「ハケンの品格」6話。AIを盲信し、AIからリストラ候補にされた東海林。春子とAIの真剣勝負が始まる

新型コロナの影響でようやく始まった、13年ぶりの「ハケンの品格」新シリーズ。スーパー派遣・大前春子が戻ってきたのは、前シリーズと同じS&F社。ところがS&F社は、今にも沈みそうな10年前の価値観の会社に。6話の天敵は「AI」。東海林武(大泉洋)はAIが判断したムダをカットできるのか?それともカットされてしまうのか……?

7月22日に、「ハケンの品格」(日本テレビ、水曜夜10時)の第6話が放送された。

今までこのドラマは、スーパー派遣である大前春子(篠原涼子)と、派遣社員を目の敵にする正社員の対立を描いていた。新シリーズでは、宇野一平(塚地武雅)や社長の宮部蓮三(伊東四朗)らが派遣社員の天敵にあたる。

しかし、6話から春子と対峙する敵が変わったようだ。AIである。

空に架かる虹は「AIは絶対ではない」というメッセージ

社長直々の命を受けてコストカッターになった東海林武(大泉洋)。AIを導入したS&Fは利益率に基づき、会社のムダを徹底的に排除する方針をとった。利益率の低い商品を調べると、皮肉にも里中賢介(小泉孝太郎)肝いりの「まごころ弁当」が目にとまる。つまり、まごころ弁当を作る下請けの隅田フーズを切れと東海林は命じられたのだ。

弁当は日々の天気によって売り上げが左右される。それを知った春子は、気象予報士の資格を生かして独自に天気を予測した。それをもとに、まごころ弁当の数量を調整するというわけだ。
結果、春子が晴れと予測した日に雨が降った。隅田フーズは大量のロスを発生させ、利益率は低下する。「AIは絶対なんですか?」と啖呵を切った春子は、S&Fが盲信するAIと、AIが予測する天気予報の両者に敗けてしまった。……いや、そうではない。実は、春子も雨を予測していた。じゃあ、なぜ春子は嘘を言ったのか?

S&Fと契約が切れた隅田フーズは、後に大手企業のグレートゾーンと直接契約を結び、今まで以上の利益と評価を獲得した。損を被ったのは、隅田フーズを手放したS&Fのほう。コストカットを促すだけのAIに、広い視点で未来を見据える春子の判断は勝っていた。

ちなみに、春子が晴れと、天気予報が雨と予測した日は、後に雨が上がって快晴になった。そして、空に鮮やかな虹が架かった。あのときの虹と、後の隅田フーズの躍進は、「AIは絶対ではない」というメッセージを含んでいた気がしてならない。

6話のエンディングで、AIが製作した人員削減候補のリストが明らかになった。そこには、なんと東海林の名が記されていた。「AIは間違わない、AIは絶対だ」と口にした東海林がAIにリストアップされている。
しかし、決してAIは絶対ではない。春子が言うように、これからAIとの斬るか斬られるかの真剣勝負が始まる。

AIは宮部社長をどう判定する?

ひとつ気になることがある。S&Fは「隅田フーズを切る」という悪手を選んだが、その戦犯は東海林ではなかった。元はと言えば、上層部の判断ミスが原因だ。いつか、AIが「宮部社長は不要」と判定しても不思議ではないと思うのだ。

隅田フーズも、3話に登場した社食アルバイトの牟田(六角精児)も、S&Fに切られてから花を咲かせている。長いものに巻かれるのではなく、信念と技術を信じ、自らの足で1歩踏み出す。その姿勢こそ、これからの時代を生きるために大事だと思う。春子はS&Fを指して、「でかいだけが取り柄の泥舟」と評した。

里中は東海林のためにプロポーズした?

今夜放送7話で、里中がS&F直営のコンビニ出店企画に着手する。プロジェクト成功で業績を上げ、東海林のリストラを阻止するつもりなのだろう。

予告映像を見ると、里中は13年越しに春子にプロポーズするようだ。
「公私ともに、僕のパートナーになってください!」(里中)

口をあんぐり開け、呆然とする東海林。しかし、額面通り受け取れない。東海林の気持ちを知っておきながら、なぜわざわざ目の前で春子に告白するのか? あまりにも里中らしくない。東海林を奮起させるため、あえて見せつけた気がしてならないのだ。

里中の前ではクールな春子も、東海林を前にすると途端に人間味が露わになる。それに気付かない里中じゃない。里中は春子も東海林のことも大好きだ。特殊な三角関係、ある意味切ない。

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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