綾野剛×星野源「MIU404」6話。志摩は「相棒殺し」なのか? 伊吹のたどりついた真相

綾野剛と星野源W主演で話題の「MIU404」6話。爽快なエンターテイメントを通じて、大きなテーマを視聴者に投げかけます。5話の最後に志摩(星野源)が「相棒殺し」と呼ばれるのを耳に挟んだ伊吹(綾野剛)。伊吹が相棒・志摩の隠された過去を探る回となった6話を振り返ります。

臨時で組まれた新たなバディ、伊吹&九重

連続ドラマって、全10話とか11話の間にちょっと立ち止まる回が挟まれていることがある。ルーティンから外れたような、全体の流れとは少し異なる回。「MIU404」の6話はまさにこれに当たる。新しく事件が起こるのではなく、1話から少しずつ描かれてきた志摩(星野源)の過去が明かされる回だった。志摩の非番の日にこの問題に取り組み、過去に起こったことにひとつの決着をつけたのは他ならぬ伊吹(綾野剛)だ。

5話で志摩が「相棒殺し」と呼ばれるのを耳に挟んだ伊吹。実際に志摩の過去の相棒・香坂(村上虹郎)が不審な死を遂げていることを知り、九重(岡田健史)とともに、2013年の事件の真相について調べ始める。タリウム殺人事件を追っていた志摩と香坂。香坂の亡くなった日、その強引な捜査を志摩が問い詰めていたという事実が浮かび上がる。

九重が、伊吹の手のひらで転がされていく姿がいい。「志摩だったら調べてくれるのにな~」という言葉にそそのかされて臨時タッグを組むことになるところからして、もう「まんまと」といった感じだ。「相棒殺し」とつぶやいた刈谷(酒向芳)に事件の概要を聞く際、九重の刑事局長の息子という立場を利用するのも、これまでの九重だったら拒否していただろう。4機捜の面々と過ごす中で、九重に変化が起こっているのがわかる。

香坂が容疑者に固執するあまり、偽の証拠を使って逮捕をしようとしたことがわかった後。「俺が香坂刑事だったら言えたかなあ」とつぶやく九重に、本来の九重の相棒である陣馬(橋本じゅん)が「間違いも失敗も言えるようになれ」と強く伝える。6話は伊吹と志摩だけでなく、陣馬と九重のつながりが深まる回でもあった。

「スイッチを大事にしたい」伊吹が突き止める真相

志摩の過去を探る中で、香坂が最後に残した手紙の内容を知りたい伊吹と九重は桔梗(麻生久美子)に直談判する。「4機捜は臨時の部署であり、相棒は一時的なもの」と断ろうとする桔梗に対して、伊吹は話し始める。「俺が4機捜に来たのがスイッチだとして」「1個1個全部がスイッチで」「大事にしてえの。諦めたくねえの」「志摩と全力で走るのに、必要なんですよ」

「スイッチ」は、3話で志摩に九重が話したルーブゴールドバーグマシン(ピタゴラ装置)の例えだ。「何かのスイッチで道を間違える」「誰と会うか、誰と会わないか」。そのいくつものスイッチが伊吹にもあって、志摩と出会って、ここにいる。それを間違った出会いにしたくないから、伊吹は全力で真実を追っている。「急遽誰かが4機捜に入ったから」という部分で「誰か」の当事者である九重が映るのもにくい。

調べ尽くしたのち、香坂と最後に何を話したのか、まっすぐ志摩に電話で聞く伊吹。伊吹の思いを受け止め、話す志摩。その最中に、伊吹は香坂の死が事故によるものであり、香坂は最後まで刑事であり続けた証拠を見つける。

真相を見つけて「香坂ちゃん、サンキューな~」と志摩の過去の相棒につぶやく伊吹。「お前の相棒が伊吹みたいなやつだったら」と亡き香坂に呼びかける志摩。何度リフレインしても、過去は戻らない。けれども伊吹のおかげで、志摩は香坂の最期を知ることができた。今回は伊吹はカンではなく、刑事らしく、きっちりとした証拠をもとにそこにあった真実を提示した。
屋上から電話する伊吹の見上げる青空。桔梗宅で電話を受ける志摩の背後には庭の緑。事実を知ったあと、二人が佇む屋上の、曇った夕焼け空。その画の美しさも心に残る。

ドラマを成立させる女性ゲスト陣の絶妙さ

毎回のことだが、ゲスト出演の役者たちがみんないい。タリウム事件の容疑者を演じた北浦愛の妙ななまめかしさ。セリフはないが、振る舞いも表情も印象的だった真犯人の範田紗々。さらに香坂が最後に発見した事件の被害者の女性を演じた垣内彩未の明るさ。何年も前の事件の目撃者を自宅ベランダの垂れ幕で探そうとする行動は、ゼロではないけどやや突飛にも見える。けれども垣内の演じる、過去の事件をあっけらかんと話す女性ならそんなこともするかもしれないな、と思える。

北浦演じる容疑者の女のギラギラ光るアイシャドウと、おでこのテカリも印象に残る。扇風機の風を受けた佇まいがあまりにも無防備で、不穏さを醸し出していた。無防備さといえば、桔梗が亡き夫について語る回想シーンも相当だった。仕事場ではマットめな白い肌の桔梗が、このシーンでは素肌っぽいテカりのある肌、洗いたてのような髪。そこにリアルさがあった。

やはり塚原監督が女性だからか……と思い浮かび、この考えはもしやハラスメントになっていないかと自省する。そう思うのも、このドラマの姿勢を見ているからだ。志摩が桔梗宅で修理業者を待つことになったときの桔梗の「パワハラになってない?」という一言。刈谷が香坂の事故について語ったとき桔梗について話す「一人は女であれだ、機捜初の女隊長」という言い方。タリウム事件の概要を聞いた九重の「怖い女ですね」に対する伊吹の「どっちがだよ」。
本筋ではないところでも、常に登場人物の力関係と立場に心が配られている。だから観ていて気持ちいい。
女性であるかどうかは関係なく、塚原監督はメイクや顔のテカりにも演出を行き届かせる人なのだ。

桔梗宅に匿われるハムちゃん(黒川智花)に危険が迫っているかのようなエンディング。志摩は伊吹からの電話を受けたことで、桔梗宅への盗聴器設置を見逃したのかもしれない。これも7話以降に繋がるひとつのスイッチになりそうだ。

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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