「3年B組金八先生ファイナル」歴代生徒152人集結。二度と作れない圧倒的な完結編

文とイラスト：北村ヂン

2021/02/19

学園ドラマの金字塔、「3年B組金八先生」。1979年から2011年まで、なんと32年間にわたり放送されました。全8シリーズに加えて12回のスペシャルを合わせて、全185話あり、現在、動画配信サービス「Paravi（パラビ）」で全話を順次配信しています。今回は最終回の「3年B組金八先生ファイナル～最後の贈る言葉」。本当にもう続編はないのか……。金八先生リメイクをするならあの人しかいない!?

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前回はこちら：「3年B組金八先生ファイナル」金八のピンチに謎の組織「3B」が立ち上がる

動画配信サービス「Paravi」で順次配信されてきた「3年B組金八先生」。今月配信されたのは、完結編となった2011年放送の「3年B組金八先生ファイナル～最後の贈る言葉」。

Hey! Say! JUMP岡本圭人演じる不良・景浦裕也を更正させ、高校受験も合格、無事に卒業式を迎えた。

通常のシリーズだったらここで感動のエンディングとなるわけだが、残念ながら「ファイナル」は単発スペシャルであるため、メイン生徒である景浦への思い入れは希薄。ましてモブ状態の3年B組の面々なんて名前すら把握できていない。そんな生徒たちの卒業式を見せられても感動しようがないだろう。

しかし「ファイナル」の本番は景浦の更生でも、こいつらの卒業式でもない。定年退職を迎える金八自身の卒業式なのだ。

1時間続く「出欠確認」だがまったく飽きさせない！

金八が謝恩会のために3Bの教室に入ると、生徒たちはおらず「金八先生！　体育館に来て下さい」という手紙が。体育館にはこれまでの教え子たちが大集合していた。

誰が呼びかけたのかとか、どうやって集まったのかとか、そういう説明は一切ナシ。金八が突然「今から出欠を取りたいと思います」とか言い出しても、すぐに名簿が出てくるし。ここから先は、もはやドラマではなく『3年B組金八先生』打ち上げパーティーなのだ。

「兼末健次郎」
「はい！」

金八が名前を読み上げ、生徒が返事をする。……といっても出席者は152人。名前呼んで返事するだけの儀式が延々と1時間繰り広げられる（合間にその生徒出演時のダイジェスト映像が挟み込まれているとはいえ
！）。

「金八」初見だったらポカーンとするしかない謎過ぎる時間だが、全シリーズちゃんと見続けてきた忠実なファンにとっては至福の時。生徒たちの思い出が次々とよみがえってきて、涙腺がぶっ壊れてしまうこと請け合い。
出演当時は生徒役全員が役者として芸能界を目指していたのだろうが、第1シリーズの放送からは32年が経っている。生徒たちの人生も色々だ。

芸能界の第一線で活躍している生徒。芸能活動はしているものの、いまいちパッとしないままの生徒。完全引退して一般人となっている生徒。国会議員になってネトウヨ的な事を言ってる生徒。
ただ返事をするだけでも、その生徒たちの人生がにじみ出てくる。

ジャニーズ勢をはじめとした現役バリバリの芸能人たちは、ほぼ打ち上げ会場と化した金八卒業式でも「あの生徒が大人になったら」という役をキッチリと演じきっている。
一方、一般人となっている生徒たちは同窓会気分でワイワイキャッキャとはしゃぎ合ったり、「お母さんになったよー！」と普通に近況報告をしたり。

一番気合いを感じるのは、「芸能活動は続けてるけど……」枠の生徒たち。久々となるゴールデンタイムのドラマ出演ということで何とか爪痕を残そうと、「先生……本当にありがとうございました！」などとエモーショナルな返事で存在感をアピール。

各生徒、様々な思いを込めた渾身の一言を繰り出してくるので、ただの出欠確認が1時間続いてもまったく飽きさせない！

ジャニーズのトップアイドルから売れていない役者、そして芸能界からはだいぶ縁遠くなった普通のおじさん、おばさん。中学3年生という青春ド真ん中の時期を1年近く一緒に過ごしてきた仲間たちが再会し、金八の言葉で同じように涙している。すごい空間だ。

何で来なかった!?　生徒ベスト5

出欠確認だけでも圧巻な「歴代の生徒152名が集合！」とはいっても、32年間の生徒役は240人以上はいるはず。金八卒業式に出席していない生徒たちも多い。
完全に引退してテレビ出演を望んでいない人もいるだろうし、仕事の都合でどうにもならなかったというケースもあるだろう。

ただ、様々な事情があるにしても「お前は絶対に来るべきだろ！」というメイン級の生徒が出演していないのは気になるところ。

……ということで、個人的に「なんで金八卒業式に来なかった！」と憤っている生徒役ベスト5を紹介しよう。

第5位・鶴本直（上戸彩）

第6シリーズの性同一性障害を持つ生徒役で注目された上戸彩。平成「金八」の中でも特に印象の強い生徒だけに「ファイナル」への出演がないのはさみしい。
しかし鶴本直はドラマの設定上、18歳になった段階で性別適合手術にむけたホルモン投与がはじまっており、「ファイナル」の頃には心も身体も男性になっているはず。
女性のままの姿で上戸彩が登場したら、色々と台無しになってしまうため仕方がないか。

第4位・狩野伸太郎（濱田岳）

第7シリーズの出世頭・濱田岳。「マルちゃん赤いきつねと緑のたぬき」のCMでも武田鉄矢と共演しており、後継者的な扱いをされているのに「ファイナル」に来ていないってどういうことだ!?
ドラマの設定的に出席できない理由はないはず。単にスケジュールの都合とかだったら許しがたい！

第3位・沢村正治（田原俊彦）＆梶浦裕二（野村義男）

昭和「金八」の出世頭といえば当然たのきんトリオだが、トシちゃん＆よっちゃんの出演はなし。
銭湯の番台で股間を押さえていたよっちゃんはともかく、トシちゃんは第1シリーズを象徴する中心的な生徒のひとり。なんとしても出演して欲しかったが、やはりジャニーズとの関係で問題が……!?
ちなみにマッチ演じる星野清は、景浦を更正させるドラマパートには出演していたが、金八卒業式には来ていない。現・ジャニーズ事務所社長の藤島ジュリー景子の出演もないので、そこでバランスを取ったということだろうか？

第2位・宮沢歩（橋本光成）

役者としての知名度は低いものの、宮沢歩はある意味「金八」シリーズの最重要生徒だ。
第1シリーズ「15歳の母」で、浅井雪乃（杉田かおる）と宮沢保（鶴見辰吾）との間に生まれた子ども。金八が名付け親となり、第4シリーズでは中3になった歩が3年B組生徒として登場。
杉田かおると鶴見辰吾は当然のごとく「ファイナル」にも出演しており、歩はアメリカの大学に留学して現地の女性と学生結婚＆出産。来年には日本に帰国し、その子どもが桜中学に入学する予定だと明かされている。
おそらく、歩が出演できない理由付けとして「アメリカにいる」という設定をひねり出したのだろうが、第4シリーズではクラスメイトの蓑田紀美（藤田瞳子）と結婚の約束までしていたのに……「あの約束はどうなったんだ歩ッ！」と、かえってモヤモヤしてしまった。
「中3の時に言った結婚するのしないのなんて約束、実現するわけない」というメッセージだとしたらリアルではあるが。

第1位・第3シリーズの生徒全員

来ていないというよりは、呼ばれていないのだろう。第3シリーズの生徒はひとりも出演なし。
第3シリーズだけは金八が松ヶ崎中学に転任していた時期であり、舞台が桜中学ではない。桜中学で行う金八卒業式だから、松ヶ崎中学OBは呼ばれないという理屈は分からなくもないけど……その中途半端なリアルさ、必要？
エンドロールでは「贈る言葉」に乗せて各シリーズの名場面が映し出され、生徒役の名前も流れるのだが、そこでも第3シリーズはなかったことにされている。
つくづく不遇なシリーズだ。

武田鉄矢、金八の後継者を（勝手に）指名

細かい不満はあったものの、金八がただ名前を呼び、生徒たちが返事をするだけで感動させてくれる「ファイナル」の出欠確認パートは、改めて見返してみても圧倒的だ。
たとえば「相棒」の歴代相棒＆犯人たちが大集合したり、「渡る世間は鬼ばかり」の岡倉家親族が集結しても、こうはならないだろう。

シリーズごとに約30名の生徒役がゴッソリと入れ替わり、ひとりひとりにドラマがある。学園ドラマの金字塔「3年B組金八先生」ならではだろう。152名の歴代出演者たちが一堂に会するこんな完結編を作れるドラマはもう現れないはずだ。
ただ、エンドロールの最後の最後に現れる「そして…」の文字。アレがいまだにずーっと気になっている。

続編……ホントにないの!?

武田鉄矢はネプチューン関係の番組に出演するたびに「原田泰造になら金八役を譲ってもいい」と語っている。

「お前にキャスティング権あんのかよ！」「お前と原田泰造、タイプが全然違うだろ！」とか色々思うものの、「はぐれ刑事純情派」が原田泰造主演でまさかのリメイクされる時代。このさい原田泰造版でもいいから「3年B組金八先生」リメイク or 続編を期待したい。