綾野剛×星野源「MIU404」8話。伊吹の人生を揺るがす事件が二人の絆を深める

綾野剛と星野源W主演で話題の「MIU404」8話。伊吹と志摩のバディが活躍し、事件を解決していく裏で、彼らの近くに漂う不穏な空気が回を追うごとに色濃くなっています。8話では、伊吹の人生を揺るがす事件が発生。意気消沈する伊吹を救うのは……。

とうとうUDIが本格的に登場!

山中で指を切られた遺体が見つかる。その特徴から過去の未解決連続猟奇殺人との関係性が疑われ、捜査一課が最初から捜査を担当することに。現場に急行した伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)は刈谷(酒向芳)の手伝いに回される。被害者は前科持ちで、その事件を伊吹の恩師であるガマさんこと蒲郡(小日向文世)が担当していたことがわかる……。

「MIU404」がドラマ「アンナチュラル」の世界と地続きであることは、ちょくちょく示唆されていた。3話に毛利刑事&向島刑事が登場したり、6話で志摩の元相棒・香坂の検体者記録に石原さとみの演じる主人公「三澄ミコト」の名前が執刀医として記録されていたり。
今回はとうとう、伊吹と志摩が実際にUDIラボに行くことに。坂本(飯尾和樹)との本筋に関係なさそうなシーンを挟んで油断させておいて、所長の神倉(松重豊)まで登場するとは! しかも井浦新が演じた中堂が連続殺人に対する疑問を持ったという展開が熱い。「感じ悪い、口が悪い、態度悪いの三拍子揃ってる」「中堂は連続殺人と聞くと並々ならぬ思い入れを持ってしまうんですよ」と中堂に関する所長のセリフがことごとく「アンナチュラル」ファン納得の表現。そりゃ同じ野木亜紀子が書いているのだから当たり前といえば当たり前だけれど、「アンナチュラル」メンバーの登場に話題性以上の必然性があると思えるのがうれしい。

すべて「自分のせい」で起こるできごと

視聴者は、外国人実習生問題の現実を突きつけられた4話で、ガマさんをわかった気になっていたのではないだろうか。伊吹の恩師であり、彼を刑事という仕事に導いた人。伊吹に「信じる」ことを教えた人。けれども人は一面だけで判断できるものではないという真実がこの8話にはあった。刑事として「罪を犯した者を逮捕して服役させる=赦す」ことをしていた結果、犯人に最愛の妻を殺されたガマさん。「刑事だった自分を捨てても、俺は許さない」の言葉に、伊吹の入る余地はない。

桔梗(麻生久美子)宅に盗聴器が仕掛けられていることが判明したとき、工事に立ち合いながらも怪しさに気づかなかった自分を責め続ける志摩に伊吹は言う。「だったらこの世の全部お前のせいでいいよ!」。このできごとによって警察の官舎へ移り住むことになったハムちゃん(黒川智花)は「私がいなければ(桔梗親子は)家を出なくて済んだ」と悩む。ガマさんも同じだ。自分が刑事として彼を許さなければ、妻が死なずに済んだ。今回も象徴的に登場したピタゴラ装置のように、どこかのスイッチが違えば、現実が変わったかもしれない。けれども人はどれだけ悔いても、遡ってスイッチを押し直すことはできない。
「お前にできることは何もなかった」という言葉は、「どこなら止められた?」と自分を責める伊吹にガマさんが残した最後のやさしさだ。

伊吹によって変わった志摩が、伊吹を救う番

伊吹への接しかたや規律に対する考え方など、回を追うごとに志摩は少しずつやわらかく変化しているように見える。今回でいえば、高圧的な刈谷に反抗する伊吹に対して「口を慎め、古い世界で生きてるんだ」とたしなめるフリでさらに嫌味を言い募るシーン。捜査資料を見つけた伊吹に「バレないように戻せよ」と言うセリフ。「非番の日は会わない」と言っていた伊吹の自宅にまで行き、彼の言う「勘」について論理的に伝えるところ。そして、ラストシーンの「行くぞ、相棒」。

伊吹にとっては「信じること」を教えてくれ、自分を刑事の道へと導いてくれた恩人、ガマさん。そのガマさんが、信念を曲げて罪を犯した。伊吹にとっては地面が揺らぐようなショックだろう。ガマさんという存在を失ってしまった伊吹を救うことができるのは、「誰も信じない」と言っていた志摩だ。

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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