【真船佳奈】#7前編 スプレーアートに挑戦、疎外感を味わう【ぼっち旅】
●#7 本場のスプレーアートを体験したらとんでもないことになった件〈前編〉
英語ツアー「今の私ならいけるかも!」
旅行の醍醐味の一つに、「体験」がある。ただ受動的に何かを見るのではなく、自分でやってみちゃおう!という楽しみ方だ。
こうした「アクティビティ」の種類は今や千差万別。
NY在住のスタイリストと買い物に行く体験や、一般家庭で料理を教わる体験など、とにかくいろんな種類のアクティビティがある。
が、残念ながらちょっと変わった内容のものや、地域密着系のものは「英語ツアーのみの開催」であることがほとんどだ。
英語ができる方は問題なく様々なアクティビティに挑戦することができるだろうが、私のようにあんまり英語が得意でない方は参加をするのも不安であろう。
しかし、こんな経験はないか。
「日本語ツアー」に参加したのに、現地ガイドの話す日本語がめちゃくちゃだったこと。そして、物を売るときになると急に流暢な日本語を話し始めたこと。
実際に私が香港に行ったときのガイドは漢方屋に入った瞬間めちゃくちゃ流暢に薬の効能や成分を説明し始めたのに、「この店、詐欺なんじゃないの?」などと言おうものなら急に「チョト日本語ワカラナイネ」と、とぼけ出す困ったやつだった。
どうせ都合のいい時日本語わからないふりをされるのなら、英語ツアーでもいいんじゃないのか。
それに、小学生の時に、外国人講師のひどい口臭に耐えながら英語を習ってきた経験もある。あの時わからなくて言えなかった「smells bad」も今は言える。
英語ツアー、今の私なら、いけるかもしれない!
ウォールアート体験クラスを予約
ちなみに、私は「ゆっくり話してもらいつつ、辞書も使っていいのであれば会話はできるくらい」の英語レベルである。
なので、ネイティブの人とご飯を食べに行ってもある程度会話は弾むし、ビジネスはできないけど暮らしてはいけるくらいのレベルだと自負していた。
私が予約したのはマンハッタンのとある公園の一角で行われるウォールペイント講座。実際に壁に描くわけにはいかないので、生徒全員で1枚の大きな布にペイントを施し、持ち帰ることもできるという。
「じゃあ、サム子の大きなウォールアートを書いてきてくださいよ!」という担当さんの言葉に背中を押され、アクティビティを予約した。
1時間30分のレッスンで値段は約4千円。日本語ツアーに比べるととても良心的な値段であることがわかる。
当日。友人のアンドリュー(サンフランシスコで出会い現在はNYに住んでいる)に会場となる公園まで連れて行ってもらった。道が混んでおり、時間は遅刻気味。
なるほど確かにウォールペイントだらけの公園に、教室はあった。
受付係らしいおじいさんが椅子に腰掛けており、その奥で講師の男性が待ち遠しそうに手を組んでこちらを見ていた。
思ったよりずっと若い先生だ。
私はおじいさんと、先生に深々と頭を下げ、遅刻を詫びた。
おじいさんはよっぽど遅刻が気に入らなかったのか、むっつりとしたまま無言。
講師の男性は、しばらく私に何かペラペラと話していたが、通じないとわかると横にいたアンドリューに説明を始めた。
「どうやら、先生が遅れているようだよ、NYって感じだね」とアンドリューが私に言った。
え、あんた、先生じゃないのかい…?
アンドリューがいうには彼は生徒で、ずっとここで先生を待っているのだという。
え、じゃあこのおじいさんは…?と思った瞬間、おじいさんはふらふらと歩き出し、去っていった。
受け付け係でもなんでもなく、ただのホームレスだった。
ここにきて自分の英語力に気づく
ここで私はようやく自分の英語力がとんでもなく貧困なことに気づく。
アンドリューと会話が続いていたのは、アンドリューが難しい文章を私にもわかるように「He is not tutor」とか「He is waiting for the tutor」と、文章を噛み砕いて噛み砕いて、超低速で話してくれていたから通じていたのだ。
そういう配慮なしには、私はホームレスと受付係の見分けもつかない。
(ずっとここにいて翻訳こんにゃくしてくれ、アンドリュー!)という私の願いも虚しく、彼は愛妻の待つ家へと帰っていった。
お待たせしました講師登場
しばらく待っていると、遠くからファンキーな格好をした黒人女性が歩いてきた。「天使にラブソングを」に出ている頃のウーピーゴールドバーグによく似ている。
私は力なくニヘラニヘラと笑った。
彼女はむっつりとしながら、男性(仮名:ボブ)と話し出した。
当たり前だが、おもっくそネイティブ英語。どうやら今日の生徒は私と、ボブと、ボブの友達の3人。ボブの友達は遅れて来るらしい。
先生は掘っ建て小屋のようなところからスプレー缶とどでかい布を出して、謝るそぶりも見せずにセッティングを始めた。めちゃくちゃアメリカンやん。
まず、スプレーの使い方を先生が教えてくれた。
「スプレーのボタンを強く押して、近くからスプレーすると細い線がかけて、弱く押して遠くからスプレーすると太い線が弾ける」とのこと。
何を言っているかは完全にわからないが、絵を描いたことがあればなんとなく理解はできる。
練習にまず三角形を描いてみる。
全然うまくできねえ。
ボブも本格的なペイントは初めてらしくかなり苦戦をしているが、私のように観光客丸出しで写真を撮りまくったりはせず「本格的に技術を習得しにきました」というような面持ちである。
私も負けてはいられない。
てめえリア充だったのか!ボブ彼女が登場
そんなこんなでスプレーの練習をしていると、ボブの友達がやってきた。
めちゃくちゃ可愛い女の子である。
ボブも一気に顔が緩み、「僕のガールフレンドのマリーです」と紹介し始める。
てめえ、リア充だったか
そんなわけで、ボブカップル、ウーピーゴールドバーグ、わけわからんジャパニーズの私、という圧倒的疎外感の中でレッスンが再開された。
さっきまでの気概は何処へやら、ボブはマリーたんにドヤ顔でさっき習ったばかりのスプレーの吹き方を伝授していた。
マリーたんは彼に付き合ってこの講座に参加したようであんまりやる気はなさそう。スプレーを撒きながらキャッキャと笑っている。
その様子を見て、ウーピーも何か言って笑っている。
孤独の中で私はスプレー職人に徹することを心に決めた。
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