「3年B組金八先生」声変わり前の亀梨和也・風間俊介が生徒役!第5シリーズ

学園ドラマの金字塔、「3年B組金八先生」。1979年から2011年まで、なんと32年間にわたり放送されました。全8シリーズに加えて12回のスペシャルを合わせて、全185話あり、現在、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で全話を順次配信しています。今回は第5シリーズ。「半沢直樹」などの演出で知られる福澤克雄がメイン演出に。現代のドラマに進化し、生徒たちのルックスも高くなっています。声変わり前の亀梨和也・風間俊介にも注目!

動画配信サービス「Paravi」で順次配信されている「3年B組金八先生」。今月配信されたのは平成シリーズ最高傑作との呼び声も高い1999年放送の第5シリーズ。注目しておきたいのは、『半沢直樹』『下町ロケット』などの演出で知られる福澤克雄が本作からメイン演出となっていることだ。

中学生妊娠や校内暴力など衝撃的なエピソードを扱いつつも、全体的には「昭和の牧歌的な学園ドラマ」といった印象の強かった『金八』が、福澤の手で一気に現代のドラマへと進化。『金八』を見てドラマ演出家を目指した福澤の気合いが入りまくっているのを感じる。

具体的には、教室内を定点カメラで観察しているような画作りから、様々なアングルを駆使した構図が多くなり、音楽もアリスの「チャンピオン」とかじゃなく(初期はフォーク・ニューミュージックが多用されていた)、「AMAZING GRACE」などやたらとエモーショナルな曲が使用されるようになっていく。

『半沢直樹』では、顔面どアップでおっさんたちが罵り合う特濃演出が話題となっていた福澤克雄。あそこまでではないものの、『金八』でもなかなかコッテリとした演出を繰り広げているのだ。

福澤克雄と小山内美江子の確執が絶妙に釣り合ったシリーズ

これらの変化は時代に合わせた正統な進化とも考えられるが、第4シリーズから第5シリーズへかけて、あまりに劇的に変わっているため、昭和の『金八』ファンにとっては違和感のあるものだったかも知れない。
中でも一番違和感を持っていたのが、脚本家の小山内美江子だったようだ。

「とにかくドラマチックで面白ければいい」という福澤克雄のドラマ作りは、リアルな教育問題や社会問題を丁寧に扱いたい脚本家・小山内美江子の意向とは基本的に相容れないものなのだろう。この確執が後に、第7シリーズ途中での小山内の降板劇へとつながっていく。福澤は、自分の憧れた『金八』を自らの手でぶっ壊してしまうことになるのだ。

ただ、『金八』のターゲットは初期シリーズのファンではなく、あくまでその時々の中学生たち。第4シリーズまでの牧歌的な『金八』がミレニアム以降の中学生に通用したとも思えない。
福澤克雄によるドラマチックな要素を取り入れたことが結果的にシリーズの寿命を延ばし、金八が定年退職を迎える2011年の『ファイナル』まで続いた原動力となったことは間違いないだろう。

そんなリアル志向の小山内と、ドラマ志向の福澤。ふたりの関係性が絶妙なバランスで釣り合っていたのがこの第5シリーズだ。

風間俊介の家庭が悲惨過ぎる

小山内の意向が反映されていると思われる要素は「多様性」。少子化により空き教室が増えた桜中学に老人向けのデイサービスセンターが併設され、3年B組には発達障害の子が在籍している。老人と中学生たちの交流は第5シリーズの大きなテーマだ。
また、船橋学園女子高校から全国的に広がっていった「朝の読書運動」や、稚内南中学で考案された「南中ソーラン」など、教育界の新しい取り組みも取り入れられている。
福澤の意向と思われる要素としては、生徒たちのルックスがやたらと高くなっていることが挙げられる。

もちろん第1シリーズの頃から、たのきんトリオや三原順子など、「こんな生徒いないだろ」なイケメン・美人も含まれていたが、普通の中学生にしか見えない生徒も多く、全体としてリアルなクラスが形成されていた。
しかし第5シリーズ以降はイケメン・美人の比率がだいぶ高くなっており、いかにもドラマ然としたクラスに。放送当時、黎明期だったネット掲示板では「あの子がカワイイ!」といった話題が毎回盛り上がっていた。

もうひとつ、メイン生徒の関わるエピソード比重も大きくなっている。

これまでも「15歳の母」の杉田かおる、「腐ったミカンの方程式」の直江喜一&沖田浩之など、メイン生徒と呼べる存在はいたものの、彼らが中心となるエピソードは全24話中5話程度。シリーズ通して、すべての生徒にそれなりにスポットが当たるように作られていた。

一方、第5シリーズは完全に風間俊介演じる兼末健次郎の物語だ。

健次郎は、学校では勉強も運動もできる優等生だが、裏ではクラスメイトたちの弱味を握って命令に従わせている。第1話からいきなり、生徒たちから暴行を受けた中野先生(ラサール石井)が入院するという衝撃的な展開。その首謀者が健次郎なのだ。
その後も、3年B組で起こる問題の大半に健次郎が絡んできている。

健次郎は、優等生だが家庭環境に問題があり、学校でそのストレスをぶつけているという、第4シリーズの広島美香(小嶺麗奈)の流れを汲む新時代の陰湿な問題児。しかし広島美香の抱える問題が「両親が離婚しそう」程度のものだったのに対し、健次郎の家庭環境はメチャクチャだ。

兄・雄一郎は開栄高校(開成高校みたいなもん)から東大へ一発合格したものの、人付き合いが苦手なことから引きこもりに。見栄を張った母親が「ハーバード大学に留学している」と言ってしまったことから、家族ぐるみで雄一郎の存在を隠蔽することになる。

部屋に閉じ込められ続けたことでますます心を病んだ雄一郎は、父親をバットで半殺しにするというヤバ過ぎる家庭内暴力事件を起こす。そんな雄一郎から健次郎を守ってくれていたのが姉の裕美だったが、気晴らしのためにと健次郎を連れていったスキー旅行で木に激突して死亡。

母親はノイローゼになるし、父親は問題から逃げまくってるし、雄一郎はゴキブリまみれの部屋に引きこもって奇声を上げながらメシ食ってるし。そりゃあ健次郎の性格もゆがむよ……。
教室内での健次郎は邪悪&陰湿の極みなのだが、この家庭環境が紹介されることで、邪悪な行動すら愛おしくなってくるのだ。
その辺のさじ加減は、さすが福澤克雄といったところか。

亀梨和也と風間俊介の第二次性徴期を堪能!

第5シリーズでジャニーズ枠として出演しているのが、健次郎役の風間俊介、KAT-TUN結成前の亀梨和也、現在ではジャニーズJr.やSixTONESのマネージャーをしている森雄介。
風間俊介は「裏でメチャクチャ陰湿なことをやっている優等生」という難役を演じきり、役者として大いに評価される。……そのせいで、歌&踊りをやる機会が失われ、役者専業となってしまったようだ。

一方、亀梨はものすごく素朴なルックス&演技力で、まだまだ磨かれていない原石感が強い。後に『ごくせん』や『金田一少年の事件簿』などで見かけた時には『金八』の生徒とは気が付かなかったくらい、一気に垢抜けていた。
特に声が……! 亀梨は、兼末健次郎とつるんで悪いことをやっている深川明彦を演じているが、まだ声変わりしていないハイトーンボイスで、

「金貸してくんねえか? 2万でいい。家に帰ればお年玉あんだろ!?」

なんて邪悪なことを言ってるのがメチャクチャかわいらしいのだ。風間俊介も変声期まっただ中だったようで、セリフ途中でたびたび声が裏返っており、不安定な健次郎の心情とリンクして、ますます愛おしく感じてしまう。
亀梨和也メイン回は第18話「自分を探す旅」。風間俊介はシリーズ通してガッツリとストーリーに絡んできている。

第二次性徴期のふたりを堪能できるのは『金八先生』だけ!?

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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