長瀬智也「俺の家の話」4話。クソジジイって言えるかどうかが親子の分かれ目?

長瀬智也×宮藤官九郎「俺の家の話」4話。スーパー世阿弥マシンであることを隠しながら能にもいそしむ寿一(長瀬智也)。そんな中、父の芸養子でもあり親友でもある寿限無(桐谷健太)の出生の秘密が明かされます。

「好きじゃない」やつの意見が大事

「俺の家の話」では、「好きなこととやらなければならないこと、どちらをとるべきか」が繰り返し問われている。寿一(長瀬智也)は家業である能と、憧れて飛び込んだプロレス、どちらも選びきれず、今はなんとかすれすれのところでこっそり両立させている。4話では寿一の甥、大洲(道枝駿佑)が、母である舞(江口のりこ)にやらされている能と没頭しているダンスとの間で揺れ動く。

大洲の父、O.S.D(秋山竜二)は都内でラーメン店を4店舗経営するやり手だが、「ラーメン好きじゃない」という。

「ラーメン好きなやつってさ、ラーメン好きなやつの気持ちしかわかんねえんだよな。だから俺の意見、けっこう大事なんじゃないかなメーン?」

結果、大洲は能の公演から「逃げて」、同日に開催されるダンスイベントに参加する。その手助けとして、寿一は大洲の代わりに息子の秀生(羽村仁成)とともに舞を披露する。

大洲がダンスの練習をしているのが、「池袋ウエストゲートパーク」でおなじみの池袋西口公園だ。21年ぶりに長瀬がIWGPに立った瞬間、音楽もちゃんと「池袋ウエストゲートパーク」のものが流れた遊び心! IWGPのスペシャル「スープの回」でラーメン戦争が題材になってから20年余、寿一と大洲がラーメンを食べに行くのは王様ラーメンでもバレエラーメンでもなくO.S.Dの店だ。黄色のチームカラーもG-Boysのものじゃなくて、いまは大洲のダンスチームYellow Angelsのもの。「万が一カラーギャングに絡まれたら」と言いながら寿一が振り回したチェーンは真壁刀義のイメージだろうか。ちなみに、今回寿三郎とさくらがロケ地巡りをした「ビューティフルライフ」は、「池袋ウエストゲートパーク」の3か月前、同じ2000年の1月放送。今話には21年前のドラマが2つも詰まっていたことになる。

寿限無と「父」とのつながり

思えば、寿限無(桐谷健太)は抑制の効いた人だった。寿一を迎えた「おかえり!」の明るい声こそ「タイガー&ドラゴン」で演じたチビTを彷彿とさせる屈託のなさを醸し出していたけれど、基本は控えめで、寿一がプロレスに「逃げて」いた25年間稽古を重ね、寿三郎の芸養子としてバイトまでして観山流を支え続けている。ふと帰ってきた寿一を快く迎え入れ、「寿一ちゃんが継ぐべき」とどこまでも立てる。

そんな寿限無だから、実は自分が寿三郎と女中、栄枝(美保純)との間に生まれた子どもだと知っても、舞(江口のりこ)も踊介(永山絢斗)も、そして寿一も叫んだ「クソジジイ」の言葉を発さない。一言、「承知しました」とだけ言う。伝統芸能において、血はどうしたって強い。どこまでも「血がつながっていない」ことを理由に控えめに生きてきたのだから、すぐには「実の息子」として反抗することなどできないのかもしれない。この「承知しました」は、番頭の小池谷(尾美としのり)が寿三郎に栄枝と結婚するよう頼まれたときと同じ返答で、こんなところで血のつながっていない父とのつながりが見えるのがすごい。

それにしても、寿三郎の妻は飛騨高山のガールズバーの子に送った「御息所の謡」のように嫉妬に狂ったりはしなかったらしい。寿三郎の妻、寿一の母の存在感は、いまのところどこまでも希薄だ。

能の演目と物語との重なり

能公演の本番の日。大洲の代わりに秀生と「小袖曾我」を踊る寿一。曾我十郎祐成、五郎時致の兄弟が父の仇を討つという「曾我もの」のひとつだ。寿一は踊りながら、若い頃寿限無といっしょに踊っていたことを思い出し、「あの時、兄弟で踊ってたんだな」と心の中でつぶやく。このあたりの、能の演目との重ね方の絶妙さ。宮藤作品は面白い部分やセリフのもつ力につい注目してしまうが、題材を丹念に調べ、理解したうえで物語に活用する能力もずば抜けている。曾我ものにせよ道成寺にせよ、能の演目は歌舞伎として上演されることも多いが、そういえば宮藤は歌舞伎を書いた経験があるのも大きいのかもしれない。

実はダンスコンテストに行っていた大洲だが、秀生は「道成寺」に使う釣り鐘から袴がはみ出ているのを見て、大洲が隠れていると思い込んでいる。この、釣り鐘から着物の裾がはみ出ているのは市川崑の「獄門島」を思い出させる。
実際にそこにいたのは寿限無。鐘の中にこそいなかったが、鐘をどかすと道成寺よろしく寿限無は「怒りのあまり変身」している。寿限無の変身は「本当の息子」への変身ということになるだろうか、ここでようやく彼は「うるせえクソジジイ」と吐き捨てることができるのだ。

とうとう「反抗期」を迎えることができた寿限無。寿一との関係はどうなるのか、5話は今夜。

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
漫画家・イラストレーター。著書に『ものするひと』『いのまま 』など。趣味は自炊。
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