「梨泰院クラス」9話。パク・セロイ、オ・スア、チョ・イソの恋と権力のトライアングル
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- 前回はこちら:「梨泰院クラス」8話。大金を得たセロイは、なぜ会長のようにならないのか
「梨泰院クラス」全話レビュー、いよいよ第9話。
ビルを買い、新しい地で居酒屋ハニーナイトをスタートさせる。
税金対策のために法人化することになり、会社名を決める会議。スングォンが「梨泰院クラス」という名を提案する。読み方はイテウォンクラス。セロイが「キャッチ—でいい」と乗ると、チョ・イソが「クラス? 子供っぽい」と反論する。
パク・セロイは言う。「梨泰院クラスと聞いて思い浮かんだ言葉は、自由だ。多様な文化が自由に入り混じった場所 束縛もない」
ここにきて、ようやくタイトルが持つ意味と象徴が言語化され解説された。
第2話の、異文化が混ざり合うハロウィンの夜。あれが「梨泰院クラス」というタイトルを象徴するシーンだったのだ。
ちょー鈍感パク・セロイ
チョ・イソ、オ・スア、パク・セロイの恋の三角関係もゆっくりと進んでいる。
スアとセロイがふたりでデート。
スアが「一度も告白したことがない」と言えば、セロイは「拘置所で言っただろ」と答え、「もう10年も前よ」と返される。
「バス停のは?」「私を解き放つっていうのが告白なの?」「あれでも足りないか?」
セロイとスアは、すれ違う。スアは、エクスキューズなしに告白してほしいのだ。
だが、セロイは、あくまでもスアの主体性を重んじる。
「負担に思わず聞いて。いつでもお前しだいだ」としか言えない。
スアとセロイがデートしたのを知ってチョ・イソが言う。
「あの女と付き合うなら、ここを辞めます」
とまで言われて「何なんだ?」と答えるセロイ。チョ・イソの恋心に気づかない反応。
ここまでくると、鈍感ではすまされない。ちょー鈍感だ。
チョ・イソ、オ・スア、パク・セロイの三角関係は、実は恋でありながら、同時に権力に対する三通りの対処方法のダイナミズムだというのは以前に書いた。(「梨泰院クラス」3話。忖度社会に抗うための第3の方法)
パク・セロイは、権力に対して真正面からぶつかる。一度たりとも屈しない。自分の信念を貫き、長家の恩恵を拒絶し、戦う。
オ・スアは、自分の正義に基づいて受け入れる。長家の恩恵を受け、いまや社員になって出世している。
「私が長家の人間じゃなければどうなってたかな」とオ・スアは言い、セロイは「お前がどこの人間だろうが俺たちの関係はお前が決める」と言う。
オ・スアは、エクスキューズなしの告白をパク・セロイに求めた。屈してしまった自分を否定して、一度も屈することのないセロイ側に自分を連れ去ってほしい、と。新しい自分としてやりなおしたかった。だが、パク・セロイはあくまでも「お前しだいだ」としか言わないのだ。
オ・スアを好きになった瞬間のことをパク・セロイは語っている。バスに乗れず試験会場に向かって走っていたとき、セロイが荷物を持とうとしたのを拒絶して自力で走り切ったときだと。パク・セロイは、助けを求めずに自力でやっていくオ・スアを好きになったのだ。
何度か屈してしまい、セロイの宿敵の長家に助けを求めてしまったオ・スアには、もう「自分しだい」では、一度も屈してないパク・セロイの元に行けない。行けないにもかかわらず、セロイは「お前しだいだ」としか言ってくれないのだ。
チョ・イソは、権力に対して「空気を読まない」という態度だ。区長の娘のいじめを正面きって止めるのではなく、いじめている動画をSNSに拡散する。戦わず、利用する。
ほんらいのチョ・イソならば、自分のやりたいようにやれなければ、パク・セロイの居酒屋を辞めているだろう。空気を読まず、やりたいようにやる。そして成功させるのがチョ・イソだ。
だが、チョ・イソは、屈する。第8話で、マネージャーとして、確執がある長家の次男グンスを辞めさせて、長家からの嫌がらせを止めようとした。パク・セロイは、それを知り、「マネージャー失格だ」と怒鳴り、胸につけているマネージャーの名札をむしりとり、投げ捨てる。
「あいつ(長家)と同じことをするなら商売なんか始めていない!」と反論した。
パク・セロイは、自分の信念のために、チョ・イソを辞めさせるという権限を使って、彼女の意見を変えさせようとした。これは権力の行使だ。
ビルを買うという豪快な作戦を説明して思いとどまらせるという展開になるが、相手が恋しているパク・セロイでなければ、チョ・イソはそのまま辞めていただろう。
第9話の「あの女と付き合うなら、ここを辞めます」というセリフは、恋がなければ辞めているという宣言だ。
権力への対処のトライアングルと、恋のトライアングルが重なり合い、さらにパク・セロイが権力を行使できる立場になったことによって、物語はいよいよクライマックスへ突入する。
私は 社長を死ぬほど愛してる
長家の長男のチャン・グンウォンが、チョ・イソをスカウトにやってくる。
チョ・イソは、「セロイは頭が固すぎてうんざりなんです」と言い出し、スカウトに乗り気な気配を見せる。
グンウォンは、調子にのせられて、チョ・イソが導くままに、「法律は貧しい者を支配するためのもので、支配する側には適用されない」などと言い出し、セロイの父親を事故でひき殺したが、身代わりを立てて罪を逃れたことを話す。
もちろんチョ・イソは、それを録音していた。
「私は 社長を死ぬほど愛してる。だけどね社長の頭の中はいまいましい長家のヤツらのことばかりなの。嫉妬しちゃうわけよ。ウジ虫みたいなヤツらめ」
怒りで立ち上がるグンウォンの顔にコーヒーをぶちまけるチョ・イソ。
パク・セロイがあれこれ苦労して得られなかったグンウォンの罪の証拠がこんなにイージーなトラップでゲットできるとは!
チャン・デヒは悪役ながら聡いが、長男のグンウォンに足をひっぱられっぱなしである。
いよいよ、次回、グンウォンの逮捕、チャン・デヒが最大の窮地から重大な決断を下す。
■梨泰院クラス全話レビュー
1:「梨泰院クラス」会長は本当に悪でパク・セロイは本当に正義なのか? 全話徹底レビュースタート
2:「梨泰院クラス」2話。忖度で生み出される格差に抗うパク・セロイ
3:「梨泰院クラス」3話。忖度社会に抗うための第3の方法
4:「梨泰院クラス」4話。パク・セロイとオ・スアとチョ・イソの恋のトライアングルバトル勃発
5:「梨泰院クラス」5話。パク・セロイとオ・スアのキスにチョ・イソディフェンス発動
6:「梨泰院クラス」6話。最大の疑問。パク・セロイはなぜオ・スアをタンバムに呼ばなかったのか
7:「梨泰院クラス」7話。パク・セロイ、会長に宣戦布告、土下座して罪を償え
8:「梨泰院クラス」8話。大金を得たセロイは、なぜ会長のようにならないのか
9:「梨泰院クラス」9話。パク・セロイ、オ・スア、チョ・イソの恋と権力のトライアングル
10:「梨泰院クラス」10話。権力か家族か。決断を迫られる会長、迫るセロイ
11:「梨泰院クラス」11話。チョ・イソ告白シーンでわかるパク・セロイが恋愛に鈍感な理由
12:神回「梨泰院クラス」12話。恋愛から逃げるパク・セロイ、「最強の居酒屋」から逃げないマ・ヒョニ
13:「梨泰院クラス」13話。パク・セロイが愛したのはスアでもイソでもない。会長だ
14:「梨泰院クラス」14話。パク・セロイがオ・スアを捨て、チョ・イソを選んだ愛の理由
15:「梨泰院クラス」15話。結局、会長もパク・セロイもマッチョなのだ。次回最終回
16:「梨泰院クラス」最終話。パク・セロイ「夢みていた光景なのに心の底から喜べない」
「梨泰院クラス」
演出:キム・ソンユン
原作脚本:クァンジン
キャスト:パク・ソジュン パク・セロイ役、キム・ダミ チョ・イソ役、ユ・ジェミョン チャン・デヒ役、アン・ボヒョン チャン・グンウォン役、クォン・ナラ オ・スア役、キム・ヘウン カン・ミョンジョン役、イ・デビッド イ・ホジン役、ソン・ヒョンジュ パク・ソンヨル役、ユン・ギョンホ オ・ビョンホン役
オープニング曲:ハ・ヒョヌ「Stone」
エンディング曲:Gaho「Start」
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