外資系企業のサラリーマンからスナックのママに。ありのままに生きてみた!
●行こうぜ!性別の向こうへ
ママは元サラリーマン
「浅草ロゼ」は雷門から徒歩5分ほど、飲食店の入るビルの2階にある。10人も入ればいっぱいのこの店に、北海道から沖縄まで、全国から客が訪れるという。お店を切り盛りするのはレイちゃんママとケイちゃんママの2人。共同経営で2011年に開店したこの店は、9月で7周年を迎えた。
「私の特殊な経歴が誰かの参考になるとは思えないんだけど(笑)」
そう笑うレイちゃんママ。ピンクの花柄ドレスに身を包み華やかな装いだが、お高くとまる雰囲気はない。というのもこの店はアットホームな接客が売り。女性客にやさしいお店を目指しているのだ。
「男の気持ちも女の気持ちも分かるのが私の長所。自分が経験してるから、ビジネスの話題にもついていけるしね」
そう、レイちゃんママは以前、バリバリ働く男性サラリーマンだった。
大学中退、バイトをしながら会計士補の試験に合格
レイちゃんママは過去に10年ほど、外資系の大手監査法人で会計士補(「会計士補」という資格は現在廃止されている)として働いていた。さまざまな企業を訪ね、会計監査、内部統制監査、システム監査などに関わる「堅い」職業だ。
公認会計士になるための試験は難関なことで有名だが、彼女はコンビニでアルバイトをしながら猛烈に勉強して資格を得た。
「医者か弁護士か会計士か、とにかく稼げる資格をとろうと思ったんだよね。その中でいちばん簡単かなと思って会計士を目指した。まあ、やってみたらぜんぜん簡単じゃなかったんだけどね(笑)」
もともと飽きっぽい性格で、高校卒業後に早稲田大学に入学したものの、すぐに授業に出なくなってしまった。バンドをやっていたこともあり、外の世界が楽しくなってしまったのだという。退学後はカフェやパチンコ屋などでしばらく働いていた。その頃にある女性と結婚したが、不規則な勤務時間がきっかけで離婚。それで心機一転、士業の世界を目指すことにしたのだという。
「資格を取った後どうしたかって? まあ都合の悪いことは隠して就活したよね(笑)」
めでたく就職できたものの、会計監査の仕事は激務。心身のバランスを崩し、2度の休職を余儀なくされた。
病床で自分を見つめなおし、女性として働こうと決意するも…
2度目の休職中、彼女は男性として生きることをやめようと決意。復職のための面談で、女性社員として働きたいと主張した。タイトなパンツスーツにうっすらと化粧をした彼女を見て人事担当者は仰天していたという。
「男性用トイレも女性用トイレも使っちゃいけないって言われてね。オフィスは12階なのに、1階に多目的トイレがあるからそこを使えって。今だったら耐えられるけど、当時は精神的に追い詰められていたからその条件を飲むことはできなかった」
こうして彼女は復職することなく退職。彼女の「女」としての職探しが始まった。
- スナック女子が飲めて歌える憩いの場「浅草ロゼ」
〒111-0035 東京都台東区西浅草2-2-1 NATビル201
080-5432-8503
http://asakusarose.com
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