綾野剛×星野源「MIU404」2話。人は信じたいことを信じる。松下洸平を信じたいという悲しい願い

綾野剛×星野源のタッグが第1話から人気の「MIU404」。第2話は朝ドラ「スカーレット」で主人公の夫・八郎を演じ、一躍人気俳優となった松下洸平が逃亡中の殺人犯としてゲスト出演し、話題になりました。自殺した息子に「謝りたい」人質夫妻と父親に「謝ってほしい」逃亡犯の加々見。人を信じるということをあらためて教えてくれた2話を振り返ります。

メロンパンのやりとりに覗く、伊吹の「信じやすさ」

第1話で車をダメにしてしまった伊吹藍(綾野剛)と志摩一未(星野源)は、なぜか機捜が持っていた「まるごとメロンパン」の車でパトロールすることに。そのさなか、隣の車の中に逃亡中の殺人犯・加々見(松下洸平)らしき「黄緑色の袖」があったのを伊吹が目撃する。

伊吹「メロンパン100回くらい言ったじゃん」志摩「メロンパン10回くらいしか言ってない」とか、伊吹の「メロンパンいくらにするう?」に対するしばらく経ってからの志摩の「310円」とか、メロンパンについての会話の軽妙さが二人のキャラクターを際立たせる。そんな中で、車体に書かれた「まるごとメロンパン」を比喩でなく、本当にまるごとメロンが入っていると信じる伊吹のまっすぐさというか単純さが、その後加々見を「殺人犯じゃない」と信じる補助線になっている。

 

つい信じたくなる松下洸平の演技

伊吹が疑った車に乗っていたのは田辺夫妻(鶴見辰吾・池津祥子)。加々見に脅され、最初はこわごわ従っていた二人。しかし検問で加々見を息子であると答えたのをきっかけに、彼を実の息子に重ねて見るようになる。夫婦は、生きていたら加々見と同じ歳の子供を自殺で亡くしていたのだ。やがて「やっていない」という加々見を犯人でないと信じ、匿う行動をとるようになる田辺夫妻。同じく、加々見の告白をレコーダー越しに聞いていた伊吹も彼を信じるようになる。

「やっていないと信じたくなる殺人犯」を演じる松下がとにかくドンピシャだ。弱そうで、とてもじゃないけど大層なことができそうにない、おどおどした雰囲気を全身から発している。一応車に夫婦を拉致監禁している形なのに、脅す言葉が「言ってんだろ」じゃなく「言ってんでしょ」、「こいつ」じゃなく「この人」、「お前ら」じゃなく「あなたたち」と、強い表現を選びきれていないところが細やかだ。
加々見を信じている夫婦の言動に対する志摩の「この夫婦、ほんとに人質か?」というセリフがあるが、のちのち伊吹の自由な発言に対して田辺が「この人ほんとに警察の人?」と言うのは、緊迫した後半の展開のなか、ちょっと頬の緩むポイントになっている。

 

「謝りたい」と「謝ってほしい」の遭遇

威圧的な父親と同じように自分を蔑んだ上司に衝動的に歯向かい、殺してしまった加々見。長らく帰っていなかった山梨の実家にたどり着き、憎んでいた父親に対して「殺人犯の息子を持つ」という形で復讐を果たそうとした加々見の目論見は、父が2年前に亡くなっていたことで果たせなかった。

「人は信じたいものを信じるんだよ」。第1話で「誰も信じない」と言っていた志摩が今回も「信じる」について語った。伊吹も田辺夫妻も、加々見がやってないと信じたかった。子供の頃、なくなったお金に対する疑いをかけられるという同じ経験をしている伊吹と田辺家の息子。伊吹は生きて、息子は自殺した。その違いは「たった一人信じてくれていた」人がいたかどうか……。結果として、田辺夫妻も伊吹も今回は信じて裏切られることになった。けれども、過去について話したときに伊吹がさらっと言った「志摩ちゃんも俺のこと信じてくれていいんだぜ」の言葉は後々、志摩の心に届くかもしれない。

「謝りたかった」と「謝ってほしかった」が遭遇したのが今回の話だった。子供を信じられなかったせいで亡くしてしまった田辺夫妻は子供に謝りたかった。父親に虐げられてきた加々見は一度謝ってほしかった。逮捕された加々見に「ごめんね」となんども繰り返す田辺夫妻。その言葉に深く頭を下げる加々見。この瞬間の松下の表情がすごい。取り返しのつかないことをやってしまった後悔と、やっと「ごめんね」が聞けた安堵とが入り混じったなんとも言えない顔。その背景に大きな富士山が赤く染まって佇んでいる景色はじつに印象的だ。

もうひとつ、この話には「謝ってほしかった」があった。冒頭、志摩に「ごめんなさいは?」と言う伊吹。第1話の犯人確保の際、ふざけた伊吹を志摩が殴りつけたことを言っているのだ。物語のラストでほうとうを食べながら「殴って悪かった」と伝える志摩。ここにも小さな救いがあった。

そういえば、第1話とは逆で今回は伊吹が白、志摩が黒の服装。二人のキャラクターが固定されているのではなくて、二人で1セット感があるのがいい。また、今のところ2週連続で登場する「うどん」が果たして次週も出てくるのかもひそかな注目ポイントだ。

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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