「3年B組金八先生」女生徒が金八の自宅にお泊まり。まさかの淫行疑惑!第8シリーズ#2

学園ドラマの金字塔、「3年B組金八先生」。1979年から2011年まで、なんと32年間にわたり放送されました。全8シリーズに加えて12回のスペシャルを合わせて、全185話あり、現在、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で全話を順次配信しています。地味なシリーズとして知られる第8シリーズにも大事件が勃発。しかも容疑をかけられたのは金八先生自身!生徒を巻き込む大事件の結末は……?

動画配信サービス「Paravi」で順次配信されている「3年B組金八先生」。今月配信されたのは2007年放送の第8シリーズ。

本作では「生徒全員が主役」をコンセプトに、中学生の等身大な問題を丁寧に描いていく。

受験のため、大事な野球道具を父親に捨てられた生徒。アルコール依存症の父親と暮らす生徒。両親から彼氏との交際を反対された生徒。大衆演劇で女形を演じている父親を恥じる生徒……金八は3年B組の生徒25人に起こる様々な問題に取り組むことになるのだが、その原因の多くは「親と子」の関係性というところに行き着く。

考えてみれば、優等生の兄ばかり優遇する両親との確執から妊娠・出産することになった浅井雪乃(杉田かおる)や、引きこもりになった兄を隠そうと必死になる母親へのストレスから、学校で陰湿な行動を繰り返していた兼末健次郎(風間俊介)。さらに、覚醒剤を使用していた両親の影響で自らもドラッグに手を出してしまった丸山しゅう(八乙女光)などなど。

事件が派手すぎて目立ってはいないが、従来のシリーズでも根底に流れるテーマは「親と子」だったといえるだろう。
第8シリーズではこの基本テーマに分かりやすく立ち返った形だ。

自立していく金八の子どもたち

生徒たちの親子関係だけではなく、金八自身の親子関係も描かれている。

娘の乙女は養護学校の教師となっており、そこの先輩教師であるバツイチ子持ちの湯山朋弘との交際をスタート。

美しく成長した乙女に言い寄る生徒や教師たちを金八が必死で追い払うというのは、これまでのシリーズお馴染みのドタバタエピソードだが、結婚までもを視野に入れたはじめての真剣交際に、遂に金八も・娘の彼氏と真っ正面から向き合うことになるのだ。

それにしてもバツイチ子持ちか……。

乙女の誕生から見守ってきた視聴者としては、親戚の子どもを見るような気持ちで色々と心配になってしまう。

息子・幸作は埼玉大学教育学部に入学。なぜか金八と同じ国語教師ではなく英語教師を目指しているようだが、教育実習生として桜中学に赴任してきた際は、キング牧師の「I have a dream」の演説を題材に金八ばりの授業を行っていた。
これまた「あの幸作が……」と視聴者感無量なのだ。

子どもふたりも自立の時が近づいている。乙女はひとり暮らしをはじめ、幸作も交際中の女性に夢中で実家にはほとんど寄りつかない。
金八は、男手ひとつで子どもたちを育て上げた達成感とともに、ひとりきりの家で寂しさも感じているようだ。

そんな金八の“心のスキマ”が原因で、大きな事件が起こることになる。

最後の事件は金八の淫行疑惑!?

脱・過激路線となった第8シリーズでは、母親を刺したり覚醒剤を使ったりといった派手な事件は起こらないが、一応、クライマックスといえるエピソードは用意されている。

それが、金八の淫行疑惑だ。

これまで、中学生教師の手には余るヘビーな問題に体当たりで立ち向かってきた金八が、最終シリーズの最後に取り組む問題が自分自身の淫行疑惑って……なんだそれ!?

この事件の中心となる生徒は転校生の森月美香(草刈麻有)。

父親は国会議員、母親は海外を飛び回る編集長。「なんで足立区の下町に引っ越してきたん?」と聞きたくなるようなセレブ家庭で、美香は中学卒業後、海外の学校へ留学することになっており、財閥の御曹司との結婚まで決められているのだ。

そんな子が、学校帰りにもんじゃ焼きを食うの食わないので大騒ぎしている下町のガキと話があうわけもなく、転校してきてしばらくはクラスでも浮いた孤高の存在だった。
しかし、金八や3年B組の仲間たちと触れあううちに「はじめて友達ができた」ということで、みんなと一緒に都立高校を受験することを決心する。
とはいえ、娘のためにエリートコースを設定していた父親は当然反対。都立高校の願書を捨てられてしまう。

ショックを受けた美香は、夜中に金八の家を訪れて「私はみんなと一緒に卒業したい!」と思いを伝える。

ここまでは従来のシリーズでもありそうな展開だが、現在の坂本家は乙女も幸作もいない金八のひとり暮らし状態。なおかつ、美香は「あんな家、帰りたくない」なんて言っている。

そこで金八は……美香を家に泊めちゃうのだ。

一応、「父親に許可を取ろうとしたものの、多忙な父親とは連絡が取れず」というアリバイはあるものの、親に許可取ったとしても、ひとり暮らしの家に女子中学生を泊めちゃダメでしょ!
翌朝、美香に乙女が使っていた制服を着させて一緒に登校しようとする金八。いくらなんでも無邪気すぎるよ……。
生徒との距離感が異常に近い金八の教育スタイルと、子どもたちが独立してしまった寂しさが引き起こしてしまった事件といえるだろう。

「君たちの担任・坂本金八です」とは言うけど……

当然、金八が何かエロ~いことをするわけはないのだが、学校裏サイトを中心によからぬ噂が広がってしまう。

金八は「進路指導してたんだ」と弁明。ここまで『金八』シリーズを見てきた視聴者なら信じることができるけど、普通に考えて無理がある言い訳だ。もはや「進路指導」が変な意味にしか聞こえない。
さらに美香は、自分のせいで変な噂が広がってしまったことを謝罪するため、再び金八の家を訪れてしまう。

……それ、一番ダメなやつ!

たまたま裏サイトをチェックしていた記者が、たまたま金八の家を張り込んでいたせいで、その様子をバッチリ撮影されてしまうのだ。
おかげで金八は3年B組の担任からおろされ、卒業式にも出席できないことになってしまう。

そりゃ、そのくらいのペナルティは受けるだろ……とは思うものの、3年B組の生徒たちは反発。卒業式前日に全員で体育館に立てこもって、金八の担任復帰と卒業式への出席を要求する。

おそらくこれは、第2シリーズの「卒業式前の暴力」で加藤優(直江喜一)と松浦悟(沖田浩之)が放送室に立てこもったエピソードのオマージュだろう。
あの時、金八は放送室の外から呼びかけることしかできない傍観者だったが、今回は、

「今、ここにいるのは先生ひとりなんだ。ここを開けてくれないか。今、お願いしているのは、君たちの担任・坂本金八です」

と説得して、事態は解決へと向かって行く。
あれから30年近く経って金八も老練さを身につけたな……という感じではあるが、「そもそもの原因は金八自身にあんじゃん!?」と思うと、素直に感動はしにくい。

これもリアル・親と子のドラマ!?

ちなみに森月美香を演じた草刈麻有は草刈正雄の娘だ(紅蘭の妹)。

「親と子」というテーマを際立たせるため……というわけでもないのだろうが、この第8シリーズの生徒役には二世タレントが多数起用されている。

草刈麻有の他には、少年隊・植草克秀の息子・樋口裕太(当時は植草裕太名義でジャニーズJr.として活動していた)。元・シブがき隊の布川敏和とつちやかおりの息子・布川隼汰。
つちやは第1シリーズに阿部トシエ役で出演しており、親子2代での生徒役。父・フックンも『2年B組仙八先生』出身なので、親子3人が桜中学出身ということになる。
最終回の卒業シーンで金八は、布川隼汰演じる大西悠司に「お母さんに、3B卒業したって伝えておきなさい」と語っている。
ドラマ中、大西悠司の母親は登場していないため、これは明らかにリアル・母親であるつちやかおりに向けたメッセージだろう。

これもまた、30年越しの親と子のドラマなのだ。

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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