「青天を衝け」全話レビュー02

吉沢亮「青天を衝け」2話。能面を外しても能面のような草なぎ剛、闇が恐ろしい

「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一。その栄一を吉沢亮が演じ、主演を務めるNHK大河ドラマ『青天を衝け』がスタートしました。江戸で学ぶことを夢見る栄一、将軍になることを夢見る慶喜、2人の青年期への成長が描かれた2話。いよいよペリーが来航することになり……。

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ「青天を衝け」第2話。
徳川慶喜と渋沢栄一。後に主従の関係となるふたりが、徳川幕府に対してのモヤモヤした思いを抱きつつ青年期を迎えた。

やりたい放題の悪代官に栄一怒る

幼き日の渋沢栄一(小林優仁)が暮らす血洗島では藍の刈り取りや、五穀豊穣・悪疫退散を願う村祭りが迫っていた。
しかしそこにやって来たのが岡部藩の代官・利根吉春(酒向芳)たち。
岡部の若殿様の御乗り出し(大名の長男が元服後はじめて登城し将軍に面会すること)が決まって道の整備をする必要があるため、村から人足を100人、御用金2000両を用意するようにとの命令だ。

道を整備するために人足を集めるのはともかく、このメチャクチャ忙しい時期に余計な労働をさせることに対しての賃金はゼロ。むしろ働く側が2000両払うという頭のおかしい要求。栄一ならずとも「なんなん!?」と言いたくなるところ。

時期が時期だけに栄一の父・市郎右衛門(小林薫)はやんわりと人足の人数だけでも少し減らして欲しいと頼むが、利根吉春は大激怒。
「お上が100人出せと言ったら出すんだ!」

金をもらった上に労働力まで提供してもらう側が偉そうにするって!? しかしお上の言うことはどんなにメチャクチャでも絶対。それが常識という時代なのだ。

「アンタ毎回出てくるの!?」でお馴染みの徳川家康(北大路欣也)は、
「(江戸時代は)島原の乱の後は戦いもなく、新しい文化も育ち悪くない時代だったと私は思う」
と胸を張っていたが、その太平は庶民たちを身分制度でガッチリと締め付け、武士が農民たちに無理を強いることで成り立ってきたのではないだろうか。

「裸の王様」の子ども的なところがある栄一は、井戸の中に向かって「承服できん!」と叫んでいた(ここは「王様の耳はロバの耳」っぽい)。
200年以上続いてきた幕藩体制に無理が生じてきており、栄一のような若い世代を中心に疑問を抱く者たちが増え、明治維新の嵐を巻き起こしていくのだろう。

水戸徳川家と一橋家の因縁

明るく真っ直ぐに育った渋沢栄一がこのドラマのライトサイドだとすれば、ダークサイドは徳川慶喜(草なぎ剛)だ。

水戸藩から一橋家の養子となった七郎麻呂(笠松基生)は第12代将軍・家慶(吉幾三)から一文字もらって慶喜に。メチャクチャありがたくラッキーなことだと思うが、なぜか慶喜は不満そう。
これは、慶喜の出身である水戸徳川家の一橋家に対する複雑な思いが影響していると思われる。

徳川家康が幕府を作った際、将軍家直系の跡取りが絶えた時に養子を取るために創設したのが徳川御三家。水戸徳川家は、紀州、尾張と並んで御三家の一角を担っているのだ。
しかし御三家から初の将軍になった紀州徳川家出身の徳川吉宗は、自分の血筋を安泰とするため、さらに田安家、一橋家、清水家という御三卿を作ってしまう。

御三卿は一般の大名のように独立した領地を持たず、江戸城内に屋敷を持って暮らしている。

「つまり一橋とは将軍家の居候というわけか」
慶喜は皮肉っぽく言っていたが、御三家である水戸徳川家からすると御三卿の一橋家は一段下という意識があったのではないだろうか。
しかし吉宗以降、将軍職は紀州徳川家と御三卿に独占されており、御三家であるにもかかわらず水戸徳川家からは一度も将軍を出したことがないのだ。

父子の願い、それは将軍!

第1話で慶喜は父・斉昭(竹中直人)からクレイジーとも思えるような様々な帝王学を叩き込まれていたが、それはすべて「水戸から将軍を」という悲願を果たすためだったのだろう。

就寝時、布団の両サイドに刃をむき出しにした日本刀を設置するというのも、寝相が悪いせいで将軍になれないなんてことのないように、斉昭がリアルにやらせていた訓練だという(実際には日本刀ではなくカミソリだったようだが)。

さらに右肩を下にして寝ていたのには「寝込みを襲われた時に利き腕を守れるように」という意味があるのだ。
ところが一橋家での慶喜は大の字になって寝っ転がるわ、左肩を下にするわ……。この辺から一橋家への反発心がにじみ出ている。

身近な用人の前ではそんななめた態度を取っている慶喜だが、将軍・家慶に対してはメチャクチャきちんとした対応をしているというクレバーさも末恐ろしい。
家慶に気に入られ、将軍候補になることこそが父・斉昭の願いだということを分かっているからだろう。

尊皇攘夷思想が行きすぎたせいで幕府から隠居を命じられていた斉昭からしても、「慶喜が出世することで自分も政に復帰できるのではないか」という期待があったはずだ。

モーリー丸出しのペリーで笑った

子ども時代から青年に成長し、草なぎ剛になった慶喜は能を舞うシーンからスタート。
源平合戦の時代、父・平知盛をかばって死んでいった平知章のことを歌った「知章」という演目。

慶喜を実の子以上に溺愛していた家慶が、手取り足取り「知章」の所作を教えたという史実が残っているという。

家慶からすると「知章」に“父子の絆”的なものを込めていたのかもしれないが、能面を外してもまだ能面をつけているような闇全開の草なぎ・慶喜の顔からは「自分を殺して実の父・斉昭のために将軍を目指す」という決意が感じられた。

後に徳川最後の将軍になる慶喜と、その家臣となる渋沢栄一。
一般的な明治維新のイメージでいうと、思いっきり旧体制の幕府側にいるふたりが、この時点では幕藩体制に対して反感を抱いているというのは面白い。

第3話ではマシュー・ペリー(モーリー・ロバートソン)が来航したことで本格的に幕末が到来し、幕藩体制が揺らいでいくと思われる。
……のはいいのだが、超・重要人物であるはずのペリーが、どっからどう見てもコスプレしたモーリー・ロバートソン丸出しで笑ってしまった。演技、できるのかな?

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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