Dr.尾池の奇妙な考察

【Dr.尾池の奇妙な考察02】男女関係まで表す?「黄金比」の生々しさに迫る

工学博士であり生粋の理系男子である“尾池博士”は、研究結果を最大限に活かすため化粧品開発を始めたことにより、今まで考えてこなかった分野「女性」と「美容」について改めて考察をするようになりました。そんな博士の理論は独特難解で、でもなんかちょっと、分かる。女性が考えているだけではたどり着けない幸福論に、少しだけ楽に生きるヒントが隠れているかも。

●Dr.尾池の奇妙な考察 02

どうも、尾池です。研究をしてまして、工学博士です。分離技術を研究しながら、海水を真水にしたり、豚の胎盤から化粧品を作ったりしています。コスメに関わるようになって、「美しさ」について考えたりもしています。

美しさの話になるとしばしば「黄金比」が出てきます。
黄金比といえば、オウムガイや葉脈やiPhone、そしてダヴィンチの人体図には美しき黄金比「1:1.618……」を見つけることができる、といわれています。厳密には黄金比から少しズレているものが多いですが、おおむねこの比率が「美しさ」の元になっているらしい、とダヴィンチの時代にはすでに認識され、そこに「フィボナッチ数列(0と1から始まる数列の隣り合う数を足していくと黄金比に行きつく)」という数学的裏付けもあいまって、いまではほぼ定説のようになっています。

私は大学生の時この話を聞いて、そんなはずはない、と思いました。
縦×横が「1:1.618……」の単なる長方形を見せられて、ほら美しいでしょう、だからオウムガイも美しく見えるんです、と言われても、う~ん、たしかに、そうかも、しれないけど、オウムガイが一生懸命せっせと作り上げた造形に対して、長方形があるから美しいと? ちょっと失礼じゃない? オウムガイに対する仲間意識も芽生え、黄金比への若い反発心を煽りました。

黄金比を15分ほど眺め続けた結果

そこでこれまた若い粘着性でもって、黄金比の長方形をじっくり眺めました。時間にすると15分くらいでしょうか。するとたしかに、不思議な安心感のようなものは感じます。実際、黄金比を安定感と表現する学者もいます。美しさとはこの安心感のことを言っているのだろうか? いや、美しさとはそんな中途半端に感じるものじゃないはず。いま感じているのはもっと単純な何か。あえて表現すれば、温かみ? なにか生命につながるような、なまなましい体温。

これはいまでも覚えているくらいの温かみだったので、同じように感じている方が他にもいるのではないかと思います。たぶん入り口も同じ。黄金比と美しさを直接的に結びつけることに対する違和感。そして感じる、美しさとは違う、もっと根源的な、温度感。そうだこれに違いない。iPhoneの長方形がこの温かみを伝えようとしているのであれば納得もいく。そして黄金比の長方形を実際に描き始めるとさらに分かってきました。その温度感の正体が。

さらに男女の視点を加えてみた

黄金比の長方形にはよく知られているシンプルな描画方法があります。その描画方法に男女の視点を加えてみたんです。若い時にしかできない直情的妄想かもしれません。
しかし、そうすることではっきり見えてきました。温かみの向こうに、もっと具体的な黄金比の「なまなましさ」が。

黄金比の長方形は一本の線から始めますが、その直線を「ひも」と呼び、そのひもの左を男性、右を女性としてみました。ここで、ああ、と思われたかもしれませんが、そのひもとはちょっと違います。ひもの中央に点を打っておきます。

そして女性を軸に男性を動かして中心角90°の扇形を描きます。

つぎに女性を先ほど打った中央点に移動します。

そして再び女性を軸に男性を動かすと、黄金比の長方形ができあがりです。

同じ作業を繰り返すと、ひもがぐるぐる回りながら、美しい螺旋を描いていきます。まるで恋人や夫婦がどちらかに引っ張られ(振り回され)ながら、生活していく様のように。

黄金比が美しいからすべて美しくなる、という直線的な表現ではもう満足できないほど多くのことに気が付いてしまいます。

改めて男女の動きを思い出しながら眺めてみます

まず間違いないことは、最初のひもにはなんら美しさも体温も感じません。その両端の男女にも。

1回転させても感じません。2回転目でやっと最初の黄金比が現れますが、やはりそこにも明確な美しさはまだ見て取れません。感じているとすれば美を予感できる程度でしょうか。しかしそこからひもの回転を繰り返すとどんどん美しさが増していきます。

女性と男性という両性に分かれたひもが回転し、蓄積を経て、はじめて意味をなし、生命が営まれる温度感すら感じてきませんか。

くどいようですが、あえて言いたいのは、黄金比も、「ひも」も、性も、それだけではなんら美しくはなく、意味すらなさない。

かつて無から宇宙が生まれ、まるで意味などない単なる点がプラスとマイナスに分かれつつも、同時につながり、ひもとなり、回転し、エネルギーを生み、物質が生まれ、銀河を形成した。

そして138億年を経たいま、同じように、点から発生した細胞が女性と男性に分かれつつも、同時につながり、ひもとなり、回転し、生命を営む……。

最新の「超ひも理論」が数万光年離れた粒子同士さえつながっている相関性を見出しているとおり、女性と男性もいまだ線でつながり、互いに回転し、蓄積によって生命を営んでいる。

オウムガイも葉脈もiPhoneもダヴィンチの人体図も、黄金比を使っているから美しいのではない。むしろ黄金比は自然界にありふれた起点にすぎない。そしてそこになまなましい回転が蓄積されたとき、それははじめて美しくなる。なまなましい蓄積だからこそ、ちょっとだけズレている。

今回のまとめ

・若い反発心は考察のチャンス
・点から男女が派生し、回転というエネルギーが蓄積、生命を営んでいる
・黄金比は、そんななまなましさが蓄積されたもの

尾池博士の所感:肩の力抜けた感じがして前回より楽しく文章が書けました。

続きの記事<「透明感」の正体に出会える特異点があった>はこちら

工学博士/1972年生まれ。九州工業大学卒。FILTOM研究所長。FLOWRATE代表。2007年、ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞。2009年、PD膜分離技術開発に参画。2014年、北九州学術研究都市にてFILTOM設立。2018年、常温常圧海水淡水化技術開発のためFLOWRATE.org設立。
イラストレーター・エディター。新潟県生まれ。緩いイラストと「プロの初心者」をモットーに記事を書くライターも。情緒的でありつつ詳細な旅ブログが口コミで広がり、カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務める。神社検定3級、日本酒ナビゲーター、日本旅のペンクラブ会員。
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