最高に楽しいぼっち旅をしよう!

#9 29歳で一人旅をするのは「かわいそうなこと」なのか

29歳女がぼっち旅の魅力をお伝えする本企画。いよいよ最終章になります。色んなことがありました……。で、結局ぼっち旅で得られることってなんなんだ? 真船さんに振り返っていただきました。

●#9 29歳は旅に出るべき

金曜の夜に突然やってくるやつ

突然の想い出話をするが、NYに行く前、当時お付き合いをしていた男性と別れた。涙も修羅場もなく、非常に自然にあっさりと。

29歳という年齢はめちゃくちゃ微妙だ。
迫りくる「三十路」に向けての女としての焦りと、突然にして発生する母性への戸惑いと、変わりたくないという恐れがぐちゃぐちゃにやってくる。
「誰かを好きにならなきゃいけない」とか「たった一人との関係性も築けないようでは……」とか「早く生んだ方がいい」とか。誰に言われるわけでもないけど、その不安は夜中、たった一人で眠る部屋に鳴り響く緊急地震速報とともに、あるいは金曜日の夜にやってくる。

それが「結婚」「出産」という女として転機の二文字に向かっているものなのか、漠然と「人生」という二文字に向けているものなのかわからないけれど、もみくちゃになった私は「逃避」という二文字を選び続けている。

家にいる「ぼっちの私」は、堕落しきっていて、#1で描いたように裸でスヌー○ーストリートをやっているだけの人間。

裸でスヌー○ーストリートをやっているだけの真船さんを描いたマンガ

そんな私を好きだと言ってくれる、真船的ノーベル平和賞あげたいくらいのありがたい男性に別れを告げ、一人でからあげ弁当かきこんでいる人生を選んでしまったことを後悔こそしないが、「今後私はぼっちで生きていけるのか」と思う夜がたまに来る。
そういう時に、あえて一人で逃避行をするのが、精神的にとても理にかなっていると個人的には思っている。

一人である実感をすることが、安心につながる

すごくセンチメンタルに始めたので今回のNY旅行がまるで壮大な感傷旅行だったように感じる方がいらっしゃるかもしれない。
が、この旅行は「CAかわいい~、CAに優しくされてえ~」がすべての始まりであり、

→ #0 私がぼっち旅をする理由

胸やけするほどスイーツ喰いまくったり、

→ #4 本場の映えスイーツで胸焼けしたい

制服を着て変質者扱いされているだけの、

→ #5 ぼっちでもSATCの女の友情を体現したい

→ #6 ぼっちなGOSSIP GIRLの正体は?

ただの珍道中だったことを再認識いただきたい。

自分で自分がわからないってこういうことを言うんだと思う

気づいてしまったんだけどメリット書いてなかったね

この旅の#0で、一人旅のデメリットを書かせていただいた。
が、まだ1個も「一人旅のメリット」を書いていないことに、今気づいてしまったので焦って筆を執っている次第である。

色々考えてみたのだが、メリットは一つ、「一人であることを実感できる」ということだけだ。哲学でも、なぞなぞでもない。ほんとに、一人旅って「一人だ」ということを実感する儀式だなあ、としみじみ思う。

例えば、今回の旅のオープニングは「地獄のトランジット」であった。大量の荷物を守りながら、椅子の上に寝るという、いつかそれっぽい四字熟語になりそうな修行だ。

→ #1 「ビジネスクラス」というドーピング剤を使う

そして、NYについてからも典型的な白タク詐欺に教科書通りにひっかかり、変なオッサンに金をせびられた。

→ #2 ぼられている方が、旅は楽しい

これらの苦難は、一人旅じゃなかったら起きていない可能性の高い出来事だ。
トランジット空港泊では、席を外す際もかわりばんこに荷物を見ていられるし、
タクシー詐欺に関しても、「三人寄れば文殊の知恵」、私と同レベルのバカが複数人集まるのでなければ、誰かしら「あのタクシーに乗るのはやめよう」と言ってくれるだろう。
(ただし、私レベルが3人集まったらもっと悲惨な事態が起きている可能性もある)

誰にも愛されなくても生きていける

相当旅慣れている人でさえ、一人旅には、いらん苦労が伴う。
楽しいことがあっても悲しいことがあっても、共有する人はいない。
誰も否定も肯定もしてくれない。全部が自分一人に課されたミッションで、全部が自己責任。
「元気に帰宅するまでが遠足です」と同じノリで、最終的に家に帰ることを目標に困難を潜り抜けてくる。

その困難の要所要所で時に「一人だなあ」とため息をつき、時に「一人でできたもん!」と、小さな自信を得ていく。
それは大げさに言うと、「一人で生きていける」と実感する瞬間でもあるような気がする。

見知らぬ土地で、ごはんを食べて、呼吸をして。自分の好きなことができて、「今私楽しいなあ」と思える。その力があれば、誰にも愛されなくても、いつか日本が沈没しても、きっとどうにかして生きていける。どんな状況になっても、悲しいことばかりではなくて、ちゃんと楽しいこともあるんだと思える。

一人旅は、そういう自分に気づけるという、何ごとにも代えがたいメリットがある。

いや、馬鹿みたいにスイーツ喰ってただけだけども。

最後にもうひとつ……

さて、ここまで結構いいことを言った実感があるのだが、最後に「帰国」というミッションを果たした際のお話をして結びにしたいと思う。

飛行機を降りた後、(なんだかんだ良い旅だったな……ビジネスクラス最高!飛行機大好き!)と思っていた私の目の前に流れてきたのは

ボッコボコに破壊されたスーツケースであった。

え?こんなきれいに取れる?

今まさにスキージャンプに挑む確度である。

「一人旅は、自分一人で生きていけるという実感ができる」とか言っちゃったけど、ぶっ壊れたキャリーケースを抱えて家まで帰るのはそれはそれは大変だったので、やっぱり次の旅は二人でもいいなあ…と思ったりする、そんな29歳一人旅でした。

テレビ東京社員(現在BSテレ東 編成部出向中)。AD時代の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。ツイッターアカウントは@mafune_kana
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