長瀬智也×西田敏行「俺の家の話」9話。父を死の淵から蘇らせるのは?今夜最終回

長瀬智也「俺の家の話」9話。家族が次々と家を去り、寿三郎(西田敏行)もホームに入り、さくら(戸田恵梨香)と二人きりになった寿一(長瀬智也)。兄弟が戻ってきたかと思いきや、父が倒れてしまいます。「俺の家」はいったいどうなってしまうのでしょうか。

「時代には合って」ても無理なこともある

宮藤官九郎の書く連続ドラマはもともと、ちょっと他にはないくらい要素がぎっしりと詰め込まれている傾向がある。「俺の家の話」9話は最終回前ということもあるのか、それに拍車がかかっていた。たくさんのことが一度に起こって、とても1時間とは思えないほどだ。

父・寿三郎(西田敏行)をグループホームに入居させて半年、家族が一人もいなくなった家で寿一(長瀬智也)は能の稽古に勤しんでいる。プロポーズをした相手であるさくら(戸田恵梨香)と二人きりだが、能に没頭している寿一は殺気を放つばかりで甘い雰囲気にはなりそうもない(8話の「互いにマスクをとる」演出、一線を超えた表現ではなかった! )。

その愚痴を寿一の前妻・ユカ(平岩紙)にぶつけるさくら。けれども寿一とは正反対のユカの現夫・早川(前原滉)が1年間育児休暇をとり、育児も家事も全て担っている姿を見て「無理」を連発する。「今の時代には合ってるんだろうけど無理」。

「好きなんだよ、家事。仕事は誰か代わりがいるけど、ゆかちゃんのパートナーは僕しかいない」という早川は、仕事ではない場所に自分の生きがいを見出すタイプだ。一方、寿一はプライベートも何もない。24時間能とプロレスのことを考えて、ずっと家族をないがしろにしてきた。当然「今の時代には合わない」スタイルだが、しかしおそらく、そこまで注ぎ込んだ先にしか得られないものがあるのだろうし、さくらは結局その姿に惹かれるのだろう。

対話相手は父の亡霊……ではなく実在の父!

9話では、一度は解散した家族が一人ずつ戻ってくる。まず寿限無が「ただいま」と家に戻り、さくらが「家族に囲まれて笑っている寿一さんが好きでした」「一人の人間としてはそこまで」と滔々と語ったあと、寿三郎のホーム入居が週刊誌に取り上げられたことをきっかけに踊介と舞・長田夫婦が帰ってきた。

そこに記事を見た分家の頭首・万寿(ムロツヨシ)が口を出してくる。踊介を擁して寿一と対立……かと思いきや踊介はとにかく能に関してはダメダメのようで、対立構造が作れそうにもない。寿一は「バカ息子しかいねえよ!」「でもそれを言っていいのは親父だけだ」と一喝、追い払う。

「隅田川」の稽古中、気を抜くと度々8話で寿三郎から投げられた「継がせないよ、お前なんかに」の言葉が蘇る寿一。この日も同じだが、分家との衝突もあり、とうとう「黙って見てないで教えてくれよ」「俺じゃねえんだろ、お前じゃねえって言ってくれよ、そしたら俺すぐに辞めるから」と亡霊であろう父に詰め寄る。「家にあらず 継ぐをもって家とす」と世阿弥の言葉を引用して応える、ここにいるはずのない寿三郎。父の亡霊と対話する……というシーンかと思いきや、まさかの徘徊! なんという展開! しかもその直後に寿三郎は脳梗塞で倒れてしまう。ここまででまだ半分もいっていないのだ。

心拍数上げタイム!

本人たっての願いで在宅医療を受けることになった寿三郎。その意思を話す過程で、踊介も舞も、家をあけていた間にもホームでの父をそれぞれのやり方で支えていたことがわかる。寿限無も加えた4人の兄弟が互いの思いを知り、盛り上がる……ところで「そういうの外でやってもらえますか!?」と怒鳴る主治医。「在宅だって悪いけど管いっぱいつけるし、面会も制限しますから」とドラマにリアルが入り込む。主治医・大迫役に手練れの小松和重を配しているのは、きっとこの家族ときちんと対峙するのに必要だったからだろう。

1話で倒れた親父に取り乱していた寿一が、今回は葬儀屋(塚本高史)を呼んで冷静に葬儀の打ち合わせを進めている描写もありつつ、後半には「心拍数上げタイム」がかなりたっぷりとられていた。さすが「木更津キャッツアイ」で「主人公のぶっさんが死ぬ直前、憧れの先生の肩にしじみがついているのが気になって仕方ない」という脚本を書いた宮藤だけある。偉大なる父の死を前に家族もそうでない人も巻き込んでてんやわんやする、そのおかしみ。そしてふざけた呼びかけの次の瞬間には、一人ひとりが父への思いをぶつけるシリアスな展開になる、この緩急のスピード。

いざ父が最期を迎えようとするそのとき、寿一は世阿弥のいう「離見の見」で自分を見る。客観的に自分を見て、まだ父を継ぐ立場には早いことを感じる。そしてもう一人の自分・スーパー世阿弥マシンとして父の前に立つ。一度ホーム慰問で父を持ち上げたときのように「きもったま! しこったま! さんたま!」と呼びかけ、寿三郎が持ち直すという奇跡を起こすのだ。

「だが、奇跡は一度しか起こらなかった」というナレーションでいよいよ最終回を迎える。スーパー世阿弥マシンの引退試合が行われる2021年の大晦日。寿三郎はどうなるのか、寿一は何を思い、どう決断するのか。長瀬智也の演技が見られる最後の75分が間もなくやってくる。

次回はこちら:「俺の家の話」最終話からまだ抜け出せない。連続ドラマ丸ごと1本を使った長瀬智也との別れ

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
漫画家・イラストレーター。著書に『ものするひと』『いのまま 』など。趣味は自炊。
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