「半沢直樹」新シリーズ今夜スタート!香川照之じゃない、大和田常務はなぜムカつくのか?

「倍返しだ!」で一世を風靡した、超硬派お仕事ドラマ「半沢直樹」。新型コロナウイルスによる撮影中断を経て、7年ぶりに半沢直樹が帰ってきます。今回振り返るのは特別総集編の後編。いよいよ半沢の敵、大和田常務と真っ向勝負で挑む後編がサクサクと見ることができます。なぜ大和田常務はこれほどまでにムカつくのか、考察します。

「半沢直樹」(TBS系)の新シリーズがいよいよ、スタートする。それに先駆けて7月12日、特別総集編の後編が放送された。なんと、視聴率は驚異の14.8%。みんな「半沢直樹」が大好きみたい。

サクサク楽しい総集編

総集編後編は、半沢直樹(堺雅人)が営業本部に栄転した1年後からタート。半沢は、120億の運用損失が発覚した伊勢志摩ホテルの経営再建を任される。この伊勢志摩ホテルに回収懸念が生じると半沢の東京中央銀行も巨額の引当金が発生してしまい、頭取のクビまで危うくなるという。しかも、伊勢志摩ホテルは同族経営で、その社長を貶めようと企む専務の存在が。さらには金融庁検査など、厄介な問題が山積みになり、半沢の周りは敵だらけになってしまう。

前編レビューでも書いたが、総集編のスピーディな展開がハマっていた。古里(手塚とおる)退治、花(上戸彩)の疎開資料隠し、半沢の土下座、近藤(滝藤賢一)と半沢の剣道など、端折りながらも印象的なシーンがサクサク観られて、前シリーズを観ていた人も楽しいし、観ていない人も次シリーズへの十分な準備運動となった。

ストレス製造機・大和田常務

「やれるもんならやってみな」

「半沢直樹」ブームの大きな理由のひとつが、大和田常務を演じる香川照之のストレスを与える演技だ。表情筋を繊細に操り、シワや眉毛をちょうどムカつく感じに仕上げる。「やれるもんならやってみな」など、セリフのイントネーションも不必要なまでに強弱をつけて他人の精神を逆撫でし、真顔でも笑顔でも眼はちゃんと死んだまま、挙動全てに嫌悪感。背が微妙に低いのもなんかムカつく。

これら全ては、役者・香川照之の力だ。放送当時は“顔芸”という言葉が流行していたが、香川照之が大和田常務という役を飛び越えていたから起きた現象だと思う。みんな、大和田常務よりも香川照之を見ていたのだ。では、大和田常務とは一体どんな人物なのだろうか?

メガバンクの常務、手練手管の悪党、様々な強いイメージを持っているが、実は意外なほどに小物だと感じる。そもそもなぜあんなにムカつくのかと言えば、それはわざと相手をムカつかせようとしているのであって、つまりはただのマウンティングに過ぎない。大物特有の小物を相手にしない器の広さはなく、上昇志向は持ちつつも、しっかりと下を潰して自分の地位を楽しんでいる。

魅力ある悪役といえば、悪なりの正義だったりポリシーだったりで、そこにわずかな共感ポイントがあるのだが、大和田にはそれがない。つまり人間的にカッコいい部分がない。たぶんほとんどの人間が目にしてきたであろう「偉そうな上司」「バイトを下に見る店長」、ここら辺と大して変わらないのだ。リスペクトできる部分がないからこそ、苛立ちは増長する。小物の癖に権力を持ってしまった感じがムカつくのだ。

島田紳助いわく…

その証拠に、攻めてる時は威勢がいいが、受けに回ると余裕がなくなる。クライマックスシーンでは、「私は常務だぞ!常務~!」とラスボスとは思えないほどの小物発言。岸川部長(森田順平)が裏切りそうになった時なんて、「岸川部長は体調が悪いようで…」となんの工夫もない誤魔化しセリフを言う始末。そもそも「部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任」。こんなセリフ、ただのジャイアンだ。

大和田は飛びっきり卑怯だが、その反面脆い。昔、島田紳助が「俺らは打たれ弱いから先に噛みつくねん」みたいな言葉を言っていたが、これを地で行っている。なんとも人間臭い。だが、その人間臭い親近感をもハネ飛ばすほどムカつく、それが大和田常務なのだ。

いよいよ今夜スタート!

今夜スタートの新シリーズは、池井戸潤の『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』が原作。前作で半沢が出向を命じられた、子会社の東京セントラル証券が舞台だ。行内で銀行に復讐してきた半沢が、今度は行外から銀行に立ち向かう。

前作からの香川照之、北大路欣也、上戸彩、及川光博らに加えて、今回は古田新太、筒井道隆、井上芳雄、井川遥ら超豪華キャストも追加。さらに、就職氷河期のロスジェネ世代として賀来賢人、尾上松也らも登場するなど、今までと違って半沢の下の世代も台頭してくる。

原作の評判は前シリーズよりも良いくらいだし、製作陣の気合もすごい。ハードルは上がりに上がりまくっているが、今さら下げようもないので、ワックワクしながらテレビと向き合いたい。

 

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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