「俺の家の話」6話。ドラマからはみ出た長瀬智也&阿部サダヲ&西田敏行のステージ!

親の介護と伝統芸能を継ぐことと、家族の問題が大小入り混じる「俺の家の話」。寿一(長瀬智也)肝煎りの家族旅行は、寿三郎(西田敏行)の、かつて愛した女たちへの謝罪行脚の旅でもありました。目的地になかなかたどり着かない家族旅行、行ったら行ったでまさかの特別ステージが……。

宮藤脚本ならでは、伝説の“ライブ回”

宮藤官九郎脚本の連続ドラマには、時折ライブシーンが放り込まれることがある。たとえば「木更津キャッツアイ」の7話には実在のバンド・氣志團が登場し、キャッツの面々までバンドを組んだ。「マンハッタンラブストーリー」にはビジュアル系バンド「少年レントゲン」が出てきた(メンバーには星野源も!)。宮藤はこんなとき、毎回わざわざオリジナルソングを用意し、ライブシーンを丁寧に描く。ストーリーから大きくはみ出したような、虚構と現実が入り混じるようなこんな回こそ、他には決してない宮藤ドラマの極上の楽しみのひとつだ。そんな伝説の回が、先週またひとつ増えた。

寿一(長瀬智也)念願の家族旅行。しかし寿三郎(西田敏行)はその途上で関係をもった女性たちの元を訪ねては「幸せにできなかった」と謝る。たくさんの女性たちに別れを告げてまわるという点だけ見れば太宰治の「グッド・バイ」のようだが、女たちとの関係はすでい過去のものだし、隣にいるのは偽の妻ではなくプロレスラーの息子だ。

旅先だから生まれる気持ちの揺れの描写

「これが、俺の家の話 旅情編だ」という寿一のナレーションのとおり、この回では旅行ならではのさまざまな気持ちの揺れがあった。

旅先での父のわがままに耐えかねてぶつかってしまい、「わりきれない」という寿一。よくしてもらっているとわかっているのに感謝の言葉が言えない寿三郎。初めて風呂の介助をしてみて、毎日それをやっている寿一の大変さに気づく踊介(永山絢斗)たち。能に対する大洲(道枝駿佑)の気持ちの吐露と、それを受け入れる舞(江口のりこ)。

なかでも、秀生(羽村仁成)の描写が細やかだった。父に何度も楽しいか確認されるからこそ、不安になってどうしようもなくなってしまい、駆け出す姿。祖父のために言った「おじいちゃん死んじゃうんだ」の言葉が祖父を傷つけたのではないかと慣れない布団で涙を流す様子。そして祖父がいなくなってしまうかもしれないという恐れと悲しみをそっと吐き出すシーン。環境が変わることで揺れ動く子どもの心が丁寧に折り込まれていた。

そして留守番のさくら(戸田恵梨香)の方も、離れているからこそ、寿一への思いが極まっていわきまで追いかけてきてしまう。山賊だっこのとき、寿一の背中に向かって上体をぐっとおろすさくらの描写に、映画「フラガール」で蒼井優演じるフラダンサーがステージ上で仰向けの上体をぐっと持ち上げる瞬間が重なるようだった。スパリゾートハワイアンズに「蒼井優ちゃん」はいなかったが、代わりにさくらがいた。

阿部サダヲが、「俺の家の話」に、いる〜〜〜!

そんな家族一人ひとりの繊細な描写を全部忘れてしまいそうになるのが阿部サダヲの登場! 阿部が演じるのは「純烈が行っていないスーパー銭湯を選んでまわっている」ムード歌謡グループ「潤 沢」のリーダー・たかっし。こんなのをやらせたら右に出るものはいない、というアクの強いキャラを描くほうも描くほうだし、100%で演じるほうも演じるほうだ。キャリアのいちばん最初からタッグを組んできた宮藤と阿部でなければ、やはりここまでのものはできないだろう。ちなみに「潤 沢」の文字の間が半角空いているのは、氣志團の綾小路 翔の表記からとられたものだという。

スパリゾートハワイアンズのステージで、寿三郎言うところの「三流芸人のドサ回り」の強さに圧倒される観山家。

「なにこのどうでもよさ、なにこの多幸感」
寿一「ここまでサービスされると、大人しく見てるのが逆に恥ずかしくなるな」

スケジュールのタイトな連続ドラマで、このセリフに納得できるだけのステージが作られていることがすごい。宮藤と阿部はもちろんのこと、これまで数々の宮藤ドラマを手掛けてきたスタッフの力の大きさを感じる。

寿一「何だろうこの敗北感」
「うちら伝統にあぐらかいて、芸能の本質を忘れちゃってたかもしんない。あんなふうに人を笑顔にできるってすごいじゃん」

ただただ楽しいだけの展開かと思いきや、ここに伝統芸能と大衆芸能の比較が入ってくるのもしびれる。寿一はここでは伝統芸能側として敗北感を味わっているが、大衆向けの興行であるプロレスに長く携わっているのだから、両方の要素を兼ね備えているし、両方の良さも知っているはずだ。

長瀬智也がマイクを持って歌う姿

さてここから、ドサ回りの三流芸人vsヨボヨボでもふんぞりかえっていられる伝統芸能の戦いの火蓋が切って落とされるかと思いきや、荒天で立ち往生し、たどり着けないメンバー3人の代わりに寿一、踊介、寿限無(桐谷健太)が「潤 沢」としてステージに出演することになってしまう。

「潤 沢」の新曲「秘すれば花」の作詞はなかにし札、作曲は筒美洋平だが、は作詞なかにし礼、作曲筒美京平のコンビが生み出した曲の中には、TOKIOの「AMBITIOUS JAPAN」もある。おそらくTOKIOとして歌っている姿をこの先新たに見ることができないかもしれない中で、こんな形で長瀬に歌わせる力技! けれど曲も振り付けもあまりにもバカバカしいから、楽しんでいいのか、感傷に浸っていいのかなんだかよくわからない感情になる。

さらに寿一の「もう一曲いいですか」から始まる寿三郎の「マイ・ウェイ」はもう完全にドラマからはみ出ている。自らの出身地である福島で歌う「西田敏行リサイタル」だ。そんなふうに大きくはみ出したように見えた展開が、結局は寿三郎の家族への感謝が歌を通じて息子たちに伝わるーーという形に帰結するんだから、本当にすごい。実はこっそり旅行についてきていた末広(荒川良々)が撮った写真では、その場で適当にあてがわれたように見えた衣装が、ちゃんと子どもの頃のハワイの写真の服装とそっくりになっている。そして全員がとびっきりの笑顔で写っている。寿一はとうとう、「過去を超える」という目的を達成したのだ。

それにしても「俺の家の話」は1話ごとに長瀬智也という俳優の、アイドルのすごさを思い知らされる。スペシャルな展開すべてが引退への花道のように見えて、楽しい分だけつらさも募る。この特別なドラマも、もう折り返してしまった。

次回はこちら:「俺の家の話」7話。山賊だっこ・寿一の“大きさ”は、俳優・長瀬智也の大きさ

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
漫画家・イラストレーター。著書に『ものするひと』『いのまま 』など。趣味は自炊。
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