唯一褒められた漁をするようになったが、その後は母にむしろ遠ざけられるようになった。

「母上は信勝に家を継がせたかったのじゃ」

母には褒められない代わりに、漁師たちが褒めてくれる、民が喜んでくれる。
「皆が喜ぶのは楽しい。それだけだ」

この一連の語りに信長の果てしない孤独が感じられた。染谷将太の語りが深い。

そこへ竹千代がやって来た。彼もまた幼くして人質に出された孤独な者である。「ひとりぼっち」同士。
以前は信長と竹千代は、将棋を仲良くやっていたが、信長は竹千代の父・岡崎城城主、松平広忠(浅利陽介)を殺害してしまったので、いまや敵(かたき)。もう将棋はしないと距離をとろうとする信長だったが、殺された父が大嫌いだったと気にしてない様子の竹千代。

それを受けて、信長は将棋をはじめる。
このやりとりのときの光秀の表情がすごくいい。戦につながる政治的な緊迫感だから、それを見ている光秀も帰蝶も全身アンテナにして様子を伺っている。この場面はただ、四人を引きで撮影しているだけなのだが、長谷川博己の眼の動かし方と、身体の力の入れ具合のおかげで、物凄く見応えがあった。さすが舞台で長年鍛えてきている俳優だから、カメラがアップで自分を撮っていないときでも全身で芝居して、空間を埋めている。人の話を聞いているときの表情が長谷川博己はすごく巧い。川口春奈も思いのほかそれをやっていて、感心した。

信長は将棋を本格的にはじめる前に、席を外した光秀を追いかけてきて、銃の話がしたいから今夜は泊まって明日話そうと銭まで渡す。
光秀くん、信長に気に入られちゃったの巻?

竹千代と帰蝶は同じ考え

さて。一緒に来た菊丸がいない。帰ったふりして、天井に忍びこみ、信広と竹千代を取り替える話を聞いていた。9話でただの農民でないことがわかった菊丸。いまやすっかり忍びの者として暗躍。

人質の交換話を潰せば、兄・信広は斬られるだろう。迷いはある。という信長に、
「今川は敵です。いずれ打つべしと思っております」と応える竹千代。
だから、懐に入り見てみたいとも。
「敵を撃つには敵を知れと申します」
しっかりしてるなー。子役がしっかりしゃべるから、また感心。

竹千代は帰蝶と同じ考えだな〜と思った。帰蝶も信長の嫁にいくときまずどんな人物か知りたいと言っていた。織田家の懐に入って……という気持ちもあったんではないだろうか。
戦国時代、誰を信頼していいのかわからない。すべての言動に戦略があるように思えて裏を読みたくなってしまう。
伊呂波太夫と東庵の会話もなんかありそうだし、駒もただ運動神経がいいわけではないんではないか。昔から忍として鍛えられていたのではないかとまたまた疑ってしまうのだった。筋はすごくわかりやすく見やすいのだが、そこに謀略が仕掛けられている雰囲気で気が抜けない。

ドラマ、演劇、映画等を得意ジャンルとするライター。著書に『みんなの朝ドラ』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』など。
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