「ハケンの品格」4話。ようやく春子VS東海林に。こんなに大泉洋が必要とされるドラマはない

新型コロナの影響でようやく始まった、13年ぶりの「ハケンの品格」新シリーズ。スーパー派遣・大前春子が戻ってきたのは、前シリーズと同じS&F社。ところがS&F社は、今にも沈みそうな10年前の価値観の会社に。働かない正社員に、新人には終業後の飲みニケーション……。そして4話にして、ようやく東海林武(大泉洋)も登場。やっぱりこのドラマには、「春子VS東海林」が必要?!

7月8日に、篠原涼子主演「ハケンの品格」(日本テレビ、水曜夜10時)の第4話が放送された。今回のテーマはズバリ、新人教育だ。

無気力新人に憧れられる春子

それにしても、S&Fの正社員たちは働かない。「誰でもいいから新入社員のフォローをするように」と呼び掛けられると、途端に全員が知らんぷりするのだ。
確かに、コネ入社の新人・井手裕太郎(杉野遥亮)は厄介な存在である。取引先へサンプル品を配布するよう指示を受けてもひとつも配らないし、仕事中に堂々とソリティアで遊ぶモチベーションの低さだ。

だからこそ、井手には教育が必要だ。しかし、部長の宇野一平(塚地武雅)が行ったのは、終業後の酒席で自らの武勇伝を語る「飲みニケーション」だった。時代遅れのやり方で“営業の極意”を伝授しようとする上司。しかも、その翌日に先輩の付き添い無しで飛び込み営業を課せられた井手。下手したら飛んでも不思議じゃない。新人だけで営業に向かわせ、他の者は社内に残ったままである。マジで、この会社の正社員は仕事しないな……。

井手を成長させたのは大前春子(篠原涼子)だった。落雷による停電で冷蔵倉庫に閉じ込められるも、なんとか脱出した春子と井手。デスクに戻った春子は「たかが交通費の精算ごときで手間取ってしまいました」と、浅野務(勝地涼)に大袈裟な謝罪をした。その姿を見て、今度は井手が宇野に頭を下げた。
「回収品が混ざってたのはそもそも俺が頼まれた仕事をしてなかったせいで、福岡さんや千葉ちゃんのせいじゃありません。申し訳ありませんでした」(井手)

配る予定のなかった回収品のサンプルが取引先へ渡った責任を福岡亜紀(吉谷彩子)と千葉小夏(山本舞香)が問われていたところでの謝罪。つまり、「派遣が新入社員の教育に口出すな!」と咎められた春子は、自らの行動で社会人としてあるべき姿を井手に学ばせたのだ。「こうやって謝りなさい」と、暗に見本を見せていた。

無気力だった井手は目標を持つようになる。
「決めました。俺、スーパー派遣になります。大前さんみたいな生き方が俺の理想だって」
「VTuberになりたい」という夢があった井手の目標が、今度はスーパー派遣に変わった。確かに、「人間関係が面倒臭い」「会社の飲み会は時間のムダ」「仕事とプライベートはきっちり分けたい」「自分のスキルが生かせる場所で働きたい」という彼の悩みは、どれも派遣社員になれば解決するが……。

他の社員がいるのにメンチを切り合う春子と東海林

今回、東海林武(大泉洋)の出番が激増した。この男が登場するだけでドラマの雰囲気はガラッと明るくなる。1人の役者の登場でこうも空気が変わるか!? ここまで大泉洋が必要とされるドラマは他にないと思う。

4話には東海林のハイライトシーンが2つあった。ひとつ目はS&Fの重要取引先「テイスト・オブ・ライフ」社長であり、井手の母親の美香(キムラ緑子)が「黒豆ビスコッティ」の商談で来社したときだ。「働いている息子の姿が見たい」と美香は望むが、そのとき井手は冷蔵倉庫に閉じ込められていた。時間稼ぎをするため、東海林は「黒豆ビスコッティ」の誕生秘話を熱く語り始める。
「釧路湿原に参りまして、そこに1話の丹頂鶴が飛んで参りました。その丹頂鶴が“ビスコッティー!”って。これ、私が聴こえただけかもしれないですけど……」
旭山動物園とかおたる水族館とか、延々と続く北海道ネタ。炸裂する大泉節。東海林というより、もはやただの大泉洋である。

2つ目のハイライトシーンは、4話のラストシーン。営業事業部の社員たちを前に「営業一課課長に就任しました東海林武です」と、堂々宣言した東海林。そして、就任挨拶をしながら東海林は春子を睨みつけた。視線に気付いた春子は東海林に微笑みを返し、すぐさま目を見開いて睨み返す。他の社員もいるのにメンチを切り合う2人。仲がいいのか悪いのか全くわからない。

そんな東海林の本格復帰は、今夜放送5話からになる模様。春子VS東海林がようやく見られるのだ。長かった……。水曜放送のドラマだけに、これからの2人の戦いを「水曜どうでしょう」別バージョンと呼びたい。

前シリーズは、部長の桐島敏郎(松方弘樹)がセッティングした縁談を断って名古屋支社に左遷された東海林を春子が追いかけるエンディングだった。あの後、2人の仲はどうなったのだろう? そこをキチンと知りたい。

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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