中村倫也「美食探偵」は次回予告なし！ 制作の気遣いにシビレた最終回直前

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6月21日に「美食探偵 明智五郎」第8話が放送された。絶対的な善・苺（小芝風花）と絶対的な悪・マリア（小池栄子）、その間で揺れる明智五郎（中村倫也）という構図で描かれてきたが、最終回直前にして、ついに明智が悪の方へ。
薄々気づいてはいたが、今作は推理をメインとしたいわゆる探偵ドラマではないようだ。探偵を主人公とした「特殊な愛の形を描くラブコメディ」なのだ。

善より悪の方が楽

「人殺しがアイドルしちゃダメって誰が決めたの？」

前話でココ（武田玲奈）がルシファー（森永悠希）に食べさせたのは、7日後に死に至るという毒キノコ・ドクツルタケだった。明智と苺に追求されたココは、「本当に私を、私たちの夢を助けてくれたのは苺ちゃんじゃない。マリアさんだよ」と言い残して去ってしまう。闇落ちした人間、もしくはする直前の人間は、善より悪に頼ってしまう。まぁ甘やかしてくれるのはマリアなんだからそうなるのもわかる気がする。

一方、シェフ（武田真治）、林檎（志田未来）、れいぞう子（仲里依紗）らマリアファミリーは、ルシファーを病院から連れ出し、とある山小屋へ。ここでルシファーは7日後の死を待つことになる。ちなみにドクツルタケは実在する毒キノコだが、きっちり7日後に死ぬとかではないらしい。

探偵ドラマじゃないですよ宣言

マリアに苺を殺すと宣言された明智は、苺を探偵事務所で匿うことに。しかし、弁当屋のランチ営業にマダムに変装したマリアが現れ、ケータリングを頼みたいと苺を廃ビルの一室へと誘い込む。桃子(富田望生)に送られてきた一枚の写真を元に、明智は苺の居場所を探すのだが、このシーンが制作陣の“探偵ドラマじゃないですよ宣言”に見える。

普通の探偵ドラマなら「一枚の写真」なんて、富士山の形がどうだとか、太陽の位置がどうだとか、特殊な木が生えてるだとか、いろいろ出来ちゃう格好の推理チャンスだ。だが、明智はなんとクルックー（作中に置けるオッケーgoogle的なやつ）を使い、一発で居場所を突き止めることに成功する。

わざわざベタな推理チャンスを用意して、それをあえて無下にする演出は、“もう探偵ドラマじゃないですよ宣言”だ。現に今話の明智は推理らしい推理をしなかった。こう言ったある種の線引きのようなものをしてくれると、都合の良いドクツルタケも、ルシファーを奪われるガバガバな警察も、全然捕まらないマリアファミリーもそれほど気にならなくなるというものだ。だってこれは、ラブコメディなのだから。

明智、マリアを選ぶ

マリアと明智が過去に会っていたことが明らかになった。偶然訪れた学園祭でマリアは、クレープ屋にもかかわらず、高級なステーキを焼く明智と遭遇する。このギャグ漫画のようなシチュエーションが、毎日代わり映えのない日々を送っていたマリアにとって刺激的だったのだろう。6,500円という学園祭ではありえない値段でもマリアは迷わずに注文した。

この時のマリアは、何も持っていなかった。明智に「あなたの好きな焼き加減で焼くべきだ」と問われても、「おすすめは？」と答えを明智に委ねてしまう。自分の意志を持っていなかったマリアが、十数年後に明智と再会し、殺しの味を覚えてしまうことで、絶対的な悪の価値観を持ってしまう。

「行かないで！　私は明智さんのことが好きです！」

これが、毎日を楽しく暮らしてきた（ように見える）苺には理解ができない。そして、そんなマリアに明智が惹かれているのが辛くてしょうがない。助けにきた明智がマリアの元へと行ってしまうと感じた苺は、明智に告白する。すると今まで苺を「一号」と呼んでいた明智は、初めて「苺」と呼んだ。

これが明智の優しさだったのか、それとも謝罪の意味があったのか。明智はその直後、廃ビルの穴に身を投げたマリアを、抱きかかえるように一緒に飛び込んでしまう。

次回予告はなし！

死んだのか、生きているのか、こういう展開の直後、次回予告で当事者がピンピンしていてガッカリするのはドラマあるあるだ。しかし、次回予告なし！　公式ホームページにも何も載せないという徹底ぶりを見せてくれた（数日後に公開された）。こういう気遣いは珍しい。

今夜放送の最終回は、半年後の話。マリアを選ぶのか、苺を選ぶのか、ちょうどいい落とし所が全く見えない。一体どうなってしまうのだろう。マリアは曲がりなりにも大犯罪者なので、「何も変わらずこのままの関係で……」という曖昧な終わりにはならないよう願う。

• 次回はこちら：考察「美食探偵」最終回 明智とマリアの過ごした空白の時間を今も考えている