五感を刺激して、意識を変える。「遊び方改革」の極意とは

何かと話題の「働き方改革」。成功の秘密は、仕事そのものではなく、実は「遊び方」にある、と提言するのは、メンタルヘルスコンサルタントで組織開発の専門家として活躍するランスタッド(株)EAP総研所長の川西由美子さん。無駄な仕事を減らす、残業時間云々…ではなく、ちょっと見方を変えて、「遊び方」を通して、ちょっと生き方&働き方を見つめ直してみませんか?「働き方改革でなく、遊び方改革を!」と提言する川西さんが、3つのポイントを、教えてくれました。

遊び方改革、具体的にどうしたらいいの?

telling,編集部(以下――)「遊び方改革をしよう」と言われても、ぴんとこない人も多いんじゃないかと思います。まず、何をすればいいでしょうか?

川西: 現代人は、小さい時に思いっきり体を動かしたり、友達とたくさんしゃべったり、自然の中で遊んだりした経験が乏しい人が多いんです。そういう人はなかなか自分から「遊ぶ」ことができません。遊び上手になる方法は、こんなものがあります。

川西さんの考え方を聞いていると、目からウロコのことばかり!

■遊び上手な人に無理やり連れて行ってもらう

何事もやってみることから、なんです。あなたが遊び方が下手だと思っていたら、遊び方上手な人に連れ出してもらうのが一番近道です。

私は昔、仕事ばかりして自分を追い込んでしまっている部下を、花火大会に連れて行きました。東京で仕事が終わったあとに新幹線で、熱海まで。
それまで彼女は「熱海なんて遠い」と選択肢に入れてもいませんでした。「こんなに遠くまで日帰りで行くんですか」とも言われましたけれど、行ってみたら十分楽しめる、ということに気づいて、虜になっちゃう。視野は、遊び方でも広がるんですよね。

遊び方にも、グレードがある

――遊ぶ以前に、疲れて何もしたくない、という人はどうしたらいいでしょう。

■体をいたわって、リラックスすることから始める

川西:たとえば、眠りをもっと快適にするためにいい枕に変えてみたり、マッサージに行ったり、自分が美味しいと感じられるものを食べるのもいいですね。溜まったものを出して、心の便秘状態を解消してください。太陽の光を浴びて、鮮やかな色を見るだけでもいいんです。とにかく、五感を刺激すること。「今刺激を受けている」と意識しながらやるだけで、心は健康に変わっていきます。
 刺激を受けることで心が動いて、楽しいことをもっとしたい、という意欲が出てきます。

■効率を追求せずに、集中できる&”完了する”ものにチャレンジしてみる

例えば編み物やパズルはおすすめです。どのくらいの時間やれば自分にとってちょうどいいリフレッシュになるのかを知るのが大事です。仕事や、嫌なことに埋め尽くされた考えから開放されるものがいいですね。

遊び方にも初級、中級、上級のグレードがあります。今の自分の状態を把握して、グレードにあった満足度を得られる「遊び」を見つけていってください。初心者はゆっくりぬるめのお風呂に入ったり、ぼーっとTVや、映画を観ることでもリフレッシュになりますよ。

「ほどほど」のバランスを見つけて

――川西さんはどんなふうに遊んでいるんですか?

川西:私の場合は、とにかく週に1回東京をでないとダメなんです。30代の頃からヨットをやっていて、大会にも出るくらいハマってたんですが、筋肉を切って激しい運動ができなくなってしまって……。今は、犬と一緒に出かけたり、遊び方を再構築しているところです(笑)。体調や仕事の状況によって遊び方は変わっていいと思うので、それも前向きにとらえています。

自分に合う遊び方、ほどよいバランスを見つけるのには、最低でも1~2年はかかると思います。1回失敗して、自分の限度を知るというのも大事です。飲酒や運動は、度が過ぎたら“ちょうどいい”がわかる。だから、まず「遊ぶ」のは、翌日がお休みの日にやってみるといいと思います。

ただ遊べばいいというわけでもありません。遊び方が仕事と家庭にいい影響を与えているかは、きちんと考えたほうがいい。リフレッシュできても、お金を使いすぎてしまっていたり、家庭をないがしろにしたり、仕事がおろそかになっていてはNG。遊び方にもアセスメントが必要です。

「遊び方改革」ができている人は、賢く働ける

――いい「遊び方」を身につけると、本当に人生が充実しそうですね。

川西:そのとおりです。私は「遊び方改革」のほかに「ワークスマート」――賢く働こう、と提言しているんです。本人だけが利益を得るのではなく、一緒に仕事をしている人も心地よく、いいアウトプットも出せている状態を理想としています。「全体最適」の思考ができると、組織も変わる。これには体力も、気持ちの余裕も必要です。

今の「働き方改革」って、本末転倒なんですよ。とりあえず残業をやめる、勤務時間を短くすることが目的になってしまって、仕事のプロセスや結果を全然見ていないんです。だから部下を帰らせて、課長が残務を全部引き受けて潰れる、なんてことが起きてしまう。本当は仕事のやり方、やらせ方を根本から変えないとダメなんです。

――たしかに、残業を一律に禁止するやり方には、批判も多いですよね。

川西:働き方改革のためには、マネジメント側と個人、それぞれの意識改革が必要です。マネジメント側が仕事のプロセスを整えたり、社員を信用すること。働く側の個人は、事務やPCの能力など、仕事の技術力を磨いて、効率よく仕事をすすめる努力を怠らないことです。

 私は、ミレニアル世代にこそこの「遊び方改革」をしっかり身につけてもらって、会社を変えていってほしいと思っています。若い人がイキイキ働いていると、上司にもいい影響が必ずあります。今は、上が管理する時代ではなく、むしろ下からムーブメントを起こして変えていく時代。自分が楽しむことで、周りもいい方向に変わっていければ最高ですよね。

続きの記事<私たちから始める、新しい働き方ー多様な働き方03>はこちら

●川西由美子(かわにし・ゆみこ)さん
ランスタッド株式会社EAP総研所長。企業・スポーツ界、病院、学校などで「ココロの健康管理」に関するコンサルテーションを行う。企業再生・再編時に活用される手法「リチーミングコーチ」の資格をフィンランドにて取得。ストレス対策の専門家としてテレビや雑誌など多数のメディアに出演している。

朝日新聞バーティカルメディアの編集者。撮影、分析などにも携わるなんでも屋。横浜DeNAベイスターズファン。旅行が大好物で、日本縦断2回、世界一周2回経験あり。特に好きな場所は横浜、沖縄、ハワイ、軽井沢。
これからの働き方