「俺の家の話」8話。長瀬智也にゆかりのあるゲストが次々やってくる!はなむけのようなドラマ

長瀬智也がプロレスラーと能楽師、二足のわらじを履きつつ父の介護をする寿一を演じる「俺の家の話」。父の婚約者であり、弟も思いを寄せるさくら(戸田恵梨香)と寿一は惹かれ合い、家庭内での三角、四角関係が生み出されてしまいます。二人の、そして家族の行く末は?

マスクを取って距離を縮める二人

前回7話で急接近し、さくら(戸田恵梨香)にプロポーズまでした寿一(長瀬智也)。冒頭、二人が一線を越えた描写が、互いのマスク(寿一はスーパー世阿弥マシンのマスク!)が宙に投げられる映像でさらりと描かれているのがにくい。

プロレス引退を決めた寿一はトレーニングと能の稽古で知らず知らず足を酷使し、アキレス腱断裂してしまう。その診断をする医者として「池袋ウエストゲートパーク」で長瀬演じるマコトの相棒・マサを演じた佐藤隆太が登場し、さらに佐藤といえばの「木更津キャッツアイ」を思い出させる巻き戻し演出が挟み込まれる。それにしても毎回、長瀬にゆかりのあるゲストが次々やってくる、はなむけのようなドラマだ。

誰かに選ばれないという傷

この回では、今までとてもいい感じでやっていた観山家の家族が一人、また一人と家を去っていってしまう。

踊介(永山絢斗)は思いを寄せていたさくらと、寿一との仲に気づいて。
舞(江口のりこ)は夫・長田(秋山竜次)の不倫をきっかけに、これまで溜め込んでいた父への不信感、能の家に女として生まれたことへ不満も爆発して。
寿限無(桐谷健太)は寿三郎(西田敏行)が彼の風呂の介助について「なんか違う」「身体を任せられない」と言っているのを聞いてしまって。

寿限無の「俺じゃないんだもん本当は。俺じゃない俺じゃないと思いながら舞ってた」「風呂も能も一緒」という言葉が心に残る。3人とも、「選ばれたのは自分ではない」という理由で傷つき、家を去っていったのだ。

車椅子の寿三郎を介助するのが、足を痛めて同じく車椅子の寿一しかいなくなってしまった。一度は断絶した父子、二人きり。それを助けるのは(いまのところ)他人のさくらだけだ。

さくらは、秀生(羽村仁成)を送り届けにやってきた寿一の前妻ユカ(平岩紙)と寿一について話す。

「ファンの頃がいちばん楽しかったわ」「(寿一は)うちらの分まで戦ってくれるやん」「けど自分がないねん。能ってそうなんやろ?」「観る側の気持ちで嬉しそうに見えたり、悲しそうに見えたり、それと一緒」「からっぽいうより、スケスケやな」

寿一は自分の分まで喜んだり怒ったりしてくれる、けれども決して自分ひとりに感情を返してくれはしない、というユカ。それでも「結婚してもずっとファンでいます」「私にとってはスカイツリーなんです」とさくらの気持ちは揺るがない。

長瀬を包む西田敏行の器

秀生に「隅田川」の稽古をつけていた寿三郎が、謡を忘れてしまう。ここで1話で野菜の名前が思い出せなかった寿三郎に寿一がかけた「別にいいだろ、あんた八百屋じゃねえんだからさ」の言葉が効いてくる。能楽師が謡を思い出せないのは、八百屋が野菜の名前を思い出せないことと同義なのだ。

その夜、寿三郎は姿を消す。駆けつけた末広さんの「これまで徘徊ってありましたっけ?」の言葉に、この状況が「徘徊」と名付けられるのだとショックを受ける寿一の表情が丁寧だ。ここに至って、寿一は前々から勧められていた寿三郎の施設への入所を決める。

二人だけの朝、グループホームを勧める寿一と、それを受け入れる寿三郎の気を遣い合ったやりとりには胸が詰まる。「嫌だったら別にいい」と何度も重ねる寿一にはまだ迷いが見える。それを慮って「お前といるよりマシだよ」とこぼす寿三郎。諦念と、子を思う父の愛とが混じり合ったような発言だ。
そして父子の別れのシーン。「ブリザード!」と拳を突き上げ、息子を見送る父。その視線を背に、ずっと大きな存在であった父を、とうとう施設に入れてしまった息子の後悔と悲しみ。二人だけで暮らしたのは数日に過ぎないかもしれないが、それでもこの父子はそこで25年間の空白を、全てではないにしても埋めたに違いない。

7話で感じたのは、役者・長瀬智也の大きさだった。そして8話では、それを受け止め、包み込む西田敏行の大きさを実感せずにはいられなかった。ボサボサの頭で介助にうだうだ文句を言う姿。記憶を失いうろたえる表情。老いのつらさ、いたたまれなさを取り繕うことなく見せるこの役者の器があるからこそ、長瀬が全力を出して寿一という役を演じることができるのだろう。

次回はこちら:長瀬智也×西田敏行「俺の家の話」9話。父を死の淵から蘇らせるのは?今夜最終回

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
漫画家・イラストレーター。著書に『ものするひと』『いのまま 』など。趣味は自炊。
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