柴咲コウ「環境にやさしく肌に負担が少ない洋服をつくりたい」
肌が弱くて化学繊維の衣類では荒れてしまう
実は、私自身肌が弱くて皮膚科に通ったりもしていました。ただ、なかなか原因がわからなくて。とくに寒い季節に保温性の高い洋服を着ると、肌が荒れてしまうこともありました。それが、天然素材の衣類を着るようになったら、肌荒れしなくなってきたのです。
そこから、身につけるもの全般に興味が広がっていきました。
仕事などで移動が多いので、洋服には移動着としての着心地のよさや締めつけ感が少ないアイテムを作りたいと思いました。下着もそう。そもそも、本当につけなければいけないんだっけ?ワイヤー入りのブラジャーをつける必要はある?というところから考え始めて。
今はストレス社会なので、できるだけストレスになるものは減らしたい。直接肌に触れるものや、食べるものに関しても体に優しくて、ストレスないものにしたいと思いもあります。
そういう気持ちを形にしたのが、今回の「MES V ACANES(ミ ヴァコンス)」の洋服たち。洋服の素材は、プレオーガニックコットンや再生繊維を使うなど、肌や環境にいいものを選んでいます。
乳がんで母を亡くし、何が悪かったんだろうって
環境への関心は、実は幼いころからありました。私は、東京生まれ東京育ちということもあり、昔から自然への憧れがあったんです。好きなものを食べて、好きなことをして、好きなところに行って暮らしていたら、いったいこの地球はどうなっちゃうんだろうって、わりと小さい頃から心配していました。
それから、19歳の時に母を乳がんでなくしたことも、自分の中で大きかったかな。病気の家族を持つと、なにがいいとか悪いとか情報が氾濫している、すごく思うんです。何が原因だったのか、どうしたら治すことができたんだろうと考えたけど、正解がわからなくて。だから、本を読んで独学で勉強していました。その中で体を作る食べ物から始まり、衣服、住居にも目が向くようになりました。
値段よりも服が作られた過程に目がいくようになった
年齢もありますが、環境問題に関心を持つようになってから、徐々に変わってきていますね。
私はこれまで仕事柄、何万着もの洋服を見たり、実際に着て、着心地や生地の張り、触り心地を体験してきました。
10代、20代の頃は、デザインと価格と価格重視で洋服を選んでいたのですが、洋服選びも、30歳を超えたあたりから、デザインを重視しつつも着心地を重視するようになりました。
洋服を着ることによって自分がどう見えるかよりも、地球環境などに興味がわくようになり、自分の着ている服は、誰がどんな思いで作ったのだろうと考えることも増えてきました。結果、値段よりも、その服が作られた過程に目がいくようになってきたのです。肌にいいもの、着心地のいいものを選んでいくと、自然と行きついたのがオーガニックなどの製品です。
20代の頃までは、「あれがほしい、これが食べたい、こんな家に住みたい」と思いつつも、それを続けていったら、この地球はどうなってしまうのだろうという罪悪感を抱えていました。ただ、消費活動をマイナスに捉えると、経済は滞ってしまう。だったら消費活動をもっとポジティブに転換して、地球にやさしいモノづくりに関わりたいと思うようになりました。そこで2016年11月に「Les Trois Graces(レトロワグラース)」という会社を起業することにしました。
「自分自身が満足するもの」から「相手に敬意を現すもの」へ
30代になって洋服の選び方が変わってきたのは、もう1つ理由があります。それは仕事の内容が変わってきたこと。今年の7月に環境省の「環境特別広報大使」に任命されたんです。自分の活動を通じて、環境のことを国内外にアピールしたり、世界遺産に登録された神社仏閣などでライブをやらせてもらう機会も増えてきました。
そのときに自分だけが着て満足する衣装というよりも、相手に対する敬意を現すためにはどんな服を選んだらいいんだろうという視点が加わるようになりました。活動をするなかで、それに見合う自分にならなきゃと思って、自分の内面の作り方も気を遣うようになったし、それが着る洋服にも現れてきたかなと感じます。
何万着もの洋服を着てきたからこそできたブランド
以前はロックテイストのものが好きだったけど、今はまろやかなものが好きになってきた。今でも真っ黒だったり、真っ白のものが好きで、パキッとしたものが好きですけど、自分の考えの変化とともに、洋服にやさしさが反映されてきているなと思います。
●柴咲コウさんプロフィール
代表取締役を務める「Les Trois Graces(レトロワグラース)」では、化学調味料不使用のレトルト食品などを手掛ける。「MES VACANCES」(https://mesvacances.jp/)は、2018年10月下旬サイトオープン予定
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