最終回が早すぎる「BG~身辺警護人~」斎藤工は木村拓哉のもとを去るのか

新型コロナウイルスの影響で放送が延期されていた「BG~身辺警護人~」新シーリーズ。今回、主演の木村拓哉演じるボディガード島崎章とバディの高梨雅也(斎藤工)が守るのは、立ち退きを迫られているカレー屋の女主人(名取裕子)。「BG」のスピリッツが凝縮されていた6話を振り返ります。

「ありがとう、ボディガードさん。私の日常を護ってくれて」

木村拓哉主演の「BG~身辺警護人~」もいよいよ大詰め。なんと本日が最終回。やっぱり全7話はちょっと短いよね。コロナめ……。

先週放送された第6話は、立ち退きを迫られている名取裕子演じるカレー屋の女主人をキムタク&斎藤工のボディガードコンビが護るというお話。たしかに全10話の6話目ぐらいにありそうなエピソードだが、そこには「弱き者の盾となる」という「BG」のスピリッツが凝縮されていた。その上、あんなことが起こったり、こんなことが起こったりという盛りだくさんな内容で、16.3%という高視聴率をゲット。最終回は20%超えなるか?

日常を奪われた人たちの物語

佐久間華絵(名取)から島崎警備に持ち込まれた依頼は、立ち退きを迫られている店と自分を護ってほしいというもの。華絵は夫とともに40年もカレー店を営んできたが、懇意にしていた大家が亡くなった途端、土地を相続した大家の息子・充(永沼伊久也)から立ち退きを要求されたのだ。裁判中に夫は死去。ひとりぼっちになり、充らから嫌がらせを受け続けた華絵は、島崎警備に自分を護ってほしいと依頼したのだ。法的には充に理があるので高梨(斎藤)は躊躇するが、島崎(木村)は依頼を迷いなく引き受ける。

オラつきまくった充を演じていたのは、『まんぷく』の赤津裕次郎役で人気を博した永沼伊久也。「自粛明けた一発目の芝居が木村さんと一対一のシーンだったもんで心臓飛び出るか思いました実際」とツイッターで告白していた。そりゃそうだ。

強制退去の日、華絵をしっかりガードする島崎と高梨。しかし、島崎は華絵に別の目的があることに気づいていた。カレー店に固執するわりに、華絵はカレーの仕込みをまったくしていなかったのだ。

「ボディガードさんって、腕っぷしが強いだけの用心棒かと思ってたけど……案外、いい勘してるのね」
「依頼人をよーく見るのが、仕事なだけです」

人(特に女性)の話をしっかりと聞く男がドラマの中で流行しているが、相手をよく見るのも大切なこと。よく見ていれば、相手の考えていることや望んでいることがわかることもある。これからは「聞く男」だけじゃなくて「見る男」も流行るかもしれない。

店の中に入ってきて、備品を壊し始める充たちに、華絵は必死になって訴える。

「主人も私も、お客さまの喜ぶ顔を見たくて、40年ここで頑張ってきたんです! 照る日も曇る日も、毎日カレーを煮て、らっきょうを漬けて。私たちだけじゃないですよ。ここで店やってた人たちはみんな一緒なんです! 日常を突然奪われて、どんだけ辛いか。私、自分の店のためだけにこんなことしたんじゃないですよ。ここで、店やってた人たちの気持ちを、せめて誰かにわかってほしいって」

華絵役の名取裕子が木村拓哉と斎藤工にギューッと挟まれながら喋っていたので、うらやましいと思った視聴者も少なくない模様。名取も「お2人に護られて、極楽でございます」とストレートすぎる感想を言っていた(公式サイト)。続けてこうも言っている。「コロナでずっと落ち込んでいたときに、一番いいお仕事をくださって(笑)、ありがとうございます!」。

華絵は「日常を突然奪われて、どんだけ辛いか」と訴えていたが、これはコロナ禍で苦境にある多くの人たちに共通する気持ちだろう。商店街は立ち退きで店がすべてなくなっていたが、立ち退きではなくコロナで閉店を余儀なくされる店の姿とオーバーラップする。

店を明け渡す決心をした華絵に、島崎はこう声をかける。

「場所はどこでも、食べる人が誰でも、カレーを作るっていう日常は、続けられます」

つまり、第6話は「日常を奪われた人」を島崎が護って、励ますというストーリーだった。立ち退き料が入る華絵と違い、現実はもっと辛い人たちが多いと思うが、こうやって日常を奪われた辛さをすくい取ってくれるフィクションがあることに勇気づけられる人もまた多いだろう。

政治家とIT社長とボディガード

クライアントを護るのはボディガードの役目だが、庶民の生活を護るのは政治家の役目だ。だが、与党で総裁特別補佐を務める桑田(小木茂光)は政争に明け暮れ、記者たちを接待する懇親会を自宅で開いていた。庶民の生活などまるで眼中にない。

KICKSの菅沼(菜々緒)、沢口(間宮祥太朗)らが桑田の警護にあたるが、記者の中にかつて沢口を襲い、今は島崎を付け狙う加藤(中村織央)が紛れ込んでいた。桑田に暴行を加え(実際の現場は誰も目撃していないが)、逃走する加藤を取り押さえる菅沼だが、加藤は自分が劉光明(仲村トオル)の依頼で桑田を襲ったと告白。沢口らの追跡を振り切って、そのまま逃走してしまった。

菅沼から事情を聞いた警察は、劉を連行しようとするが劉は逃走。逃走先で劉は島崎に自分の警護を依頼する。自分は潔白だ。すべては桑田と警察が組んでいるのだ、と。加藤は笠松(市川実日子)の亡き夫の後輩で元警察官だった。

このあたりが最終回の大きなエピソードにつながっていくのだが、気になるのが二つの人間関係だ。

ひとつは島崎と高梨。「テレんなよ、バツイチが。笠松先生ね、フフフ」と満面の笑顔を浮かべたり、華絵に「本当にいいコンビねぇ」と言われて「いや、ぜんぜん」「まったくです」と島崎と息ぴったりのアンサーを返していたりした高梨だが、劉からの依頼を引き受けようとする島崎に、「劉社長を護るなら、自分はここを辞めます」と頭を下げて出ていってしまう。最終回、島崎は一人で難しいミッションをこなさなければいけないのか?

もうひとつは島崎と笠松先生。明らかにピンチが2人の距離を縮めているようで、笠松先生が「いいんじゃない。島崎さんも私も、過去があるから、ここにいるんだもん」ともう完全に意識しまくりのことを言いながら、無言で島崎の肩に頭を寄せようとしたところで電話に邪魔されてしまった。最終回、バツイチの島崎に春は来るのか?

いろいろな意味で見逃せない最終回。市川海老蔵はシーズン1の矢沢永吉のようにラストにだけ出てくるような気がする。今夜9時から。

ライター。「エキレビ!」などでドラマ評を執筆。名古屋出身の中日ドラゴンズファン。「文春野球ペナントレース」の中日ドラゴンズ監督を務める。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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