綾瀬はるか×高橋一生「天国と地獄」5話。溝端淳平と柄本佑がどっちも癒やし系男子って、キャラかぶってて怪しい

綾瀬はるか×高橋一生「天国と地獄 ~サイコな2人~」。思い込んだら一直線で失敗も多い刑事の望月彩子(綾瀬はるか)と創薬ベンチャー企業コ・アース社社長でサイコパスな殺人鬼の日高陽斗(高橋一生)が入れ替わり……。中盤の山場となる5話。同居人の陸(柄本佑)が日高と彩子の入れ替わりに気づいてしまいます。さらに、ますます怪しい人物も登場!

「天国と地獄」第5話が放送。連ドラにおいて1話の次に大事とも言われる中盤の山場だ。Twitterなんかで色々な考察を見かけるが、どれも意見がバラバラなのが興味深い。ミステリーとして一番いい状況と言える。

トダカズキという思いっきり怪しい人物がチラ見せされた。また、初登場の居酒屋の大将にも怪しい演出が満載。僕が一番気になったのは陸(柄本佑)の師匠・湯浅(迫田孝也)。彼はおそらく入れ替わりを経験している。

このドラマは主人公2人の表記が非常にややこしいので、以後、彩子(見た目は高橋一生)は「彩子」、日高(見た目は綾瀬はるか)は「日高」と人格の方を優先する。

人格が入れ替わったふたり。左が彩子(見た目は高橋一生)右が日高(見た目は綾瀬はるか)

まだまだ残る黒幕の可能性

日高のコインロッカーをのぞいてしまった陸は、日高との関係を怪しんで彩子に接触。思い切って彩子が入れ替わりをカミングアウトすると、陸はあっさりと信じた。これで2人の入れ替わりを知ったのは、八巻(溝端淳平)に続いて2人目。気づきに至った理由は、どちらも“彩子をよく見ている”と“ピュアである”ということだ。

この2人、重要キャラなのにどうもキャラ被りが激しい。どっちも主人公である彩子の周りにいる癒し系男子的ポジション。しかもそろって彩子の異変に気づくなんて、思考まで被っている。このまま行くとはちょっと思えない。どっちかは入れ替わりという現象をもともと知っていた可能性もありそうだ。

とはいえ、八巻のおっちょこちょいは度が過ぎていて黒幕ということはなさそう。しかし、陸はまだまだ十分あると考える。今話は「陸は良いやつですよ~」という陸の怪しさを払拭する回だったが、ぬぐい切れていないような気もする。

入れ替わりに気づいたことを日高に知られた陸が、逃げ出さずに日高の近くにいることを選んだ場面は興味深い。一見彩子への気持ちを大事にした感動のシーンに見えるが、実は事件の黒幕で日高を監視するためだったという可能性は十分にあり得るだろう。日高は自分を操っているのが陸だと知らないという形だ。

このシーンでもう一つ注目したいのが、日高が見せた恋する乙女の顔。ここで陸を好きになってしまっていたとしたら、終盤でものすごい感動の展開か、ものすごい悲しい展開の布石になりそうだ。

乙女の顔により、日高がもともと女性と入れ替わっていたという説がより濃厚になった。他にも日高は彩子の体を「いい体ですねぇ」と褒めているのだが、どうもそれが女性的な目線に見える。男のやましい発想ではなく、割れた腹筋を褒めたり、美貌についても「羨ましい」「気分がいい」という感情が先に立っている。日高、彩子、陸の奇妙な三角関係は、なんだか面白そうだ。

ハナモゲラから見る師匠の入れ替わりの過去

陸に対して言った湯浅の「余命3ヶ月のハナモゲラよ」が気になる。余命3ヶ月は冗談だと笑った湯浅ではあったものの、そのままは受け取りづらい。本当に何かのタイムリミットがあると考えるべきだろう。タイムリミットといえば、監視を続けている豪邸の周りで薬の殻を拾った際、日高は「時間がないですねぇ」と呟いている。日高と湯浅が何かしら共通のタイムリミットと闘っているのかもしれない。

湯浅には、面倒な父親がいたことが明らかになっている。湯浅に家を借りられなくなるほど借金を背負せ、そのまま亡くなったらしい。面倒な亡くなった年配男性となると、日高の家の近所に住んでいたおじいさんが思い浮かぶ。

日高と仲が良かったこのおじいさんは、階段から落ちて亡くなっている。このドラマにおいて“階段から落ちる”は、入れ替わりのトリガーだ。演出的には「日高とおじいさんが入れ替わっている」という怪しさを出すものだったが、これはミスリードで、本当に入れ替わったのは湯浅とそのおじいさんという可能性はないだろうか? そのおじいさんは湯浅の実の父親で、現在の湯浅の中身はその父親というわけだ。

この考察に至った理由は、湯浅の「ハナモゲラ」発言。ハナモゲラは、1970年代後半から1980年代前半に流行った言葉。湯浅はどう見ても40歳ぐらいで、「ハナモゲラ」が自然に出てくるとは考えづらい。他にも、「知らぬが花って言ったじゃねーかよ」など、1人だけどこかセリフが古くも感じる。

湯浅が酒を飲まなかった理由もキーになるだろう。本人は「胃が荒れている」と言っていたが、これもそのまま受け取るわけにはいかない。酒飲みが酒を飲まない理由、もうこれは「薬を飲んだから」と考えていい。

つまり、湯浅は飲んだ薬の殻を外に落とし、それを日高が発見した。日高と湯浅は同じ豪邸を監視しているのだ。湯浅の父親は湯浅と入れ替わりを果たし、その過去を日高は知っていた。そして今、何らかの目的のために2人は手を組んでいるということになる。目的とは、黒幕の弱みを握る、もしくは黒幕の連続殺人を止める、といったところだろう。

湯浅の「余命3ヶ月」は、本当に寿命なのかもしれないし、入れ替わりのタイムリミットなのかもしれない。だが、陸に漏らしてしまった言葉はある種の本音であり、黒幕的な思考を持つ悪者ではない、と思いたい。

新たに登場した3人の怪しすぎる人物

兼ねてから怪しまれていた九十九(中尾明慶)は、ただの嫉妬狂いの小悪党だったことが発覚。彩子と日高のバディ的な活躍により逮捕に至り、黒幕の可能性を薄めた。その代わりに、歩道橋の彼女、居酒屋の大将、トダカズキという怪しい人物が3人も登場した。

歩道橋の彼女はまだ名前も顔も出ていない。が、日高に手紙を送っていて、犯行の指示を出していると思われる。第6話以降は、この歩道橋の彼女の正体を追う展開が予想される。

居酒屋の大将は、ただただ怪しくカメラで抜かれただけの人物だ。セリフもなく、名前も出ていない。だが、彩子と陸の入れ替わりトークを興味深そうに聞き耳を立て、何かを言いたげな表情を見せている。さすがに黒幕ということはないと思うが、キーパーソンとなるのは間違いなさそう。入れ替わる前の日高か、陸の過去あたりを知っているのかもしれない。

そして最も怪しく描かれたのがトダカズキだ。トダは3年前に起こった第一の事件の目撃者で、河原(北村一輝)が「虚偽の証言をした」とにらむ女性だ。黒幕&歩道橋の彼女の最有力候補に駆け上がるほど怪しい演出だったが、本当にそうなのだろうか?

3つの殺人事件は、まだ犯人の動機が明らかになっていない。被害者は、官僚、パチンコ店オーナー、ゴルフ場のオーナーとお金持ち揃いだが、金目当ての犯行とはされていない。しかし、トダは以前勤めていたスポーツクラブで顧客リストを売ってしまうほど金に困っている人物だ。もし、トダがやっていたとしたら金銭を盗まないというのはおかしい。

よってトダはミステリードラマの中盤でよくある、思いっきり怪しいけど2話くらいで退場する盛り上げ役と思われる。もちろん何らかの情報は握ったキーパーソンではあるのだろうが、黒幕や歩道橋の彼女とするのは時期尚早だろう。

今夜放送の第6話では、4番目の殺人事件が起きるらしい。また、犯人が残すΦのマークは、クウシュウゴウ(空集合)というものであることが発覚するようだ。後半に入ってますます謎が深まりそうなので、考察を含めてまとめていきたい。

次回はこちら:綾瀬はるか×高橋一生「天国と地獄」6話。こんがらがってきたので一旦謎をまとめる。黒幕は「悪」と「善」の2人いる?

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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