綾野剛×星野源「MIU404」7話。これは「404 not found」居場所をなくした者たちの物語だ

綾野剛と星野源W主演で話題の「MIU404」7話。主演2人のバディぶりにますます磨きがかかってきています。「ノンストップ機捜エンターテイメント」の名の通り、豪華ゲストで盛りだくさんだった7話を振り返ります。

罪を犯した人を助ける、という考え方

トランクルームで死体が発見され、駆けつける伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)。やがて、死んだ男・ケンさん(佐伯新)は指名手配犯であることがわかる。同時刻にトランクルームにいたBABYMETALファンのスゥ、モア(原菜乃華、長見玲亜)、コスプレイヤーのジュリ(りょう)、謎の老人倉田(塚本晋也)らに翻弄される二人。一方、息子の結婚相手との顔合わせのため休暇をとっていた陣馬(橋本じゅん)の目の前にも、指名手配犯が現れる。

偶然同じタイミングで見つかった二人の指名手配犯は、10年前に起きた強盗致傷事件の犯人だった。彼らも最初はただの空き巣だったはずなのに、家主と遭遇したはずみで「強盗致傷」という罪を背負い、逃げ続けてしまったことで10年を無駄にした。志摩が3話で話していた、「スイッチ」によって転げ落ちてしまった者たちだ。

陣馬が追う指名手配犯・大熊(三元雅芸)が住んでいたトランクルームの壁には、時効までの年月を数える正の字が並んでいた。10年という時間の長さに想いを馳せる伊吹と志摩。「(10年間誰かを恨まず、腐らずにすんで)俺はラッキーだったな」「大熊の不幸は誰にも見つからなかったこと」という伊吹のセリフからは、罪を犯してしまった者を責めるのではなく、その状況から救いたいという思考が見える。終盤、SNSで宿泊先を探すスゥ、モアに「君たちに何かあったら悲しい」と諭す志摩の言葉も同じ考え方から出たものだろう。

要素てんこ盛りの中に丁寧な描写

息子の顔合わせを放り出して大熊を追う陣馬。そこに合流する伊吹と志摩。King Gnuの井口理(!)演じる、Uber Eatsっぽい「出前太郎」の配達人の言葉によって志摩が機転を利かせ、配達人に変装した大熊を追い詰める。

警棒をシュタッと伸ばして大熊に挑む伊吹と志摩のかっこよさ! でも、彼らに陣馬を加えた三人がかりでもてこずるほど強いということは、大熊は10年の間、それなりにトランクルームで鍛えていたのかもしれない。さらに、取り押さえられた大熊の嘆きの声に、10年の時間が現れていたように思えた。これだけ要素が詰め込まれた1時間のなかでも、このあたりがきちんと描かれているのはやはり丁寧だなあと思う。

丁寧といえば、密かにマメジ(生瀬勝久)が活躍した回でもあった。陣馬からの連絡を受けた九重(岡田健史)の「魚肉ソーセージのフィルムが落ちてた事件、ご存知ですか?」という一言だけで該当の事件を思い出したマメジは、権威にへつらうだけの無能な存在というわけではないようだ。

「404」、居場所をなくした者たち

ケンさんが生前、自分の暮らしを「死んでるのと同じだ」と言っていたことを回想し、「いらないものを置いておく箱の中で永らえて意味なんてあるのか」と慟哭する倉田。「意味なんてない。私がコスプレで歌ってるのも好きでやってるだけ」と言うジュリ(実は弁護士)と、「ここにいらないものなんて置いてないよね」「宝物、置いてあります」と話すスゥ、モア。同じ箱でも、人によって捉え方は違う。

こっそりとトランクルームに潜む生活を送る者たちや、親との関係がよくないのか、家に帰らないスゥとモア。7話には「居場所をなくした者たち」が多く登場した。思えば、陣馬も家庭をかえりみず、家族の中で居場所をなくしていた。
1話でも示唆されていたけれど、「MIU404」の404という数字で思い浮かぶのは「404 not found」だ。ウェブページが見つからないときに出るエラーメッセージ。3話から逃げ続けている成川(鈴鹿央士)は、学校の体裁のために部活という場所をなくしていた。5話の技能実習生や留学生も、はるばるやってきた日本でちゃんとした居場所を与えられていない者たちだ。「MIU404」は「居場所のない者たちの声」を拾うドラマなのかもしれない。

スゥとモアに対して、ジュリは「悪い大人もいるけど、ちゃんとした大人もいる」「諦めないで、まずは公共や福祉に頼る」と伝え、場所を取り戻すきっかけを与えた。ケンさんが飼っていた猫のきんぴらも、新しい場所を見つけた。そうやって少しずつでも救いが生まれているのは確かだ。

そういえば、今回大熊が正の字を書いて待ちわびていた時効の期日は2019年のように見えた。6話でも、志摩の相棒が亡くなった2013年のできごとをたしか「6年前」と言っていた。物語と関係あるかはわからないが、我々はどうやら2019年の機捜を見ているらしい。

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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