「愛の不時着」13話。セリ「自分は自分で守る。私を信じて」いよいよラストスパート

日本で「第4次韓ドラブーム」が巻き起こした、Netflixで配信中の韓国ドラマ「愛の不時着」を全話レビュー。軍事境界線を守る朝鮮人民軍のエリート大尉と韓国の財閥令嬢の極秘の恋を軸に物語が進みます。もうすぐでNetflix日本放送から1年を迎える「愛の不時着」。今回はソウルで平和で幸せな時間を過ごす様子が描かれた13話。しかし幸せな時は長くは続かず……。

もうすぐ日本放送1周年

2月23日でNetflixによる日本での配信開始からちょうど1年となる「愛の不時着」。

「もう1年」というより「まだ1年」という感じがする。それだけ猛スピードで人気を博したということだろう。ちなみにNetflixの「2020年 日本で最も話題になった作品 TOP10」の第1位は当然のように「愛の不時着」である。昨年の12月14日は韓国での放送開始から1周年で日本のファンも盛り上がったが、2月23日も盛り上がるのかもしれない。

そんな「愛の不時着」を1話ずつ振り返っていく本連載もいよいよラストスパートにさしかかってきた。今回は第13話。第5中隊の楽しさ、愛らしさ、カッコ良さが存分に描かれたエピソードだった。そして、衝撃のラスト……。あらためて振り返っていこう。

前半はソウルでのユン・セリ(ソン・イェジン)とリ・ジョンヒョク(ヒョンビン)、第5中隊のピョ・チス(ヤン・ギョンウォン)、パク・グァンボム(イ・シニョン)、キム・ジュモク(ユ・スビン)、クム・ウンドン(タン・ジュンサン)、“耳野郎”ことチョン・マンボク(キム・ヨンミン)が穏やかで幸せな時間を過ごす様子が描かれる。

セリはジョンヒョクに「自分は自分で守る。私を信じて」と言うが、これはジョンヒョクの立場を思いやった言葉だろう。思わずピョ・チスが「2人で誰も知らない所に逃げればいい」と言ってマンボクにたしなめられるが、視聴者の気持ちを代弁するような言葉をピョ・チスが言うとは思わなかった。彼のこの態度は、後半への伏線になる。

部屋に帰ってきたセリを囲んで、あらためて誕生日が祝われる。北朝鮮のバースデーソングが前回のジョンヒョクの言葉「生まれてきてくれて、ありがとう」を聞いた後のセリの胸には特に染み入ったことだろう。何歳になっても生まれてきたことを祝福されるのは嬉しいものだとあらためて感じる。

ジョンヒョクからのプレゼントはペアの指輪だった。セリは「何があっても、あなたを忘れない」と感激する。このシーンの撮影中、ヒョンビンは何度もNGを出してソン・イェジンに突っ込まれていたのだという。一発でOKを出すのが惜しかったのかな? と思わず勘ぐりたくなるエピソード。

物語はいよいよ大詰めに/Netflixオリジナルシリーズ「愛の不時着」独占配信中

ジュモク憧れの人、チェ・ジウ登場!

セリのカードで第5中隊が買い物をする場面はファンにも人気のシーンだ。洋服にあまり興味がなさそうだったウンドンが唯一欲しがったのは学生服だった。彼の年齢は17歳。楽しい高校生活を送っていてもおかしくない年頃なのに、実際には軍隊で厳しい仕事に従事している。学生服を着てはしゃぐウンドンの姿を見ると、ちょっとせつない気持ちになる。

ジュモクにご褒美の時間がやってくる。お使いに出かけた先のレストランにいたのは、大ファンのチェ・ジウ本人! 

感激で胸がいっぱいのジュモクはチェ・ジウに何か言いたいことはないかと促されると、「愛する人たちは再会できると言いましたね」と言う。

「どんなに遠くにいても、“最後には戻ってくる”」
「はい、その通りです。“愛は戻ってくる”」

これはジュモクが第1話でジュモクが熱心に観ていて逃げるセリを見逃す原因になったチェ・ジウ主演の大ヒットドラマ『天国の階段』のセリフ。まさに画面からこのセリフが流れていた。こんなときにでもジョンヒョクとセリのことを想うジュモクの優しさが伝わってくる。赤いニットキャップに白いマフラーも『天国の階段』へのオマージュ。

ドッキリを仕掛けたセリはジュモクに服を着せるとき、こっそり指をクロスさせていた。こうすると嘘をついても許されるのだという。これは韓国ではなく、英語圏のジェスチャー。クロスさせた人差し指と中指を十字架に見立てて、「嘘をつきましたが神様お許しください」という意味で使うらしい。これも伏線になっていた。

激闘! 第5中隊

しかし、平和な時間は長く続かない。セリたちに危険が迫っていた。突然、現れたチョ・チョルガン(オ・マンソク)! 彼は息子を人質にとってマンボクを脅す。さらに次兄のセヒョン(パク・ヒョンス)がセリを亡きものにしようとチョ・チョルガンを手引きしてしまう。私利私欲と保身のため、妹の命を犠牲にしようというのだから呆れるほかない。

車で走るセリに襲いかかる暴漢たち。一方、ジョンヒョクはオ課長の手引きでチョ・チョルガンのもとへ単身やってくる。素手で武器を持った男たちを蹴散らしていくが、ジョンヒョとはいえは無敵のヒーローではない。徐々にダメージが蓄積されていく……。

もはやこれまでか。そこへやってきたのがセリの赤い車。車から下りてきたのは、スーツ姿の第5中隊! 何これカッコいい。

マンボクはすべてをジョンヒョクに打ち明けていたのだ。「正直、怖いですが、今回はひるみません!」と言う姿に感動する。少し疑って悪かったよ、マンボク。暴漢たちを撃退する第5中隊の面々。「こう見えても、特殊部隊員です」と言いながら相手を殴るジュモクが頼もしい。

そしてついにチョ・チョルガン一味と、ジョンヒョクと第5中隊が対峙する。最初にマンボクを狙うチョ・チョルガンだが、身を挺してかばうのがピョ・チスなのがいい。

乱戦の隙に外に逃げ出し、追ってきたジョンヒョクを銃で狙うチョ・チョルガン。それを車に乗ったままかばうセリ。銃弾で車のガラスが砕け散る。ためらわずチョ・チョルガンを撃つジョンヒョク。最後に決着をつけたのは、これまで辛酸を味わい続けてきたマンボクだった。

「今、私たちの祖国は中隊長です」

舞い散る雪の中、ジョンヒョクに抱きかかえられるように、スローモーションでゆっくりと崩れ落ちるセリ。真っ赤な車のドアが鮮血のよう。悲しいのに、とても美しいシーンだ。セリのモノローグが流れる。

「人は死の間際に、一瞬だけど走馬灯のように、人生で一番よかった瞬間が頭をよぎると言うでしょ。たぶん、その瞬間の中に、今があると思う」

本当に走馬灯のようにこれまでの数々のシーンが浮かび上がる。ジョンヒョクが髪を結ってくれたこと、自転車に二人乗りしたこと、キャンドルを持って迎えに来てくれたこと、焚き火の前で一夜を過ごしたこと、初めてのキス、ソウルでの再会、セリの笑顔、ジョンヒョクの笑顔。今度はジョンヒョクのモノローグが流れる。

「僕が思ってるから。“生まれてきてくれて、ありがとう。愛する人が、この世にいてくれてうれしい”と」

そう、愛する人は「この世」にいなければいけない。簡単に死なせるわけにはいかないのだ。銃弾に倒れたセリをジョンヒョクが泣きながら抱きかかえるのは、逆だった第6話のデカルコマニー(写し絵)。ジョンヒョクにはまだセリに伝えていない言葉があった。

「愛してる。愛してる、ユン・セリ」

エンディングは、ジョンヒョクと第5中隊の会話。彼らは北朝鮮に帰るバスに向かわず、ジョンヒョクのために身を捧げようとする。覚悟を決めた者には、どこか透明感が漂う。今の彼らがそうだ。ピョ・チスが言う。

「今、私たちの祖国は中隊長です。何なりと命令を」

こんなカッコいいセリフもない。人は国や組織のために我が身を捧げるのではなく、人は愛する人のため、信じる人のため、信じてくれる人のために我が身を捧げる。それ以上でもそれ以下でもない。一度は断ったジョンヒョクだが、あらためて一人ずつ名前を呼んで、こう告げる。

「手段を選ばずユン・セリを守れ。以上」。そして、「信じてる」と付け加える。彼らは人と人として信じ合う関係なのだ。ラストシーンでは、倒れたセリを囲んで悲嘆に暮れる第5中隊の面々が写し出されていた。「愛の不時着」はセリとジョンヒョクだけがすべてではない。第5中隊の存在がとても大きなものだということがよくわかる演出だった。

それにしてもセリの命はどうなるのか? ジョンヒョクたちは北朝鮮に帰るのか? チョ・チョルガンは生きているのか? 第14話も目が離せない。デデン!

■「愛の不時着」全話レビュー

1:「愛の不時着」一度ハマったら抜け出せない底なしの沼。全話徹底レビュースタート
2:「愛の不時着」2話。ユン・セリの胆力「あんたなんか怖くないわ。掘った穴に自分で入れば?」
3:「愛の不時着」3話。「月の光」はリ・ジョンヒョクによく似合う
4:「愛の不時着」4話。セリのために掲げたアロマキャンドル、ジョンヒョクは2020年型の王子様
5:「愛の不時着」5話。セリ「あなたには幸せでいてほしい。どんな電車に乗っても、必ず目的地に着いてほしい」
6:「愛の不時着」6話。セリ「私を運命の人だと思いたいの?」ジョンヒョク「僕の見える所にいてくれ」
7:「愛の不時着」7話。ジョンヒョクとセリ“守る者”と“守られる者”が鮮やかに反転
8:「愛の不時着」8話。ジョンヒョク「ケガはない?」自分がケガしてるのに!いつも愛する人ファースト
9:「愛の不時着」9話。ジョンヒョクがギュッと凝縮された数分間に陶然
10:「愛の不時着」10話「あの出来事を最初からもう一度繰り返してもかまわないと思えたら、それが愛だろうか」
11:「愛の不時着」11話。もっと深く「不時着沼」にひたるためのキーワード「デカルコマニー」と「ラーメン駆け引き」
12:「愛の不時着」12話。ジョンヒョク「生まれてきてくれてありがとう。愛する人がこの世にいてくれてうれしい」

 

『愛の不時着』
出演:ヒョンビン、ソン・イェジン、ソ・ジヘ
原作・制作:イ・ジョンヒョ、パク・ジウン

ライター。「エキレビ!」などでドラマ評を執筆。名古屋出身の中日ドラゴンズファン。「文春野球ペナントレース」の中日ドラゴンズ監督を務める。
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