高畑充希「にじいろカルテ」7話。記憶がリセットされるたび、何度も出会う愛もある「何度も君と出会えて幸せだ」

高畑充希主演「にじいろカルテ」。東京の大病院の救命救急の現場から、山奥にぽつんと佇む虹ノ村診療所やってきた医師・紅野真空(高畑充希)には“ある秘密”があったーー。約10日で何もかも忘れてしまう「まだら認知症」を患った雪乃(安達祐実)。雪乃のために虹ノ村の村人総出でで伝統式な婚礼を執り行うことになり……。

3月4日放送「にじいろカルテ」(テレビ朝日 木曜夜9時)第6話が取り上げたのは、3話に続き橙田雪乃(安達祐実)が患う「まだら認知症」だった。

雪乃(安達祐実)の夫・晴信(眞島秀和)が付けるノートの記録によると、雪乃に症状が出始めてから何もかも忘れてしまうまでの日数は約10日。彼女はすでに自分の年齢を答えられなくなっていた。

結婚式を挙げた記憶がない

桃井佐和子(水野久美)の結納写真に目を留める雪乃を見て「結婚式がやりたいのでは?」と察した紅野真空(高畑充希)。まだら認知症の雪乃には結婚式を挙げた記憶がないのだ。

佐和子が行ったのは、虹ノ村で古くから伝わる“虹ノ洞穴”の伝統式な婚礼だった。これがまた、準備が大変! 新郎(晴信)が5日間檻に閉じ込められたり、新婦(雪乃)が馬の格好をしたり。村のしきたりとはいえ、そんな悠長なことをしてていいのだろうか……。雪乃の記憶が失われてしまうまで、時間はない。

幽閉されている晴信を励ましに行った雪乃は、暗くなるまでそこを離れなかった。

雪乃 「君に愛されてとっても幸せだよ。愛してくれてありがとう」
晴信 「こちらこそ。何度も素敵な出会いをさせてもらって、最高に俺は幸せです。ありがとう」
雪乃 「また好きになってくれる?」
晴信 「何度でも。好きがどんどん増えてくるよ」

名残惜しそうに檻を掴む晴信と、その手に自分の手を重ねる雪乃。こうしている間にも雪乃の記憶はまだらになっていく。

また出会えばいい

村を挙げての婚礼だ。虹ノ村に住むお年寄りたちも準備に張り切った。

雪乃 「本当にいいのかな……。ほら、私、すぐ忘れちゃうし、もう(準備が)始まってるし……」
真空 「いいじゃないですか。忘れたら何度も結婚式すればいいじゃないですか。何度も結婚式できるなんて幸せじゃないですか。雪乃さんの病気じゃなかったらできないことじゃないですか。病気だからこそできる幸せじゃないですか」

晴信だけではない。これまで何度も、村のみんなは雪乃との関係を作り直してきた。

結婚式当日。花嫁衣裳をまとった雪乃は、記憶を全てなくしてしまった。結婚式は取りやめになった。

緑川日出夫(泉谷しげる)ら“じじーず”は日替わりで洞穴の御神体の石に祈りを捧げていた。なのに、全員が誤って御神体を池に落とし、何食わぬ顔で代わりにその辺の石を置いてごまかしていた。この調子だと、由緒正しい本物の御神体はとっくの昔になくなっていた気がする。でも、大丈夫なのだ。
雪乃の記憶も同じである。何度記憶を失っても、何度も出会いを繰り返せばいいだけ。失われた雪乃の記憶を埋めるのは、村の人たちの思いやりと晴信の愛だ。じじーずが別の石を置き、御神体が入れ替わってもありがたさは変わらなかった。雪乃の記憶が消えても、晴信の好きの気持ちは変わらない。結婚式を躊躇する雪乃に真空は言った。

「記憶としてのプログラムはなくなってしまうのかもしれないけど、でも、体が全く何も覚えてないとは言い切れないと思う」

式が取りやめになり、記憶を失った雪乃に晴信は語り掛けた。

晴信 「幸せだな、俺は。何度も何度も君と出会えて。……あっ、今のいい感じだったよね(笑)。恋に落ちた?」
雪乃 「いえ、そこまでは……。でも、好感は持ちました(笑)」
晴信 「おお……っ。やった……!」

晴信への愛もリセットされた雪乃。でも、何度も繰り返してきたことである。顔はタイプじゃないのに、結局、雪乃はいつも晴信を好きになる。相性が悪かったら、リセットした2人の生活は始まらないはずだ。お似合いの2人だし、素敵な夫婦だ。

病気だからできる幸せ

村の人たちの温かさも不変だ。もうすぐ記憶がなくなると自覚する雪乃は、自分宛てに動画メッセージを撮影していた。

「これを見ている私。何もわからなくて……世界中のことがわからなくて怖くて仕方ないと思う。でも、大丈夫だよ。みんな、あなたの味方だよ。あなたは、とっても幸せ者です! だから、心配しないで。安心して。大丈夫。そこがあなたの居場所だよ」

動画の中の雪乃だって、記憶を失ってからそんなに時間は経っていなかったはずだ。でも、その間に村の人たちと接し「自分は幸せ者」と思うことができた。彼女の居場所はここだ。

往診で訪ねた山下のおばあちゃん(吉田幸矢)は「できるだけ早くおじいさんに迎えに来てほしい」と元気がなかった。しかし、婚礼の準備に参加することで力を取り戻し、診療所に足を運んで腰もすっかり良くなった。いつの間にか口紅もさしており、見違えるようだ。
「楽しかったわねえ、婚礼の準備。また、あるんでしょう? 生きる楽しみができたわ」(山下のおばあちゃん)
結婚式はなくなってしまったが、結果が全てではない。村に活力が戻り、雪乃と晴信の絆は深まったと信じたい。

何より、また2人は出会うのだ。これは、雪乃の病気じゃなかったらできないこと。病気だからできる幸せである。

■「にじいろカルテ」全話レビュー
1:「にじいろカルテ」1話。ロボット型ヒロインじゃない高畑充希を待ち望んでいた!
2:高畑充希「にじいろカルテ」2話。先回りして謝る真空の生きづらさを溶かす「ちゃんと怒られろ!」
3:高畑充希「にじいろカルテ」3話「何とか付き合っていくしかない」のが家族
4:高畑充希「にじいろカルテ」4話。命の順番を決めるトリアージの難しさ。井浦新のサングラスの意味
5:高畑充希「にじいろカルテ」5話。村じゅうに響く北村匠海のデスメタルは「普通の人なんていない」の叫び
6:高畑充希「にじいろカルテ」6話。真空「言葉は間違ってると思うけど、病気って面白い」

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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