高畑充希「にじいろカルテ」8話。真空「最強の3人だと思ってたよ。死んだって一緒にいたいと思ってたよ」絶叫

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• 前回はこちら：高畑充希「にじいろカルテ」7話。記憶がリセットされるたび、何度も出会う愛もある「何度も君と出会えて幸せだ」

振り返ると、「にじいろカルテ」（テレビ朝日　木曜夜9時）5話の内容はインパクトがあった。村内放送のDJを引き受けた蒼山太陽（北村匠海）がのどかな村に大音量でかけた自作曲「俺以外」は「俺以外みんな死ね　俺以外みんなデス　デスデスデス」と過激に歌い上げるデスメタルだった。

5話レビューはこちら：高畑充希「にじいろカルテ」5話。村じゅうに響く北村匠海のデスメタルは「普通の人なんていない」の叫び

3月11日放送の第8話で、太陽がこんな歌詞を書くに至った背景が明らかになった。

すれ違いまくる太陽

言ってしまうと、今回はアンジャッシュのコントみたいな展開だった。太陽が夜中に目を覚ますと、リビングのほうから紅野真空（高畑充希）と浅黄朔（井浦新）の声が聴こえてくる。

真空　「違う、そうじゃない！　もっと優しく」
朔　「優しくがいいのか。こうか？」
真空　「そうそう」
朔　「真空、初めてか？」
真空　「初めてに決まってんでしょ。あっ、そこ違う。ヘタクソ！」
朔　「声がデカい。聴こえちゃうだろ、太陽に。こうか？」
真空　「そうそう。いい感じ」
朔　「俺もいい感じだ」

会話の内容が生々しい。まるで、2人が深い関係にあるようだ。もちろん、真空と朔はそんな間柄じゃない。太陽が誤解するのも無理はないが、この早合点が壮大なアンジャッシュの始まりとなった。
この後、太陽と村の人たちの間でどんなすれ違いが起こったか？

●隣で亡くなっていた男性は霧ケ谷の同級生？

真空と朔の会話を聴いて乱れた心を紛らわせようと山道を歩き、ベンチに座って一夜を明かした太陽。目を覚ますと、隣には心肺停止状態の男性がいた。彼は一体、誰なのか？
「……あっ、安田たけし！　あれ、安田たけしだ」（霧ヶ谷）

たけしとは、村役場の職員・霧ケ谷桂（光石研）の小学生時代に都会から来た転校生である。霧ケ谷はたけしが嫌いだった。その後、たけしはまたしても引っ越すこととなる。転校する前、たけしは泣きながら霧ケ谷に感謝を伝えた。
「本当にありがとう。友だちは霧ケ谷君だけだった。大好きだった。一緒に遊んでくれてありがとう」

太陽は自分と重ね合わせ、必要以上にたけしに肩入れした。
「会いに来たんですよ、霧ケ谷さんに。友だちだって、親友だって思ってたんですよねえ、そのたけしさんは？　でも、霧ケ谷さんは違った。切なくないですか、それって？　きっと、たけしさんは霧ケ谷さんが何十年もいい思い出で。だから、会いに来たんじゃないですかね」

後に、亡くなった男性はたけしとは全くの別人だと判明する。涙を流すほど太陽が感情移入したたけしは、今も家族と幸せに暮らしているという。

●虹ノ村で無視に遭う？

診療所で太陽に聴かれないように患者が真空とひそひそ話をしている。太陽がにじいろ商店に行けば、邪険な態度を取られたり無視をされたりもした。
「なんか、みんな変なんですよ。俺に何か絶対隠してるし。は!?　感じ悪っ！」

●事後の真空と朔と対面？

「俺がもっと早く気付いてれば、あの男性を救えたのでは？」と自らを責める太陽を真空と朔が慰めた。しかし、頭や背中を撫でる真空の手を太陽は振り払うのだ。霧ケ谷に肩をポンと叩かれたときは何も反応しなかったのに。真空と朔が深い関係になったと思い込み、このツーショットに拒絶反応を示している。
太陽が診療所に戻ると、カーテンの向こう側で真空と朔がコソコソと何かをしていた。明らかに“何かやっていた感”が出まくっていたのだ。

愛ゆえに卑屈になる太陽、怒った真空

邪険にされ続けた今までの人生を太陽は告白する。小学生時代、仲がいい2人の友だちを招き3人で誕生会を開こうとしたが、その2人に欠席されたこと。中学時代、仲良しだった2人と同じ高校へ進学しようとし、拒絶されたこと。高校時代、男・男・女の仲良し3人組と思っていたら自分以外の2人が交際を始めていたこと。「俺以外みんな死ね」の歌詞にはこんな背景があったのだ。
ずっと裏切られてきたから、周囲からの無視は心底つらかった。親友と思っているのは自分だけという経験のある太陽にとって、たけしは自分自身だった。高校時代の記憶がある太陽は、真空と朔に懇願した。

「俺、もうそういうの嫌なんです。この3人でいたいんです。ずっといたいんです。お願いします。2人が恋愛関係でも我慢しますよ。3人でいたいんですよ。お願いします」

盛大な勘違いである。太陽は勘違いの上に勘違いを重ね、その上に苦しい記憶をデジャヴさせている。でも、亡くなった男性はたけしではなかった。無視と思っていたのは村の人たちが太陽にサプライズしようとしただけである。リビングから聴こえた生々しい会話は、太陽の誕生日パーティの出し物として2人が練習していた二人羽織だ。太陽の「お願いします」という言葉に真空は激昂した。3人の関係はお願いされて続けるようなやわなものじゃないからだ。

「私はさ、この3人さ、そんなレベルの低い関係だと思ってなかったよ。え？　ガッカリした！　なに、それ!?　最強の3人だと思ってたよ。絶対何があっても、死んだって一緒にいたいと思ってたよ」
「君のこともさ、朔先生のこともさ、愛してるよ。毎朝ハグしてさ、チューしたいって思うくらい大好きだよ」
「そっちが何か言ったってさ、離してなんかやんないんだよ。馬鹿！　病気が悪化して動けなくなったって、絶対離してなんかやんないんだからな、馬鹿太陽！」

真空にとって、母になかなか言えなかった病気の事実を包み隠さず共有できる3人だ。過去の苦しい体験を告白した太陽と、真空の告白。真空の病気が進行し切る前に、思い切り言い合えて本当によかった。愛ゆえに太陽は卑屈になり、愛ゆえに真空は怒った。周りに距離を置かれていると思っていた太陽は、みんなの優しさに包まれていた。

長尺の朝食シーンとハグはコロナを意識

やはり、このドラマはコロナを意識していると思う。真空と太陽による告白大会がいい例だ。大事な話もLINEで済ませる昨今。しかし、2人は面と向かって気持ちを思い切り伝え合った。そして、村の人たちと思う存分ハグをした。

今回は、朝食シーンにおよそ20分もの尺が費やされた。しかも、霧ケ谷は食べたものを吐いているし、緑川嵐（水野美紀）はゆで卵を口に含んで吐き出したりした。話しながら食べるから、もちろん飛沫は飛びまくりだ。

コロナ禍において、人と人が直接的にやり取りする機会は激減した。だから、コロナが存在しない世界を（人によっては悪趣味に思えるほど）過激に描き、コミュニケーションで生まれるパワーを思い出させようとしている。今の現実ではありえないことが虹ノ村では起きている。それらのシーンを作ることで、観る者にパワーを与えようとしているのではないか？

今夜放送の9話は、遂に最終話。予告を観ると、体調が悪くなった真空を両側から挟んでキスをする朔と太陽の姿があった。愛とコミュニケーションが密な、最強の3人だ。

■「にじいろカルテ」全話レビュー
１：「にじいろカルテ」1話。ロボット型ヒロインじゃない高畑充希を待ち望んでいた！
２：高畑充希「にじいろカルテ」2話。先回りして謝る真空の生きづらさを溶かす「ちゃんと怒られろ！」
３：高畑充希「にじいろカルテ」3話「何とか付き合っていくしかない」のが家族
４：高畑充希「にじいろカルテ」4話。命の順番を決めるトリアージの難しさ。井浦新のサングラスの意味
５：高畑充希「にじいろカルテ」5話。村じゅうに響く北村匠海のデスメタルは「普通の人なんていない」の叫び
６：高畑充希「にじいろカルテ」6話。真空「言葉は間違ってると思うけど、病気って面白い」
７：高畑充希「にじいろカルテ」7話。記憶がリセットされるたび、何度も出会う愛もある「何度も君と出会えて幸せだ」