2020年冬ドラマ考察

「知らなくていいコト」9話 ケイトを選ぶつもりの尾高。不倫の恋が不幸を連鎖させる?今夜最終回【2020年冬ドラマ考察】

人気ライターが放送されたばかりのドラマを徹底解説。ドラマが支持される理由や人気の裏側を考察し、紹介します。今回ご紹介するのは、「知らなくていいコト」第9話。吉高由里子さん演じる真壁ケイトと距離を縮めつつあるのは、妻子ある尾高由一郎(柄本佑)。ケイトは尾高を選ぶのか?気になるその展開は……。

●2020年冬ドラマ考察

3月4日に、吉高由里子主演「知らなくていいコト」(日本テレビ、水曜夜10時)の第9話が放送された。

家族よりもケイトのために生きる尾高の選択

人とすれ違うと、今でも「刺される!?」とあの日の惨劇がフラッシュバックする真壁ケイト(吉高由里子)。背中の痛みがまだ残る尾高由一郎(柄本佑)。皮肉にも、癒えない傷が疼く度、おたがいの顔が脳裏に浮かんで、2人の距離はますます近付いていく。

尾高はマスコミの包囲網に悩む乃十阿徹(小林薫・過去の大量殺人事件の犯人とされているケイトの父親)を匿った。尾高のスタジオに身を寄せたということは、乃十阿の中でケイトとの接触は想定内ということ。尾高は常に「ケイトのために」を念頭に置いて行動する。車に離婚届を忍ばせる尾高。もう、彼は心を決めているようだ。

尾高「俺たちのこと、ちゃんと話そう」
ケイト 「うん」

「両立なんてできない」と自覚する尾高は、妻と子ではなくケイトを選ぶつもりだ。

 

子どものために人生を捨てた乃十阿、妻子よりケイトを選ぼうとする尾高

ケイトは尾高のスタジオで乃十阿と会った。再び顔を合わせた父は、物静かで礼儀正しい男だった。ホースで水をかけてきた以前の粗暴な態度は、本来の乃十阿ではない。殺人の前科を持つ自分に近付いてはいけない。娘を思う親心が理由だったと、今の誠実な姿を見ればわかる。

乃十阿の元弁護士・高村(平田満)がケイトと尾高を呼び出した。高村はケイトに告げた。

「あなたは殺人犯の娘ではない可能性もある」

30年前、当時3歳だった乃十阿の息子はハーブティを作る母のため、水に草を入れる手伝いをよくしていた。乃十阿が起こしたとされる事件は、ハリヒメソウという毒草が飲料タンクに入ったことで起きた無差別殺人だ。
「水に草を入れることは良いことだと思っていた3歳の子どもがキャンプ場の飲料タンクにハリヒメソウを入れたとしたら……。私はそのように想像しました」(高村)
何も知らない息子を庇い、乃十阿は罪をかぶった。これが高村の推測である。

乃十阿が服役した25年という年月は長い。空白の期間がある乃十阿は、コンビニのサンドイッチの封を開ける方法さえ知らなかった。息子の未来を守るため、乃十阿は自分の人生を犠牲にした。一方、妻と幼い子と離れ、ケイトとやり直そうとする尾高。誠実な乃十阿と、自分が愛する尾高。2人の選択はあまりに対照的だ。乃十阿の父性愛を知ったケイトは、妻子を捨てようとしている尾高を選べるのだろうか?

 

母・杏南からケイトに不幸は連鎖する?

逮捕された乃十阿は、妻と離婚することを望んだ。憔悴しきった妻は、戸惑いつつその申し出をすぐに承諾した。次回予告(今夜放送最終話)を観ると、乃十阿の本妻だった女性の素性を同僚の小野寺明人(今井隆文)が報告している。
「当時、乃十阿の奥さんは『夫の愛人には子どもまでいるようだ。頭がおかしくなる』と言っていたみたいです」

乃十阿と関係を持った杏南(秋吉久美子)と娘のケイトの存在が、乃十阿の妻の人生を狂わせようとしていた。加えて、次回予告でケイトは「殺人事件に私が関係していた……」と涙を流している。
つまり、こういう予想が立つのだ。乃十阿の妻は病み、杏南を陥れるため毒草を入手した。それを息子がタンクに投入してしまった。乃十阿と杏南の不倫が本妻を壊したせいで、30年前の事件は発生してしまった。ケイトの「殺人事件に私が関係していた」というセリフが、この事実と繋がってくる。

ケイトと尾高の関係は不倫であり、略奪愛だ。2人の恋は杏南からケイトに不幸を連鎖させるかもしれない。尾高は最終話でケイトに結婚を申し込む。でも、2人は結ばれない気がする。

泥酔状態でケイトの部屋を訪ねた野中春樹(重岡大毅)。彼が「幸せになりたい」と泣いたとき、ケイトは「幸せって手に入らないから幸せなんじゃないの?」と返答をした。妙に心に残る一言だったのだ。

 

知らなくていいコトを記事にするのか

7話で、入院中の尾高をお見舞いしていた妻のみほ(原史奈)。赤ちゃんを抱いて病室から出てきた彼女は柔和な表情をしていた。恐らく、彼女は夫の不倫に気付いていない。次回予告によると、乃十阿の息子はドイツにいるようだ。日本の狂騒から離れ生活する彼は、父が自分の罪を被った事実を知らないはずだ。
死の間際まで杏南が隠していたケイトの出生の秘密も、乃十阿が口を閉ざし続ける事件の真相も、どれも知らなくていいコトである。しかし、そんな知らなくていいコトを世に知らしめるのが週刊誌記者という職業だ。

今夜の最終話で、編集長・岩谷進(佐々木蔵之介)は事件の真相に関する記事を書くよう嫌がるケイトに強いる模様。ケイトと乃十阿、その周辺にいる大勢の人生を壊すかもしれない事実についてである。
真相を知りたがる人ばかりなのに、知らないほうがいい事実もある。もしケイトがこの記事を書けば、乃十阿が背負った30年間は全く無意味なものになる。

 

「知らなくていいコト」
日本テレビ系 水曜よる10時
脚本:大石静
主題歌:flumpool「素晴らしき嘘」(A-Sketch)
音楽:平野義久
出演:吉高由里子ほか
https://www.ntv.co.jp/shiranakuteiikoto/

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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