「ハケンの品格」はこういうドラマだった。東海林を救う春子、好意だだ漏れのディスり合い5話

新型コロナの影響でようやく始まった、13年ぶりの「ハケンの品格」新シリーズ。スーパー派遣・大前春子が戻ってきたのは、前シリーズと同じS&F社。ところがS&F社は、今にも沈みそうな10年前の価値観の会社に。5話でようやくS&F本社に東海林武(大泉洋)が帰ってきた!やっぱり「ハケンの品格」は春子と東海林のディスリ合いがあってこそ!

遂に本格復帰である。7月15日放送「ハケンの品格」(日本テレビ、水曜夜10時)第5話で、大泉洋演じる東海林武がS&F本社勤務に戻ったのだ。

春子  「この枯れたまりもは、いつまでここで油売ってるんですか?」
東海林 「これはまりもじゃねえ、地毛だ!」

いきなり、他のキャストが素で笑うほどのディスり合いを展開する大前春子(篠原涼子)と東海林。東海林が戻り、水を得た魚のようになる春子。「くるくるパーマ」から「枯れたまりも」に揶揄がグレードアップしているし。ずっとこれを待っていた。

 

ディスり合いの根っこに互いの好意がある

北海道で手掛けたお菓子「黒豆ビスコッティ」を全国展開しようと、ダイエット効果を証明するデータを持って帰ってきた東海林。しかし、雑誌の取材をきっかけに黒豆ビスコッティの成分データ改ざんが疑われる事態となった。東海林は会社を代表して謝罪会見の場に立つことになる。肩を落とす東海林を見て、春子は言葉をかけた。

春子  「自分のお尻は自分で拭いてください、不祥事課長」
東海林 「今、不祥事課長って言ったか?」
春子  「言ってません」
東海林 「いや、言っただろ!? 俺は東海林課長だ。俺の名前を言ってみろー!」

「不祥事課長」と言われた瞬間、いつもの東海林に戻る流れが最高だ。「あいつにキレると得体の知れないパワーが湧いてくるんだよ」って、春子のディスは栄養ドリンクじゃないんだから……。

会見で「調査中です」と話をごまかし続けるよう、東海林は上層部から指示を受けていた。そんな東海林に、春子はやはり憎まれ口を叩くのだ。

東海林 「ごまかすしかない。それが会社の方針だ」
春子  「いいえ! あなたには無理です。あのときだって、うまくごまかせば社長賞を獲れたはずです。全て自分の手柄にすればいいものを、土壇場で余計な報告をしたんです。『派遣がほとんどやった仕事だ』などと。このオヤジは大風呂敷を広げるくせに、1番大事なときに嘘をつけない男なんです」

ディスっているようで、実直で不器用な東海林の性分を信じる春子の気持ちがだだ漏れしている。2人の口論は、根っこの部分に好意と敬意がある。春子はディスることで東海林に元気を出してほしかったし、ディスりながら東海林の誠実さを理解していた。同時に、嘘をついてでも春子は東海林に社長賞を獲ってほしかった。彼女は名古屋支社時代の無念をいまだ引きずっている。春子は東海林にぞっこんだと思う。

 

「ハケンの品格」はこういうドラマだった

謝罪会見で東海林は嘘をつけなかった。「調査中です」とごまかすどころか、「データに嘘があることがわかりました」と正直に告白したのだ。改ざんを認めた上で「黒豆ビスコッティは本当にいい商品なんです! 旭川の工場でおばちゃんたちがひとつひとつ思いを込めて、手作りで作っています」と、製造者の誠意を代弁した。会見終了後、なんとS&Fに黒豆ビスコッティの注文が殺到した。春子が一目置く東海林の実直さによって、会社は窮地を乗り越えたのだ。

もちろん、春子の存在も大きい。彼女は今回も東海林を救った。東海林が自分の言葉で誠意を伝えたのを見届けてから登場し、「大逆転スピーチです」と東海林に原稿を渡したのだ。さらに、黒豆ビスコッティのモニターとリモートシステムで映像を繋ぎ、応援コメントをマスコミに伝える手配をした。
会社がピンチを迎えると、驚異的なスキル(今回は検査分析士、スピーチ検定3段に加え、ジグソーパズル検定1級資格が意外な効力を発揮!)と機転で春子が起死回生の一手を打つ。そうだ、こういうドラマだった。ようやく、「ハケンの品格」が戻ってきたという心境。4話までは、似て非なる作品を見ていた気さえしてくる。

「ハケンの品格」は、東海林がいないと成り立たないドラマだ。いるだけで心から嬉しい。東海林がいると、途端に春子が可愛くなるし。

 

「やっぱり好きだ」と伝える東海林、独身を貫く里中

次回予告で、東海林が春子に「やっぱり好きだ」と口にする場面があった。これは好意を伝えているのか? それとも、ただのミスリード?

春子に好意を抱いているのは、東海林だけじゃない。引く手あまたのはずの里中賢介(小泉孝太郎)は、今も独身を貫いている。断ち切れない春子への想いがあるようだ。13年も引きずったままなのか……。

東海林 「もしかして賢ちゃん、ずっと好きだったのか……?」
里中  「……」
東海林 「俺のこと」
里中  「なんでそうなる(笑)!?」
東海林 「違うの?」

ある意味、「ハケンの品格」は春子と東海林のラブストーリーと言える。そして、里中を加えた三角関係でもあるのだ。

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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