これからの働き方

究極の働き方改革?出社義務なし、副業OKでも成長率20%の企業があった!

出社義務なし、労働時間完全自由。ユニークな働き方を実践しながら成果を出し続けている「ベンチャー広報」代表取締役・野澤直人さんと、同社で働く井上千絵さんにインタビューする後編。一度はフリーランスとして働くことを決めた井上さんがなぜ複業という形でこの会社を選んだのか、そして会社の今後の姿について野澤さんに聞きました。

フリーランスだけより「挑戦」できる環境

――井上さんは勤めていた会社を出産を期に退職して、フリーランスとして独立したんですよね。なぜこの会社に入ろうと思ったのですか?

井上 退職後、大学院でメディアデザインの勉強をして、在学中からフリーランスとしても活動していました。子どももいるので、時間が自由になったほうがいいなという思いもあって。1年ほど前に野澤の著書『逆襲の広報PR術』をたまたま読んで、今までなかった発想を持っている人がいるなあ、と興味を持ったんです。

 いろいろ調べているうちに、彼のFacebookでベンチャー広報の求人を見つけて。「出社義務なし」「仕事量は自分の裁量で調整できる」「副業もOK」という文言に、なんだこの働き方は!? とびっくりしました。会社員になる予定はまったくなかったんですが、野澤と面接……というか面談をして、入社を決めました。今もベンチャー広報の仕事と並行して、フリーランスとしても活動しています。

――フリーランスだけでやっているときと比べて、気持ちはどう変わりましたか。

井上 フリーランスって「挑戦できる」みたいなイメージがありますけど、実はいつ仕事がなくなるかわからないし、守りに入りがちだなと感じていました。それが、会社の仕事も始めて安定を得ることができた。自分の分野でより挑戦していこうと思えるようになりました。

野澤 それこそ狙いの一つでもあります。どんどん挑戦してもらって、仕事の幅を広げて成長してほしいんです。フリーランスでも仕事はできますが、より働きやすく、安定した生活のために会社はあるべきだと思うんです。

井上 会社という戻れる場所がありつつ、チャレンジもできるって本当にありがたいなと感じます。

「M字カーブ」にいる優秀な人をどんどん取り込みたい

――自由な働き方を取り入れることによる、会社への一番のメリットはなんでしょう。

野澤 ずばり採用ですね。女性のキャリアで「M字カーブ」って聞いたことありますか?新卒で就職して、結婚・出産で退職せざるを得ず、本来は働き盛りのはずの人が就業できていない。優秀だけれど、フルタイムの勤務は無理、働く場所がないという方でも、うちなら働けます。

井上 実際、全10名の社員のうち4名が子育て中の女性なんですよね。まさに私のような(笑)。いま社内で最も多くのクライアントと仕事をし、会社のリーダー的存在になっている女性も2児の母です。事情や1人1人の希望に応じてかなり細かく業務量を調整してもらっているので、本当に働きやすいです。1

野澤 そうそう。それぞれ個々の事情があるので、いかに面白い個人をつなぎとめておけるかを意識しています。「会社のために社員がいる」のか、「社員のために会社がある」のか。大半の会社は前者だと思うんですが、うちは後者です。社員個々人の幸福をどれだけ高められるかと考えています。

――今後、もっと自由に働き方を変えていく予定はあるんですか?

野澤 週4日勤務、要は週休3日にしたい。少し前に社員に提案したら「業務量的に難しい」と言われてしまったんですが、僕は最近水曜の午後は休みにしています。週休2.5日ですね。午後はメールも見ないし、会議や打ち合わせの予定も入れません。

 ただ、週休3日になったから、給料が5分の4に減ってしまっては意味がありません。今と同じ給料を保つためには、個々が生産性を上げていかないと難しい。とはいえなかなかハードルが高いので、そのうち強制的に週休3日にして、生産性を高めていく意識を強める方向にしようかなあ、と考えています。

「社員のために会社がある」は決してブレずに

――今後、会社を拡大していこうという思いなどはあるんでしょうか。

野澤 いま社員は10名で、ここ3年ほどは年20%成長を続け、利益も出しています。この状態がちょうどいいなと感じていて、拡大はあまり意識していません。僕が考えるのは、今より社員が幸せになるように、ということです。

――野澤さんのその発想は、どこから来るんでしょうか。

野澤 僕自身が38歳で起業していて、それまで”社員”だった時間も長かったので、嫌だなと思うこともたくさんあったんです。うちの社員になる人には、気持ちよく働いて成果を出してほしい。ベンチャー企業で働いていたときは、入社時は年商2億、20人の会社でしたが、8年後には20億、200人の会社になりました。でもみんな全然幸せそうじゃなかった。いくら会社が成長しても、社員が不幸だったら意味がないんです。

 とはいえ、「幸福」の感じ方は人それぞれです。だから僕は、社員にどれだけ高い給料を払えるか、休みをたくさん提供できるか、の2つだけに集中しています。お金があって時間があれば、だいたいのことはできますから。会社の売上、利益は結果としてついてくるもの。この部分はずっとブレずにいたいな、と思っています。

朝日新聞バーティカルメディアの編集者。撮影、分析などにも携わるなんでも屋。横浜DeNAベイスターズファン。旅行が大好物で、日本縦断2回、世界一周2回経験あり。特に好きな場所は横浜、沖縄、ハワイ、軽井沢。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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