綾野剛×星野源「MIU404」バディ感、チーム感、ダイナミックさ、謎。ドラマの喜びに満ちた1話

今季のドラマの大きな目玉『MIU404』。綾野剛と星野源、『コウノドリ』での共演が印象深い二人がバディを組んで刑事を演じます。スタッフには脚本の野木亜紀子、監督の塚原あゆ子を中心に『アンナチュラル』チームが再集結。例にもれずコロナの影響でスタートが遅れていた今作が、先週やっと放送をスタートしました。
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しょっぱなから垣間見えるバディ感の心地よさ

『MIU404』の「MIU」とは、機動捜査隊のこと。既存の3つの捜査隊に加え、警視庁の働き方改革のために作られた臨時部隊「第4機動捜査隊」がこのドラマの舞台。実際には存在しない、架空の部署だ。事件が起こって「24時間でできうる限りの真実に近づき、検挙率を上げるためのパーツとして」働く。
いちばん最初に「MOBILE INVESTIGATIVE UNIT 404」と画面に出るオープニングからして、同じようにタイトルが表示された『アンナチュラル』を思い出す。

新しい第4機捜に所属した志摩一未(星野源)。バディを組む隊員として、急遽候補で一旦落ちていた奥多摩の交番勤務の伊吹藍(綾野剛)が呼ばれることに。志摩が伊吹の評判を聞いてまわると、誰もが口をつぐむか「二度と会いたくない」という始末。あえていいところを重ねて聞けば、全員が口を揃えて「足が速い」と言う……。いざ一緒に任務に出てみると、ルールよりも自分の気持ちを優先し、直情的に振る舞う伊吹に閉口する志摩。伊吹があおり運転の車に対抗しているうち、相手の車のせいで信号待ちのおばあさんが転んでしまう。

ドラマ開始11分、鮮やかなカーチェイス! ドラマでダイナミックな画面が見られると、それだけで気持ちが上がる。かっこよさだけでなく、「それによって被害を受けている人」まで描かれているのが、このドラマの視野の広さを感じさせる。

二人のバディ感、想像以上だ。やわらかな白いロングジャケットを羽織る志摩と、全身黒づくめの伊吹。二人の軽やかな会話も心地いい。仕事の上では冷静で論理的な志摩と、常に奔放で勘を重視する伊吹との対比が自然に入ってくる。けれども志摩が決してただクールなわけではなく、人間味を持っているのが魅力的だ。伊吹の行動に激昂するときもあれば、マウントをとってしまい直後に反省することもある。キャラクターが画一的ではなく、いろんな面を持っている。そのリアリティがうれしい。

「走る綾野剛」という見どころ

数時間後、べつの傷害事件の現場に急行した第4機捜の面々。その被害者が昼間のあおり運転の男であり、被害者を追っていた白い車が怪しいとつきとめる。そしてーー担当部署に引き継いで終了。逮捕まで自分たちでできないことにもやもやする伊吹。さらには昼間のおばあちゃんがまだ家に帰れていないことがわかるも、それも自分たちではどうすることもできない。
やがて、エンジン音に着目した伊吹の「野生の勘」に動かされ、第4機捜は当番勤務が終わる時間まで犯人の車を探すことを決める。時間ギリギリ、犯人の車を見つけ出した志摩と伊吹。「昼間みたいな無茶やめろよ」と言っていた志摩が伊吹以上に乱暴な運転をし、車ごと体当たりで犯人の車が横断歩道に突っ込むのを食い止める。

ひっくり返った車から飛び出し、軽やかにジャンプして走り始める伊吹(志摩の「あ、足が速い」の言い方!)。彼が走り続ける見せ場は、演じる綾野剛自身が陸上部出身で、ディープな駅伝ファン、マラソンファンであると知っているとなおうれしさが増す。ここまで派手なカーチェイスをしておいて、クライマックスで俳優の身体ひとつで犯人を追い詰める。刑事ドラマの定石といえばそうかもしれないが、冒頭の「足が速い」の布石によって、そして綾野の走りの説得力によって、「お決まりの」に収まらないダイナミズムが生まれた。

ちなみに、今回登場したおばあちゃんは老けメイクを施した平野文。言わずと知れた『うる星やつら』のラムちゃんの声でおなじみの声優だ。放送後のTwitterで、米津玄師による主題歌のタイトルが『感電』であること、塚原監督のこの道へのきっかけが『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』だったことに触れていた。こんなつながりを後で知るのも、今やドラマの楽しみのひとつだったりする。

5人のチーム感と志摩の謎

画像解析の担当者に対して、初対面で「マキマキ」とあだ名で呼ぶ伊吹。逮捕の瞬間「ああ、すごい。9時ちょうど」とつぶやく志摩。そんなさりげない部分にも、細やかに彼らの性格が表現されている。完璧な準備で上を説得して第4機捜を立ち上げた隊長・桔梗(麻生久美子)、理解があって頼れるがどこか型破りな雰囲気の陣馬(橋本じゅん)、上から目線の若きキャリア九重(岡田健史)もキャラが立っていて、5人のチーム感が今後も楽しみだ。

ドラマ全体に横たわる謎としては、志摩の過去がある。なぜ彼は捜査一課を外されたのか。第2話の予告では九重による「志摩は相棒を殺した」という発言もあった。「自分も他人も信用しない」「自分のことを正義だと思っているやつが一番嫌いだ」と語る志摩に一体何があったのか。それも徐々に明らかになっていくだろう。

丁寧なセリフのやり取りで志摩&伊吹をはじめとする登場人物のパーソナリティを見せつつ、爽快なカーアクションを入れる。主役二人の魅力を中心にしながらも、くだらないマウントの取り合いが大きな事件に発展する「あおり運転」の問題点、常識破りの行動がSNSにアップされる現在性も描く。今後の第4機捜の活躍に期待させる、みごとな第1話だった。

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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