「瞳」が輝いていると顔が変わる!科学的に証明された新発見とは
●キレイの定義 04
お話を伺ったのは、花王株式会社・メイクアップ研究所の西野顕博士。入社以来、化粧品の研究一筋だという西野さんが今、関心を持っているのはアイメイク。女性がアイメイクをしたときに「理屈ではなく惹きつけられる」と感じ、そのメカニズムを科学的に解明したいという気持ちが今回の研究につながったのだそうです。
「目が大きく見える」以外のアイメイクの効果
――アイメイクは私も毎日していますが、「したほうが目がはっきりするな」ぐらいの気持ちでした。
西野さん(以下西野): そうですよね。アイメイクをした目に対しての印象や、雑誌などの表現を見ると「目が大きく見える」というのが圧倒的。その他に、眼力が強くなる、華やかに見える、などさまざまな表現があります。このうち、「目が大きく見える」拡大効果というのは科学的にも証明されていて、メイクをした目のほうがしない目よりも5%ほど大きく見えるという数値が出ています。
一方で、拡大効果以外の部分の検討が不十分でした。私はそれらを数値化したいと思い、研究として取り組むことにしました。女性がアイメイクをすると、瞳がキラキラして見えるなというのがとても気になっていて、そもそも物理的に目が輝いているのか、輝いている「ような印象を受ける」のか、またそれはすべての人が感じるものなのかを調べました。
瞳に光が映り込んでいることを「キャッチライト」といって、写真などでは必ず瞳にキャッチライトを入れるように撮影します。
実際に、メイクをしたときに瞳の輝きが増すのかどうか実測してみました。まず、暗い部分は暗く、明るい部分はより明るいという「明暗のばらつき」があったほうが輝きがより増すとわかりました。
アイラッシュカーラー、マスカラで瞳の輝きが変化する
西野: まつげの角度を上げてマスカラをつけると、瞳に映りこむまつげの影が小さくなり、光が強く入り込みます(上の写真、赤で囲った部分)。一方、まつげの影の部分は、マスカラでまつげのボリュームがアップすることで、より濃くなります(同、青で囲った部分)。よって、マスカラでまつげを上げている人のほうが、実際に目の輝き度が高いとわかりました。
――おお、マスカラは、目を大きく見せるだけでなく、目をキラキラ輝かせる効果もあるんですね。
西野: はい。次に、目の輝きがあるほうが実際に魅力的なのかを、心理学的な面と錯視的な面から検討しました。具体的には、4人の異なる顔立ちの人の写真を使い、瞳の輝きを変化させたもの、目の大きさを変えたものの画像を作成。それを比較し、どちらに魅力を感じるかという魅力評価と、受ける印象を答えてもらう印象評価という2種類の調査を行いました。魅力評価は25~51歳の男女15名、印象評価は25~41歳の男女12名を対象に、のべ1,000回以上の質問を重ねました。
新発見。瞳の輝きは顔立ちをポジティブに変える!
西野: 調査の結果、目が大きい写真よりも、瞳の輝きが強い写真のほうが「魅力的だ」と答えた人の割合が高いという結果が出ました。また、サンプルの写真では瞳以外の部位を加工していなかったのにもかかわらず、瞳が輝いていた場合に「肌が明るい」「立体感がある」「ツヤがある」「彫りが深い」などの回答をする人が続出しました。これは、瞳の輝きがあることで錯視効果がもたらされたことを示しています。
つまり、瞳の輝きは顔の印象をポジティブに変える、ということが発見されたのです。まつげが上向けば瞳は輝き、顔立ちも変えうる、顔立ちを超えうる、ということです。
――ちなみに、瞳が輝いて見えやすい“究極のまつげの角度”みたいなものってあるんですか?
西野: はい、あります。角度34度、カーブ率R3.4mmというのが、瞳が最も輝いて見える「黄金比カーブ」だと導き出されました。
――角度、はなんとなくイメージできますが、カーブ率ってピンと来ません……
西野: カーブ率というと聞き慣れない言葉かもしれませんが、この図のようにくるんとしたカーブを作ることで、目のキワに影が落ちます。あえて瞳とまぶたのきわにまつげの影が二重に落ちるようにするのがポイントで、影と光のコントラストできらめきが増して見えるようになるんです。
アイメイクをするときには、ぜひアイラッシュカーラーでカールを作ってほしいです。この研究を応用して、誰でも黄金比カーブを作れることを目指したアイラッシュカーラーを、グループ会社であるカネボウ化粧品の「KATE」から発売しました。その状態をキープするマスカラもあります。今は理論に基づいた化粧品もどんどん開発されているので、気軽に「きれい」を作ることができますよ。メイクを楽しむすべての方に、今後もぜひアイメイクを楽しんでください、とお伝えしたいです。
- 【編集後記】
瞳の輝きが顔立ちまで変える!驚くべき発見です。なんとなく習慣でしていたアイメイクですが、肌の印象にまで影響を与えると思うと、もっと丁寧にやろうかな……という気持ちに。メイクへのモチベーションも上がってきます。「黄金比」も意識しつつ、メイクを楽しみたいですね!キレイを科学するお話、次回は「横顔」の秘密に迫ります。