綾野剛×星野源「MIU404」3話。ラストにまさかの菅田将暉! 自転車で走る志摩の姿もよかった

綾野剛と星野源W主演で話題の「MIU404」。機動捜査隊(通称:機捜)を舞台に、伊吹・志摩2人のバディ感が高まるなか、ラストに謎の男としてまさかの“あの人”が登場。タイトルのとおり「分岐点」となった「MIU404」3話を振り返ります。

高まる伊吹と志摩のバディ感

脚本の野木亜紀子がTwitterで「リアタイ推奨」と書いていた3話。ドラマでリアルタイム視聴を勧めるとは……? と観て最後の1分で本当に驚いた。この先のストーリーに絡んできそうな謎の男として登場したのが菅田将暉! 菅田が登場することを最初から発表していればその分視聴率もさらに増えたかもしれない。それよりも作品そのものの流れ、ここで登場する驚きを大切にしたのだろう。このビッグサプライズが成り立つのが「MIU404」の強さを表している。

連続わいせつ事件が起こっている西武蔵野署管内で、いたずらの通報が繰り返される。「警官から逃げ切ったら勝ち」というネットゲームを現実で試している愉快犯らしい。伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)がパトロール中、またもいたずら通報が。脚に自信のある伊吹は犯人を追うが、捕まえられない。そして犯人が複数で、リレー形式で逃げていることに気づく。

伊吹と志摩、二人の距離感が縮まり、より相棒らしさが増している3話。犯人を追うとき、声を揃えての「待て! 警察だ」。直後、伊吹を見送る志摩の「はい、いってらっしゃーい」。志摩の「負け犬が!」というからかいに伊吹の「それは絶対言っちゃだめだわ、相棒だもん!」。そんな言葉の端々からはじまり、伊吹への嫌悪感を隠さない九重(岡田健史)を諭す志摩の「俺はあいつを意外と買ってる」発言、そしてクライマックス、足を踏み外して階下の水場に落ちそうになる伊吹の手を掴む志摩(この瞬間にかかる米津玄師「感電」のイントロ!)。いまだ志摩は伊吹を「信じていない」が、2人の絆がここでしっかりと固まっていることはとても重要だ。きっとこの先、2人で力を合わせて取り組まなくてはならない大きな事件が待っているようだから。

 

刑事たちのアベンジャーズ!?

いたずら通報の犯人はある高校の陸上部員とそのマネージャーだった。先輩がドラッグを売っていたことで廃部に追い込まれた彼ら。次の大会にかけていたその気持ちがいたずらにつながったのだった。警察の捜査が迫るなか、少年たちが最後に行ったいたずら通報。伊吹たちが彼を追う最中、電話をかける担当だったマネージャー・真木(山田杏奈)がわいせつ事件の真犯人(岡崎体育)に襲われてしまう。

犯人が未成年とわかったときの隊長(麻生久美子)の言葉が重い。「もちろん相手が未成年だとしても、取り返しのつかない犯罪はあって、それ相応の罰は受けてもらう。だけど、救うべきところは救おうというのが少年法」。九重の「その少年自身が未成年を笠に着て好き放題していてもですか」に対して「私はそれを、彼らが教育を受ける機会を損失した結果だと考えてる。社会全体でそういう子供たちをどれだけすくい上げられるか。5年後10年後の治安はそこにかかってる」と話す。「連帯責任」の名のもと、少年たちの目指すものを潰した校長。そのせいで彼らは犯罪に走ってしまった。

西武蔵野署の刑事として、「アンナチュラル」の毛利(大倉孝二)と向島(吉田ウーロン太)が登場! 隊長だけでなく、彼らも含めて警察というプロの姿勢が描かれた回でもあった。少年のひとり、真木とつきあっていた勝俣(前田旺志郎)の「助けてください」の声に「こっちは警察なんで。通報がありゃ調べもするし助けもしますよ」と答える毛利。自分たちのいたずらが引き起こす事態の大きさに思い至らず、気持ちをぶつけるために走ろうとする少年たちの組んだ円陣と、命を救うために奔走すべく地図を覗き込む刑事の円陣。同じ円陣でも、その意味は大きく違う。

真木が本当に助けを求める電話をかけるシーン。声紋鑑定でいたずら通報の声と一致し、いままさに4機捜が対応に当たっていることがわかる。けれども電話を受けた婦警が迷ったのち「いいですか!」と発言する。それによってこの電話が本当かもしれないということが4機捜に伝わることになる、この一瞬のカットに、ドラマへの信頼が増す。個々人がそれぞれの持ち場で思いをめぐらせ、勘を働かせ、事実を手繰り寄せながら人を救おうとしているのだということが、このワンカットでも伝わるからだ。

とうとう見つけた犯人に飛び蹴りする伊吹→スタンガンを蹴り飛ばす志摩→水にスタンガンを入れられそうになったところを止める陣馬、駆けつける毛利と向島。刑事たちの見事な連携プレー。そこに、周りを見下し、自分の正義を強く信じる九重は間に合っていない。彼は少年たちのひとり成川(鈴鹿央士)を追い詰めるも、真木の探索を優先させるべく、目の前で逃すことになった。エリートとして生まれ育った九重が、自分の考えを揺さぶられる回でもあった。

 

謎の男、菅田将暉の登場

3話では、伊吹の全力疾走もさることながら、自転車で走る志摩の姿もよかった。赤い自転車で駆け抜ける志摩。その薄手のロングジャケットのなびき具合。塚原あゆ子監督が『AERA』で星野源と対談するなかで「細かいところにいろいろとフェチがある」と語っていたが、このジャケットの裾ももしかしたらそのひとつじゃないだろうか。

ここにきて、1話から登場している暴露系の動画サイト「ナイトクローラーチャンネル」の存在が不穏だ。動画内でREC(渡邊圭祐)は少年たちの顔写真と本名がネットで出回っていることを告げる。ネットによる過剰な制裁が行われている様子は、同じく野木が脚本を手がけたドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」を思い起こさせる。

で、リアルタイム視聴でドラマでこんなに驚かされることがあるんだ、と感じた菅田将暉の登場。逃げ続ける成川の前に現れ、ドラッグの入った小瓶を笑顔で振る男。彼がこの先、どのように二人の前に立ちはだかるのだろうか。

もうひとつだけ。3話は焼うどんだった。うどんに関しては、志摩と陣馬がバディのようだ。

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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