取材に応じた勝間和代さん

行こうぜ!性別の向こうへ

勝間和代さん「多様なLGBT、女性リーダーが増えれば」

性別の枠組みを超えていくために、”性別”についてもう一度考えてみる特集「行こうぜ!性別の向こうへ」。2018年5月に同性の増原裕子さんとの交際を発表し、話題になった勝間和代さん(50)に、今後の男女のあり方や女性活躍社会について聞いてきました。

●行こうぜ!性別の向こうへ

――増原さんとの交際発表後、何か変わったことはありますか。

勝間和代さん(以下勝間): 私のまわりは何も変わっていないですよ。誰でもそうだと思いますが、「交際してます」と言ったからといって、会うたびに「パートナーどう?」と聞いたりもしませんしね。

ただ、発表したことで、デメリットはなくなったかなと思います。うそをつかなくて済むようになった。彼女のことを隠そうと思うと、小さなうそをたくさんつかなきゃいけなくなる。それが苦しかったんです。

――勝間さんのおかげで自信を持てたという、LGBTの友人もいました。

勝間: ここ10年で、LGBTの方々が可視化されて、いろんな人がいることがわかるようになったと思います。これまでは、声をあげる人が少なかったこともあり、絶対数が少なく見えて、ステレオタイプなLGBT像という偏見が生まれていたんだと思います。

ゲイのカップルを描いたマンガ『きのう何食べた?』がドラマ化されることが決まり、一昔前のステレオタイプな「なよなよしたゲイ」以外のゲイが見られるようになりました。

取材に応じた勝間和代さん

優秀な女性のジレンマ

絶対数が少ないことによる偏見は、LGBTだけではなく、女性活躍にも関係していると思います。女性活躍で問題になるのは、優秀な女性への偏見。優秀な女性、と聞いて、どのような人をイメージしますか。

――怖い?

勝間: まさに、それです。「男性リーダーは厳しい。女性サポーターは優しい」という偏見。そんな中に、女性リーダーがいると、男女ともに気持ち悪いんですね。自分たちの知っている女性像を守りたい。そこで「女性リーダーは怖い」という認知のゆがみが起きるんです。

女性にも怖くないリーダーはいるんですよ。でも、それは「無能」と言われる。有能さを示すと怖い、優しさを示すと無能。非常に損な役割なんですよね。

なので、女性は交渉をしない。なぜかというと、怖いとみられるから。怖いと思われるのが嫌で交渉しないでいると、不利なまま。自ら負の連鎖を産んでいくことになるんですよね。

その点、海外では、議員や会社役員の一定数を女性の割合と定めるクオータ制が敷かれています。強制的に女性のリーダー数が増やすことで、「怖い」以外の多様な女性のリーダー像を示すことができる。ステレオタイプを破るには、人を増やすしかないのかなって思うんです。

取材に応じた勝間和代さん

公的な書類から性別の欄をなくした国も

――ジェンダーフリーが進んでいる国というとどこになりますか。

勝間: やっぱりヨーロッパが進んでいますよね。ベルギーは、公的な書類から性別をなくしています。そうすると、男女比率がどうのこうのっていう議論すらなくなる。
民主化・人権運動が進んでいるので、性別という概念をなくした方が合理的なんじゃないかって考えたんのではないでしょうか。

――なぜ、日本では進まないのでしょう?例えば、同性婚を認めると、誰か困る人はいるんですかね?

勝間: 既得権益を守りたいのではないでしょうか。異性愛者のほうが優位だっていう環境を保ちたいんじゃないんですかね。同性愛者に対するマウンティング。

東京医科大学の女子の合格率を下げているのも、同じだと思いますよ。女性医師を「戦力外」とし、長時間労働できるのは男性医師だけだという、男性医師によるマウンティング。

この問題の根深いところは、女性医師も「選ばれなかった女性医師」に対して冷たいという点。「これだけ差別があっても、私たちはできたんだから、できない人は努力不足である」という考え方。自分たちも男性医師に虐げられているのに、男性と一緒になって選ばれなかった女性たちを虐げている。「本当は自分たちも虐げられている」と認めたくないから、合理的な理由があるように思いこませているんじゃないかな。

ただ、少なくともこの議論がおきたことで、東京医大も反省しただろうし、10年前よりはマシになったと思う。

取材に応じた勝間和代さん

アウトプットだけで評価されるようになれば

――医者の世界だけではなく、会社員もまだまだ女性の管理職は少ないです。

勝間: 平社員、係長までだと、女性も多いのですが、部長になるとレアですよね。女性が管理職になりたがらないのは、競争が不利だからなんですよ。男性が決めたルールで、競わされるのは公正じゃない。

それならクオータ制を敷いてはどうか?というときに、強制的に女性が出世することになるので優秀じゃない人たちも管理職になってしまう、下駄をはかせることになってしまうという議論があります。それを聞くと、いやいや現状だと、優秀じゃない男性も部長になっているでしょうって思うんですよね。

本当は、男性だ女性だっていうことに関係なく、アウトプットされた結果だけで評価されるようになるといいんですけどね。海外では、人事評価は主観性を排除するっていう流れになっていますしね。

  • ●勝間和代さんプロフィール
  • 1968年東京都生まれ。経済評論家、中央大学ビジネススクール客員教授。現在、株式会社監査と分析取締役、国土交通省社会資本整備審議会委員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。2018年5月、増原裕子さんとの同棲を自身のブログで公表した。
telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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