外資系企業のサラリーマンからスナックのママに。自由でいられる場所を探そう
●行こうぜ!性別の向こうへ
お店にないものを求める人には、別の店を紹介する
「温かいうちに召し上がってね」
そう言って料理を出してくれたのはケイちゃんママ。レイちゃんママと息の合った接客をしている彼女、実家は料亭だったという。娘と孫がいて、店に遊びに来ることもあるそうだ。
「レイちゃんママと出会ったのはもう10年以上前かな。同じ店の飲み仲間だった。はじめて会った時から面白いなあって感じていましたね」
ここで一人客の女性がやってきた。常連なのだという。少し話をしたのだが、私も彼女も同じことを感じていた。それはこのお店がとっても気楽だということ。
ひとくちにスナックといっても店によってさまざまだが、女性客にとって過ごしやすい店ばかりではない。私自身いくつかのスナックに行ったことがあるけれど、たとえ自分でお金を払っていても、居合わせた男性客に対してホステスのようなふるまいが求められることは少なくない。一般的にスナックは男女の性役割がはっきりと区別された保守的な空間だというのが、私の経験から感じたことだ。
ところがここ「浅草ロゼ」にはそのような雰囲気はない。これにはレイちゃんママの考え方が大きく影響している。
「私はいわゆるおカマちゃん的な接客はしていない。私は声の出し方も男だしね。だからこのお店にないものを求めてやってくる客には別の店を紹介することもある。この店ではみんなが自由に過ごしてほしい」
レイちゃんママが目指すのはオンリーワンの店だという。おいしいお酒をそろえ、居心地のいい空間を作ろうと努力している。
企業の理解も、もっと深まれば
取材中、レイちゃんママがぽろりとこぼした言葉が印象的だった。
「ま、あの時会社を辞めてなければ収入も保証されてたし、安泰だったけどね」
自営業はやりたいようにできるのがいい、と彼女は言う。生き生きと働く彼女だが、会社を辞めたことについてはやはり思うところがあるようだった。企業がLGBTに対して理解不足であること、そのために優秀な人材であっても就職が難しいこと。これはレイちゃんママの知人にも共通して言えることだという。
「開業医とか、弁護士とか、資格をとって会社に属さずに仕事をしている人もいるんじゃないかな。社長をしててバリバリ稼いでる人もいるよ。LGBTに理解のない取引先を切り捨てたことがあると聞いたよ」
自分の心が、安らかでいられるように
もうひとつ印象的だったのは、マスメディアに対する思いだ。ゲイ、女装家、ニューハーフなどの異なる性を持つ人々が「オネエ」などとひとくくりにされ、笑いを求められる環境があることに強い違和感を持っている。
「あと、FTM(Female to Male=身体は女性で、性自認が男性)の人はほとんどテレビに出てこないよね」
性差別があまりにももっともらしく自然に存在しているために、わたしたちは「性別によって生き方が制限されてはいけない」ということを忘れてしまいがちだ。社会の中で自分でも気づかないうちに傷つけられて、自信を喪失してしまうことがある。社会を変えることが必要だが、ひとりではできることに限界がある。辛かったら逃げていいし、自分の心が安らかでいられる場所を探すのが大切だ。そしてそういう場所のひとつとして「浅草ロゼ」をおすすめしておきたいと思う。
レイちゃんママ、お話を聞かせていただきどうもありがとうございました。また伺います!
- スナック女子が飲めて歌える憩いの場「浅草ロゼ」
〒111-0035 東京都台東区西浅草2-2-1 NATビル201
080-5432-8503
http://asakusarose.com
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