新「半沢直樹」!堺雅人の“おっさん化”で、賀来賢人の“裏主人公”路線が見えた

「倍返しだ!」で一世を風靡した、超硬派お仕事ドラマ「半沢直樹」が7年ぶりに日曜夜に帰ってきた!東京中央銀行から子会社の東京セントラル証券へ出向した半沢。今まで、肩身の狭い思いをしてきた東京セントラル証券の面々は、銀行を見返せるのか?!

7年の時を経て、新シリーズ「半沢直樹」(TBS系)が7月19日についにスタート。初回視聴率はなんと22.0%を記録し、Twitterでも世界トレンド1位を獲得するなど、早くも話題沸騰だ。翌日から仕事なのにもかかわらず、「日曜の夜が楽しみ」という異常な状況を再現する可能性は十分。日曜劇場がお仕事ドラマに力を入れているのは、新たな一週間への活力的な意味もあるのだと気付かされる。

半沢、おっさん化する

東京中央銀行から子会社の東京セントラル証券へ出向を命じられた半沢直樹(堺雅人)。扱う商品企画は、銀行時代とは比べ物にならないほど小さなものになっていた。そんなある日、大手IT企業の電脳雑伎集団から、新進気鋭のIT社長・瀬名洋介(尾上松也)率いるスパイラルを買収したいという大型の案件が舞い込む。東京セントラル証券の面々は銀行を見返すチャンスだと盛り上がるが、どこかの企業に案件を横取りされてしまう。

前シリーズからそれほど時間は経過していないようだが、半沢の“おっさん化”は現実世界の7年に近い。相変わらずキレ物っぷりは発揮しているものの、ギラギラと復讐心に燃えていたダークヒーロー的な一面は影を潜めた。飲みに行く店も、前シリーズではガヤガヤとした活気あふれる居酒屋が多かったが、今作は落ち着いた雰囲気の小料理屋を行きつけにしている。これは経済面だけが理由ではなく、現在の半沢の心理状態やスタンスが描写されているように思う。大型案件を横取りされても、復讐ではなく、諦めを選択していた。

「お前の銀行員人生、それでいいのか?」

そんな半沢は、同期の渡真利(及川光博)の言葉で自分を見つめ直す。銀行からの出向組から虐げられているプロパー社員(生え抜き)の森山(賀来賢人)と共に、もう一度大型案件に挑む。森山と作戦会議のために向かったのは、あの頃のように活気あふれる焼肉屋だった。半沢は、ギラギラ感を少しずつ取り戻し始める。

南野陽子、金に欲情

大型案件を奪ったのは、半沢を目の敵にする東京中央銀行営業部部長の伊佐山(市川猿之助)だった。伊佐山は、半沢らに黙って電脳雑伎集団社長の平山(土田英生)に接触し、株式市場が閉まっている夜間に奇襲攻撃を仕掛けるプランを提案した。ちなみにこれは、2005年にライブドアがニッポン放送の株を買い占めたのが元ネタ。原作では平山のキャラ設定も、“スター的な実業家”となっている。

この企画書を見たとき、平山の妻で副社長の美幸(南野陽子)に異変が起きた。体をモゾモゾとさせ、契約を即決。顔は平静を保ちながらも、伊佐山が部屋を出るのを待ちきれずに靴を脱ぎ、扉が閉まった瞬間、テーブルのグラスをなぎ倒して平山に跨った。美幸は、金に、成り上がっていく電脳雑伎集団に欲情したのだ。男臭い硬派なお仕事ドラマ「半沢直樹」に突然ぶち込まれたお色気演出。この尖り方、異質感は目を引く。

賀来賢人の成長物語

前シリーズは、半沢らバブル最後の入行組と、バブルでおいしい思いをしてきた上の世代との戦いが描かれた。そこに半沢の私恨が絡み、復讐心を抱いたダークヒーロー的な魅力が半沢にはあった。しかし、大和田との決着がついてしまったため、今シリーズでは半沢のダークヒーロー的な部分は控えめに描かれるかもしれない。

その代わりに描かれるのは、半沢の仕事に対する誠実さだ。第1話から半沢は「顧客のため」という言葉を何度も使用しており、仕事に対する考え方が垣間見えた。そこで演出的に重要になってくるのが、就職氷河期に入社した森山らロスジェネ世代だ。

復讐から解き放たれ、半沢はおっさんになった。そして、下の世代を見る余裕が生まれ、わかり合うことが難しい世代の森山と手を組み、仕事のあり方を伝えていく。ある意味では、半沢という上司と巡り合った森山の成長物語でもあると言える。おそらく今作も1部・2部と呼ばれる構成になるとは思うが、1部の終了時点で「森山が本当の主人公」という視聴者の声が聞こえてくるのが、このドラマの理想の形なのかもしれない。

 

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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